エッセイ｜燃え殻３

まただ。また今日も、燃え殻さんに泣かされた。

わたしは燃え殻さんに会ったこともないし、じぶんの生い立ちについて話したこともないのに、なぜか燃え殻さんはわたしの「人生のベストソングリスト100」（そんなリストは作っていないけど）に入っているような特別な曲たちのことを知っていて、いつもラジオでわたしの心をぎゅーんと突いてくる言葉を発したあと、そのリストの中からぴったり合った音楽をかける。語られた言葉ですでに心をぎゅーんと突かれているわたしは、これでもか！という燃え殻さんの選曲に、またやられた！悔しい…！と思いながらだらだらと涙を流してしまう。
それが一度きりでなくて、何度も何度もある。もうほんとうに燃え殻さん、わたしのこと見ているんじゃないの？！（マジで）

今日聴いたラジオで、燃え殻さんは夢を持つことについて語った。ご自身のエッセイを朗読したあと、こう言った。

「夢は叶わないからと行動しなかった人を多く見てきました。でも物を書く仕事についてから、”それでも行動した人”も見てきました。その人たちの共通点は、もし結果がNOだったとしても努力を続けることを惜しまなかった人だと思います。ほとんどの夢は叶わないし、叶っても継続は難しい。でもかぎりある人生の中で”がんばってみたい”ということを見つけられた人は、とても幸福な気がします。時間を費やしても挑戦したいこととか、いつも考えてしまう推しの存在とか、日々、常識とルールとモラルでがんじがらめになっている中、”我を忘れて取り組めるなにか”になるのではと思います。それが、無味無臭の日々から脱却するための”しっぽ”になるのかもしれません。時間を忘れ夢中に取り組んでしまう—。そういう経験ができたら、生きているうえで呼吸や食事くらい大切なことのような気がします。”夢のしっぽ”を見つけたら、絶対に手放さないでください」

そして、音楽を流した。
打ち込みのドラムのあと、聞き慣れたアコギのストローク音が続く。あれ？あれ！？これ、スピッツの「運命の人」だーーー！！！

バスの揺れ方で人生の意味が　解かった日曜日
でもさ君は運命の人だから　強く手を握るよ
ここにいるのは優しいだけじゃなく　偉大な獣

愛はコンビニでも買えるけれど　もう少し探そうよ
変な下着に夢がはじけて　たたき合って笑うよ

余計な事はしすぎるほどいいよ　扉開けたら

スピッツ／運命の人

燃え殻さんのラジオ、もう何度も聴いているけれど、わたしがスピッツの曲と出くわしたのは今日が初めてだった。

燃え殻さん、やっぱりどこかで見ていたんでしょう。16歳のわたしが見つけた「音楽を書きたい」という夢と、そのきっかけをくれた「運命の人」のこと。夢に挑めないまま大人になって、まっさらになった人生でもう一度歩もうと決めたわたしのこと、やっぱりどこかで見ているんでしょう。

思えば、燃え殻さんの言葉と音楽に、わたしは何度も助けられてきた。
「なんとなく」で聴きはじめたラジオだったけれど、いつからか燃え殻さんは「わたしの夢の少し先をゆく先輩」みたいな存在になっていて、気がつくと毎週の番組を楽しみにするわたしがいる。
売れっ子になっても締め切りに追われたり、ホテルに缶詰になったりしている燃え殻さんの日常を聴いて、「燃え殻さんも必死にがんばっているのだからわたしはこの程度で弱音をはいている場合じゃないな！」と、とても励まされている。

燃え殻さんは、こうも言っていた。

「人生にはたくさんの登場人物はいらなくても、何人かの理解者は必要かと思います。じぶんが何者であるかは、その理解者によって認識できる気がします。夢と何人かの理解者があれば、人生なんとかやっていけるのではないかと思います。”夢を語れる相手”を手放さないでください」

そういえばわたしの周りには、わたしがどんなに弱音やグチをこぼしても受け止めてくれる友人たちがいて、彼らは時にわたし以上にはっきりとわたしの夢がかなった姿を想像し、キラキラした目で自信たっぷりに言う。「ほんと、楽しみだねえ！」と。

「時々、手に入れた夢をメールで送っていただけたらうれしいです。自分も夢っぽいなにか、夢らしきもの、あの頃夢だったもの、を書いてまたここで発表できればと思っています」

燃え殻さん、いつもありがとうございます。わたし、書き続けて、いつかお目にかかれたら。これからも燃え殻さんの言葉と音楽、楽しみにしています！

---

↓これまでに燃え殻さんについて書いたエッセイはこちら