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箱庭の雨
もうすぐ深夜0時を回ろうとしている頃。誰もいない24時間営業のコインランドリーで大量の洗濯物に埋もれていた。
設置されている洗濯機何台かに分けて、持ってきた物をせっせとぶちこんでいく。
大きな手持ちバックから愛用している洗剤と柔軟剤を取り出し、物に合わせて使い分ける。
三台が同じ時間に終わるように調節してスイッチオン。今までの静寂を破る洗濯機の機械音が室内に響き渡る。
ふと外を見るとさっきまで晴れて星も見えていたというのに雨が降り出していた。
「しまったなぁ、、、。傘持って来てねぇや。」
どうやって帰るかなど考えながら男は携帯を取り出しメッセージアプリを立ち上げる。1番上、最近のやり取りを開く。大量に交わされていた会話の数々。メッセージを過去に遡るほど楽しそうで、最新になるにつれ険悪で、最後に送られてきた言葉はついさっき相手からの唐突な「さよなら」だった。
俺は今日、彼女に別れを告げられた。
喧嘩していたことは確かだが、謝ろうとしていた矢先のこれだった。喪失感を埋めるためなのか、俺は家から溜まっていた洗濯物を持ってきて、今に至る。何度見ても目から熱いものが込み上げる。男泣きの音は外の雨の音でかき消された。
濯ぎの終わりを知らせる音が三台同時に鳴ったのと同じタイミングで、外が突然の閃光に包まれ、大きな音と共にコインランドリーは暗黒に染まった。
「停電か、、、?!」携帯のライトを使おうとするが、なぜか携帯の電源がつかない。
「くそっ」
目が良くない俺は、暗闇の中で手探りに出口を探す。
手にドアの引き戸らしき感触。だが安堵したのも束の間、ドアはいくら目一杯に動かしてもビクともしない。
「そんな、、、」
ここには出入り口はこのドアしかなくい。あとあるのは関係者入口のみ。
完全に閉じ込められた。
突然の妙な状況下に置かれ、困惑していた。
その時、暗闇の中で何かが開く音がした。
【続く】