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ぐぅと学者の漂流記
海の怪物。人によって様々な解釈がある。サメやタコ、クジラなど言い出したらキリがない。
だがあくまでそれは昔の話。実際に見た人や文献自体もそう多くはないのが事実。その存在は半分伝説じみている。
それでも俺は一眼でいいから自分の目で怪物というものを見てみたい。
そのために海洋学者にまでなった。
海の怪物を調べ始めて早一年が経とうとしていた。だがでてくるものは伝説の生き物だったり、古代生物や突然変異がほとんど。
突然変異でデカくなったものも、視点を変えれば充分に海の怪物と呼べるが、所詮ベースは現存する生物。
俺が探しているものとはほど遠かった。
ある日、知り合いの海洋学者とともに海外の海で生物調査に向かった。
調査と言っても、実際はこの海の現存する生物の個体数を調べるものだ。
俺が探しているものは見られないだろう。
現地でチャーターした船に乗り、より多く生物が見られる沖の方まで向かう。
その途中、遥か先の方に怪しい雲が見えた。こういう仕事をしている以上、海の気象には詳しい。
あの動きだとこちらにはこないだろう。とそう思っていた。
ウェットと酸素ボンベを持ち、海に出る。初めは穏やかに泳げて、調査も順調に進んでいた。
だが、調査を、初めて1時間ほど経った時だった。
突然、大きな波が2人を襲った。1人はなんとか岩に捕まったが、俺は体勢を崩し、海流に飲まれた。
ボンベが外れ、息ができない。
命の危機を悟った。
薄れゆく意識の中、俺は海を泳ぐ見たことない何かを見た。
緩やかな細波の音。肌に触れる砂と舐められるような感覚。
俺はそれで目が覚めた。勢いよく起き上がると目の前に見たことのない生物が座っていた。
それは大きな目に口、魚のような鱗、見た目はドラゴンに近い。
「お前が助けてくれたのか?」
それはグゥと鳴き、すり寄ってくる。
俺はついに見つけたんだ!
この話は不思議な生物と学者のお話。
【続く】