麻雀界隈に疲れました(その1)
麻雀に関わる、すべてに疲れた。
もう嫌じゃ。
もっといえば、12年前から疲れておる。
12年前、当時37歳のわしは
「鉄鳴きの麒麟児」という麻雀漫画を連載することになり。
連載開始と同時に、SNSを本格的に始めたのもその頃だ。
「面白い漫画を描けば、勝手に売れるだろ?」
世間の一般人は簡単に言うが、漫画家たちの常識ではない。
「たとえ面白くても、作品の存在を知られなければ。
読まることはないし。タイトルを知ったとて買うわけでもない。
口コミで面白さが広がるのを待ってたら、連載はとっくに終わってる」
なのである。
「第1巻」が売れなければ、その連載は打ち切りである。
出版社は、売れる見込みもない2巻を出す余裕はない。
30年前ならギリギリ、多少の余裕があったが。
この紙の雑誌が売れない時代、1巻が売れない→即連載終了である。
「10話まで読んでみたけど、けっこう面白いよこの漫画」
「へえ、機会あったら読んでみようかなあ」
世間の口コミがこの段階で、もうその頃、1巻は発売されている。
発売から2週間〜1ヶ月が勝負である。
ここの売上の数字で、連載が「打ち切り」か「続行」かが決まる。
さきほどの(機会があったら…)の人が、このわずかな期間に、コミックスをレジに運んでくれているだろうか?
おそらく会話の5分後には、聞いたばかりの漫画のタイトルを、すっかり忘れているのがリアルであろう。まず1ヶ月以内には買わない。
なので。
かなり死にものぐるいで宣伝しないと、連載は終わるのである。
大手の100万部売れてる雑誌なら、そこに掲載されているだけで、宣伝効果はある。勝手に漫画のタイトルが世間に広まっていく。
しかしそんな雑誌、週刊少年ジャンプくらいだ。
じゃあ「近代麻雀」は?
掲載されていることによる世間への宣伝効果は?
竹書房の宣伝パワーは?
あるわけねえだろおおおおおおおおおおおおおおお!!!
誰が読んでるねん、この雑誌!
この雑誌買ってる半分の人が、コミックスを買ってくれても。
そんな奇跡が起きても。
大手出版社なら打ち切り基準だ。
そもそも雑誌の発行部数が、小さい村の人口より少ない。
近代麻雀で始まった新連載が、2巻以上続いたのを見たことあるか?
アカギ、むこうぶち……あとは…えっと……
新連載が始まっては、即打ち切りの連続である。
その歴史である。近代麻雀は。
麻雀ファンには名作と呼ばれながらも、コミックスが出なかった作品もある。
麻雀漫画は、そのジャンル自体が売れないのじゃ。
Mリーグ以前なんか、なおさらじゃ。
まだ電子コミックスも主流ではなく。
紙コミックを強引に売るしかなかった12年前。
そして竹書房が「いよいよ倒産か?」と騒がれていたあの時代。
始まったのが「鉄鳴きの麒麟児」である。
「ネット麻雀打ちが、デジタル麻雀で
雀荘で勝ちまくる物語を描いてくれ」
という、近代麻雀からのお仕事のご依頼である。
わしは思っていた。
(これは1巻で連載終わるな…)と。
倒産寸前の竹書房の恐怖
12年前。
わしが「鉄鳴きの麒麟児」の連載準備に入る直前。
ネット掲示板ではこんな噂が、漫画ファンの間で囁かれていた。
「竹書房がいよいよ倒産するぞ…!」
不安である。めちゃくちゃ不安である。
この新連載が打ち切りになるより早く、会社がなくなるかもしれない。
その時は、ギャラなんか出るわけがない。
その当時の、わしの経済状況を描いた漫画がある。
読者さんに知ってほしいのは。
新連載の依頼を受けて。
原稿料、お金が入るまでに、半年は待たねばならない。
6ヶ月だ。
つまり6ヶ月、無収入になる。
新連載の構想を考え、主人公をどうしようか、どんな物語にしようか。
初めてゼロから物語を考えて、第1話〜3話までのネームを作る。
取材もふくめて、ゴーサインが出るまで、90日くらいかかる。
そして第一話の原稿を描く。初めて描く世界とキャラ。ページ数も多い。
1ヶ月以上かかる。
ここで無収入のまま、3ヶ月が経過。
ちなみに…準備3ヶ月じゃなく、0ヶ月でスタートしたのが
「ピークアウト」だ。
わしが「無理じゃ、休みをくれ!」と言い続けている原因がこれである。
準備期間なく新連載始めて、そのままやり切れるのは、わしくらいだ!
さて。
3ヶ月無収入のままで、原稿を描きあげ。
しかもその期間に
「アシスタントさんに給料を払う」のである。
貯金はとっくになくなり。
アコムとプロミスで、80万円借りた。
うちの経済事情を理由に、スタッフさんに賃金を払わないとはありえない。
スタッフさんにも生活があるのだ。
人件費での借金だ。
さて、新連載の第1話が無事に、近代麻雀に掲載。
やっとお金が入る。
しかし…原稿料がふりこまれるのは
「掲載から3か月後」なのだ。
大手出版社は、もっと早い。
こちらにお金がないときは「今すぐ振り込んで」とお願いできる。
しかし倒産寸前の噂が出ている竹書房だ。
できるわけがない。
はらってもらえるのは、3か月後である!
わしは震えていた。この間に会社が倒産したらどうしよう。
わしにはギャラ未払いのまま、借金が残るだけである。
噂だ。噂に決まっておる。竹書房を信じるしかない。
しかし実際は。
本当に倒産寸前だった。
「この船はもう沈む。逃げたいやつは遠慮せず逃げてくれ。」
竹書房の偉い人が、社員にそう号令を出し。
近代麻雀の編集が、秋田書店に逃げていた頃である。
しかもわしは。
原稿料を下げられていた。
漫画家が原稿料を下げられる。
今までに聞いたことがない。
しかも理由が
「人気作家さんの新連載がスタートしていて
そのギャラが高いので、かわりにウヒョ助さん下げていいですか?」
で、ある。
森川ジョージ先生は知らない世界だ。
講談社では、数十年、過去に1人もいないだろう。
こんな理由で、原稿料を下げられる中堅作家は。
そして1ページあたり2000円下がった。
これは年間で考えると。100万円も収入が下がることになる。
さらにコミックスの印税も下がり。
本来漫画家がもらえる印税は、10%
わしは3%である。
おそらく今も変わっていない。
少しは戻ったかもしれない。
1冊売れて、入るのは10円ちょっとだ。
監修の渋川さんは、もっと少ない。
ギャラ的に、バカバカしいお仕事だが、今も頑張ってくださっている。
一晩のスパチャの方がよっぽど高いだろ、と。
みんなもっと、渋川さんのお人柄を褒めた方がいい。
当時は1万部売れることすら難しい、麻雀コミックジャンル。
今でも難しいが。
コミックスがいくら売れても、正直お金は入らない!
少し売れたところで、わしは1巻あたり10万円入るくらいだ。
竹書房も苦しい。わしも苦しい。
助け合いじゃ!
正直、お仕事もらえるのは、めちゃくちゃありがたかった。
この時の恩で、今も頑張っておる。
さて、竹書房が倒産するか、持ちこたえるかは神頼み。
わしも船に乗ってしまった。タイタニックに。
そこで、自分もなんとかできないか。
せっかくもらえたお仕事、その恩返しもしたい。
やれることは…そうだ。
「せめて宣伝くらいは、自分で頑張れないか?」
そう思って、始めたのが
ツイッターである。
こんな神ツールがあったのかと。
その2年前に登録はしたが、放置してあった。
このSNSの素晴らしさを、まだわかっていなかったのだ。
自分の頑張り次第で、いくらでも沈みかけの船から
全世界に発信できる。
「ここにわしがいるぞ!」…と。
結果、このツイッターの存在は、わしを救ってくれた。
ほぼ沈没覚悟の状態を、なんとかこのゴムボートから
「無線」で叫び続け。存在をアピールし続けて。
今ではフォロワー6万人目前。
今もなんとか、荒れた海の中で生き延びておる。
しかしそれは、新たな苦難の始まりだったのだ。
ツイッターは便利だ。
ただ目立てば目立つほど、疲れることが次々と押し寄せる
サバイバル航海の始まりだったのである。
世界一荒れた海、麻雀界隈タイムライン
先日、フォロワーさんの1人から、こんなことを言われた。
わしが「多趣味の人って、基本おおらかな人が多いよね」
と言った所。
「麻雀と鉄道、単品で趣味の人は危険です」
…と。
わしは12年目でハッとした。
たしかに鉄道オタクで、趣味それ一本バキバキの人は「人物が面倒くさい」というイメージはあった。実際、世間的にもそんなイメージが強くあったし。わし自身も鉄オタから、とんでもない角度で絡まれたことも何度もあった。SNSでもリアルでも。
なんでそんなにピリピリして、いつも玄人気取りで偉そうなのだと。
知識をひけらかし、初心者をバカにして、気分で殴りつけてくる。
リアルでも駅のホーム、鉄オタのカメラの先に立っていただけで、舌打ちや野次を何度も受けている。自分以外は、人間に見えていないのか?…と。
鉄道好きは世の中には、意外と多く、わしもそんな1人だが。
同じ鉄道好きでも「数ある趣味の中の一つ」くらいの人は。そんな面倒くさい人物は少ないのである。リアルと変わらない、常識のあるコミュニケーションを普通に取れる。SNSでも問題がない。
なのに鉄道オタクまっしぐらの人は。
初対面の見知らぬ人に、なぜ初アプローチから、いきなりそんな雑すぎる態度を取れるのかと。
かつて、2ちゃんねるで一番やばい集団と騒がれていた「モーニング娘。オタク」でも、そこまででもなかった。
しかし落ち着いて、今までを振り返れば。
鉄オタに匹敵する「気の荒い集団」がおった
「麻雀趣味1本の、麻雀オタク」
である。
わしが慣れきっていたせいで、むしろわしもそのカテゴリーに染まっていたので、今日まで気づかなかった。
世間的に今、鉄オタと麻雀オタは、2大コミュやべえ集団なのだ。
いつもオタだけが、自覚がないのだ。
「俺たちそんなことないだろ? 他のオタクにもっと…」
そんなこと、あるのだ。
あるのだよ。
「鉄道と麻雀は、やばい」
プロレスファンの方にそう言われて。
ああ、SNSが発達した今、世間ではそう見られ始めているのかと。
(確かにそうだわ…トレンドで麻雀が上がるときも、炎上騒ぎばっかりだし…実際、日々とんでくる野次を眺めても、社会人としてやばいわ。
違法な撮影とか、違法な賭博とか、遠慮なく堂々とはしゃいでトークしてるの、この2つのオタクだけだし。わしもそんな1人だった。ああ、やべえやべえ。)
多趣味の人は、いろんなファン界隈をのぞいて、鉄道と麻雀の異常性に気づいていまうのである。わしもいざ俯瞰から眺めると、確かにそうなのである。
どうしてそうなるのか、なぜ鉄オタと麻雀オタは似ているのか…は、別の機会でのテーマとするとして…。
12年前、新連載スタートと同時に。
ツイッターで、麻雀界隈タイムラインに飛び込んだわしは。
その荒い波の厳しさに、さっそく飲み込まれていくことになる。
麻雀漫画を買ってくれるのは、麻雀ファンしかいない。
麻雀で遊んでいない、ルールもわからない人は100%買わないジャンルだ。
唯一のお客さんは、麻雀ファンである。
麻雀ファンと仲良くなりたい。麻雀プロとも仲良くなりたい。
敬語でペコペコご挨拶から始める、わし。
「おまえ漫画家か、漫画つまんねえな!」
「頑張ります、よければまた読んでください!」
「てか読んだことねえしw ゲラゲラゲラw」
「はあ…」
から、SNSがスタートである。
まわりもそれを眺めて笑ってる。プロまでも。
ここで気づけば良かった。
異常だと。
ここから12年の戦いが始まるが。
ヤンチャな麻雀ファンから、小馬鹿にされるところから始まり
次に待っていたのが
「日本麻雀プロ連盟から無視される」
である。
「嘘!?」と思う麻雀ファンも多いだろう。
なにせ、今はもっとも仲良いくらいの団体さんだ。
すごくお世話になっておる。
わしも連盟にできることは、何でもしたいくらいだ、
それくらい優しくしてもらっている。
ピークアウトでも、一番協力してくださったのが、連盟さんだ。
しかし12年前。
最初はまったく違った。
わしをフォローいてくれていた、連盟の麻雀プロは。
著名なプロでは…
魚谷侑未プロ
山田浩之プロ
黒木真生プロ
…記憶では、以上だ。
たった3人だ。寂しかった。
これが、鉄鳴きの麒麟児シリーズ連載中、数年続く。
連盟プロがフォローをしてくれるようになったのは
Mリーグが始まってからだ。
のちに、Mリーグ開幕以降だが。
当時を知る連盟プロに、こっそり聞いたことがある。
なんでわしはあの頃、無視されていたのかと。
「漫画のタイトルが麒麟児だったので、警戒されていたとは思います…」
「近代麻雀で連載始めた漫画家さん、どうせすぐいなくなるので…」
「なんかよくファンと喧嘩してたので…」
以上である。
なるほど!
まず「漫画のタイトルが鉄鳴きの麒麟児だったから」だが。
わかる。なるほどって思った。
当時、連盟の偉い人 vs 若いデジタル雀士の構図で
ファンも巻き込んで、いろいろ騒動があった。
はっきりいえば「森山さん vs 堀内さん」だが。
その堀内さんの描いていたコラムのタイトルが
「鉄鳴きの麒麟児」とほぼ変わらないタイトルだったのだ。
なので関係者作品を思われていたらしいのだ。
連盟プロの大勢が、この騒動と無関係なのに
連盟アンチから理不尽に絡まれていた。
「おまえも連盟プロだろ、何か言えよ!」と。
プロたち、みんながぐっと我慢していた。関わりたくないと。
「麻雀に集中させてくれ」と。
そんな時に始まった「鉄鳴きの麒麟児」
それは近寄りたくないw
君子危うきものに近づくべからず、だ。
なにがきっかけで、絡まれるかわからない。
正解。
わしも逆の立場なら、そうする。
ただ一つ、今だから言わせてもらうが。
「鉄鳴きの麒麟児」は。
編集長が勝手につけた漫画のタイトルだあ!!
わしは知らんところだし、堀内さんと深い交流もない。
作品も完全に無関係である。
しかしそんなこんなで、まずは連盟プロから
「警戒される」スタートですよ。
あと
「近代麻雀で連載始めた漫画家さん、どうせすぐいなくなる」
これもそうなのである。
麻雀漫画を近代麻雀で始めて、麻雀好きですとか言い始め。
2巻くらいで打ち切りになって。麻雀界隈から疎遠になる。
その後、麻雀の話なんか、一切しない。
長く麻雀に関わってくれる作家なんて数えるほどだ。
ツイッター始めたばかりの当時のわしには、まだその信頼がなかった。
今はあると思う。ウヒョ助は「本当に麻雀が好きな人だ」と。
プロにも敬意を持って、応援を何年も頑張ってくれている、と。
12年間、どんな若いプロの雑なお願いごとも、ほとんど受けちゃっている…と。追って眺めると、プロのお願いを断りきれず、なんでもノーギャラで引き受けてる可哀想なピエロみたいな人だと。
そのわしに「プロを侮辱してんのか?」とヘラヘラ絡んできた、あの協会プロだけはぁあああああああああああああああああああ!!!
わしの12年!
協会プロの雑なお願いに、何枚もイラスト描いて
どんだけ拡散お願いを引き受けてきたかぁああああああああ!!
クソ忙しい中ぁあああああああああああああ!!!
おまえは、何をやったぁああああああああああ!!!!
そのわしに!
「侮辱してる」だとぉおおおおおおおおおおおおおおお!?
…その話は、第3章くらいで、じっくり語るとして。
数年ぶりに、ガチめにキレたわ。
やっぱり口じゃなく、行動がないと、信頼はしてもらえないのですよ。
連載期間だけ「麻雀好きですう」という漫画家や、仕事ないときだけ「麻雀好きですう」というグラビアアイドルを、業界の人は大勢見てきてるのだ。
ツイッターに現れて
しばらくは眺められるのは、仕方ないですよ。
そして、ツイッター始めてから1年。
「ボクは」という可愛い喋り方で、話しかけられると、敬語で丁寧に全部リプを返していた「わし」が。
「いい加減にしろよおおおおおおおおお!!」とブチ切れるまで、1年だった。よう頑張った。1年も。
次第にツイッターで、喧嘩が増えた。
喧嘩のログばかり。
それは連盟プロ、近づきたくはない。
もとい、近づいてはいけない。
はっきり言う。
ちゃんとしてる団体は「日本プロ麻雀連盟」だけだ。
アンチすらも、本音は認めてるはずだ。そこは。
漫画家なんて、関わっても何の得もない。
漫画家なんて、所詮、業界の外の人間なのだ。
しかし、当時から優しかった魚谷プロだけは、一生物だ。
静かに眺めていてくれた山田プロも大好きだ。
さすが若手の面倒見がよく、下に愛されている理由がわかる。
あの頃の黒木さんはまだ、おそらく「監視フォロー」だw
そんなこんなで始まった、12年前のツイッター。
ここから、わしを苦しめる様々な事件が襲ってくる。
それは第2章で、じっくりと。
今回はたっぷり、愚痴るぞおおおおおおおお!
続き
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