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Eyes,
もうどれくらい経っただろうか。暗闇だけが包むこの空間に潜むそれは、紅の瞳を輝かせこちらをじっと見つめてくる。
目を離すことなくじっとこちらを。身体は動かない。なのに震えだけは一向に止む気配はない。俺はそれと目を合わせないように身体を縮こませ、その瞳がいつ過ぎ去るのもわからないまま、じっとその時を待っている。
あれの正体は未だわからない。家で寝ていただけなのに、いつの間にかこんな暗闇の空間にいて、目の前にはあの紅の瞳だけがこちらをまるで監視するかのように見つめている。
この空間には他にも何人かいたみたいだが、ここへ飛ばされた時、誰か1人が瞳を見て声をあげてしまった。その1秒後、聞いたこともない何かが潰れる音がした。
別の誰かがその音を聞いて声を上げ、またあの音。俺は腰を抜かし、近くにあった見えない物陰に逃げるに身を潜めた。耳を塞ぎ、音と悲鳴が止むのを待って暫く。
そっと物陰から覗くと、あの瞳はまたこちらを見つめていた。誰の声も聞こえない。気配もない。残ったのは俺ただ1人だった。
恐怖、不安、絶望。全ての負の感情が俺の精神を蝕んでいく。身体は衰弱し、感覚だけが異常なまでに鋭くなり、さらに恐怖を煽ってくる。
一体どのくらいの時間が経ったのだろうか。ここから出る手段はあるのか。
最初はそんなことも考えてはいたが、もうそんな体力すらも残ってはいない。
徐々に俺の瞳は光を失い、闇に溶けていく。
最後になんとか動かせる口で一言。
「もう、俺も殺してくれ、、、。頼む、、、。」言葉が通じるかなんてどうでもいい。最後の悲痛な思いを願い、俺の瞳と魂は完全に光を失った。
意識が薄くなっていく最中、あの紅の瞳が、青い涙を流しているのが見えた。
なんだ、、、、?疑問だけが残り意識を失った。はずだった。
俺は再び目を覚ました。眩しいほどの光を放つ部屋、中央には青い瞳がこちらを睨んでいた。
【続く】