【2】おかしな話-1:鮒を釣った話
僕は、「ちょっと変な、おかしな話」というのが大好きで、そうした話に出会うとそのキーワードを書きとめていて、蒐集したネタの数は硬軟長短取り混ぜて百を超えています。そんなネタのキーワードを小話に戻していくつか紹介していこうと思っています。第1回は最初に書きとめた原点ともいうべき1番目のネタです。
この話はもう何十年も前にラジオで聞いたもので、どなただったか覚えていませんが、あるパーソナリティさんが子供のころ、夏休みに田舎に行っていたときの話だそうです。野や山や畑や田んぼ、小川や池など、見るものすべてが珍しくて毎日真っ黒になって遊びまわっていたある日のこと、池で釣りに挑戦してみたら大きな鮒が釣れ意気揚々と帰ってきて金魚鉢に入れてもらい、お祖父ちゃんお祖母ちゃんにも褒められてもう自慢で自慢でその日は飽かずに鮒を眺めていたのだそうです。次の日はまた外で遊びまわって夕方帰ってくると早速、鮒の所に直行したのですが金魚鉢が無いのです。「おかしいなあ、どこに行っちゃったんだろう?」と家中を探し回ったのですが、どこにも見つからないのです。 ふと居間に入るとお祖母ちゃんが座って針仕事をしていたので、「お祖母ちゃん、鮒知らない?」と聞いてみると、 ばあちゃん曰く「いただきました。」 「へっ?」 「いただきました。」 要するにお祖母ちゃんは鮒が大好物で、孫の釣ってきたのを見ているうちに堪らなくなって甘露煮にして食べてしまったということだったのです。 パーソナリティさんの話はこれで終わりで、このままでも鮒を食べられてしまった孫のびっくり顔、お祖母ちゃんのすました表情などの情景を想像すると十分おかしくて笑えてしまいますが、ちょっと落ちが弱いかなと思い、最後にもう一言付け加えてみました。
これがほんとの猫ババだ!
「いただきました」といってニタっと笑った時の祖母の顔は妙に猫が舌なめずりをしているように見えた、などとするともう怪談になってしまいますが、それはちょっとやり過ぎというものでしょうね。
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