ボヤ炎上の怖さの話。
「ボクが落とした財布を、一緒に探してくれませんか?」
そんな誘い文句で、若い女流プロをくどき落とそうとした人気プロがいる。
一部でヒソヒソ、ニヤニヤされたゴシップ話である。
若手女流さんに「面白い裏話ないですか?」
…と、配信番組で、MCがトークテーマをぶん投げた。
MCや男性視聴者が期待しているのは「恋愛絡みネタ」である。
ゲストの若い女流さんが、期待された「空気」を読みつつも、誰も傷つけないように「とある人気プロ」とだけ話して、上手に語った笑い話である。
財布から始まるアタックを受けたのはその女流さんだが、もちろん失敗した。
別にその先もトラブルもなく。特定できるわけもなく。
面白い番組となった。
さて。
しばらくして、誰かが気づいた。
「園田さんって昔、酔っ払って、財布落としたツイートしてなかったっけ?」
「あったような気がする…調べるか」
こうなると話は変わってくる。急に一部で盛り上がり始める。
ツイートが発見されると
「じゃああれって、園田さんじゃん!」「エロおじさんじゃん!」
なんてザワザワし始める。
園田さんに確定、そうであったら面白い、で盛り上がる人たち。
触れないようにしながらも、業界の人もニヤニヤ眺めている。
先に言っておく。
犯人は、園田さんではない。
かなり月日が流れてから、女流さんご本人に、わしが直接聞いている。
しかしSNSというものは残酷なもので。
「20歳も若い娘さんを、トリッキーなくどき方する人だったのか、あのMリーガー。やべえな…」と、まるで水に焼酎をぶちこんだように。
ゆっくり静かに、ハッキリ見えない形で広がっていった。
そんなわしも当時は、無言ではいたが
(勝手に決めつけちゃだめだけど、園田さんなのかな? そうだったら、めちゃくちゃ面白いな)とニヤニヤしていた。
「嘘か本当か知らないけど、面白いから、そうであって欲しい」
「いっそ、そういうことにしよう」
という無意識の感情は、怖いのである。人はそれで酔っ払う。
そうなると、園田さんが番組で、どんな紳士的なコメントをしても
(おまえそんなやつじゃないだろ、財布ナンパの人だろw)みたいな、モヤッとした気分や、ニヤニヤした視線が、いつまでもいつまでも残り続けるのだ。そう思いこんでる人は、声には出さないが。
女流さんの方も(なんであのゆるい話が、勝手にそんな話になってるのかしら?)と、首をかしげつつも。
別に激しく、山火事のように炎上してるわけでもなく。
小さい小さいボヤが、地面の中でプスプス長く燃えているのである。
地中で広がっている、くだらないネタに。
ある日急に「違います! あれは園田さんじゃありません!」と大声で叫ぶわけにもいかない。これは眺めている友人や、園田さんも同じである。
園田さんと言えば、かつて風俗通いを疑われた「ヤンチャな子猫事件」もあった。それはかなり騒がれたので、園田さんが違うとしっかり釈明し、お笑いネタで終わったはずなのだが。
ここでまた(あれ、やっぱ通ってたんだろうな、ヤンチャじゃん)(誤魔化してたな)(財布ナンパのエロ親父だからな)みたいなことで、また疑い直す人が出る有り様で。
そもそも、ナンパも風俗も犯罪ではないので。
例え噂が本当だった場合でも、別に問題ないところが面倒なのである。
元々は
「誰かが勝手に、園田さんだと言い出した」
「そうだったら面白いと思った人が、乗っかり始めた」
結果
「よくログ読まない大勢が、へえそうなのか、と思い込んだ」
「SNSの片隅や、酒の席などで、話題がゆっくり広がった」
これがSNSの面倒くさいところである。
「違うって、しっかり説明したじゃん」ということも。
その人に発信力がなければ、その説明はほぼ読まれていない。
大勢の噂話の広がりには追いつかない。
いっそでっかく炎上してくれた方が、完全に火が消えるケースも多いのだ。
さて、先日の「三暗刻見落とし疑惑事件」である。
結論としては、見落としではない。
菅原さんご本人も「反省している選択ミス」と、インタビューや近代麻雀の記事で語り。今では、大勢が理解しているところなのだが。
しつこいアンチ以外は。
しかし、その鎮火にたどりつくまでの数日間は
「ああは言ってるけど、見落とししたに決まってる。
だからあのインタビューは誤魔化している。
隠すための言い訳だ。ズルい。
あの女流はそういうことをする女だ」
みたいな内容の悪口が、ゆっくり広まっていたのである。
その頃わしは。
「まあ切り間違いだろと思う視聴者もいるかもなあ」と眺めて、まったく触れていなかった。わしは菅原さんの1s切りの選択と違い、大多数の3s切り派である。
菅原千瑛プロの試合を、そこそこ数を見てきた人には「慎重で落ち着いてる選手」「なにより受けが強い選手」と知っている。
わしも昔から、たびたび絶賛ツイートをしていた。
なので
(いつも慎重な人なので、切り間違いや手役見落としよりは、守備面の理由だろうなあ…。インタビュー聞く限り、やっぱそうだったなあ、慎重になりすぎたかしら?…本人も反省してそうだな)
だけの話であった。
ところが翌日もまだ「見落としだ、見落としだ」と騒がれている。
なんでじゃ、インタビューでも見落としって言ってないじゃろ、何を頑張っているのだこいつらは…と思ったら。
「絶対に三暗刻の見落としなのに、見落としと本人が認めてない!」
と怒ってるのである。
絶対の自信はどこじゃ、エスパーなのか、どこかに通院してるのか。
まあ一部だが、叩きたい連中はしつこく叩き続け、そこにいいねボタンがどんどん押されている。
「見落としのわけないじゃろ」
という、わしのつぶやきに、いっぱい反論がくる。
「可愛い女流だからって擁護しやがって」という悪口も見つかる。
や、擁護っていうか。
広がってる話が、むりやりな決めつけで、実際と違うじゃん。
一晩で大勢が、見落としじゃないと死んじゃうウイルスにでも感染したのか?
この空気はなんだと。
見落としではなかった、で、終わってる話じゃん。
選択の損得の話は、まあ勝手に麻雀議論として楽しめばいいけど。
そこにまだ「見落とし」というワードがしつこく絡んでくるのである。
「堀さんも、見落としだって言ってた」
…と。
嘘だろと。
や、ライバルなら試合も見てるし、守備面が理由かもなって、選択理由の先頭に浮かぶじゃん、と。
菅原千瑛はそういう選手じゃん。
家庭問題で長くバタバタしてた朝倉プロが、選手の過去の試合を観戦するのが間に合わず。解説で拾えなかったのなら、まあ百歩譲って仕方ないとして。
嘘だろと。Mリーガーが、Mリーガーに、そんなこと言う?
もしイージーミス疑うなら、見落としよりも。
うっかり高速ツモ切りの、切り間違いの方が先に浮かぶんじゃないのか。
丸山さんもたまにやる。ただのヒューマンエラーだ。
なのに、なぜ「見落とし」だと断定したのか?
確かに、初中級者がレア手役を見落とすことは、たびたびあるが。
それをトッププロ、しかもあの慎重な菅原千瑛に当てはめるのは
「意地悪な軽口(かるくち)」か
「ライバル研究不足で、相当弱く見てる」のどっちかではないかと。
菅原千瑛が、いつから麻雀打ってると思っておるのじゃ。
ヒサトさんが小僧の頃から、アマなのにCM出てるんだぞ。
ベテランじゃ。
実際、ライバルの試合はよく見て研究する多井さんは。
その局面に、いろんな説明の言葉が出てきて「俺ならこう解説する」と動画でも語っている。内容はわしの1s切りの考察と、ほぼ変わらなかった。
ちょっとでも彼女の試合を見たことがあれば。
中級者のわしでも浮かぶし、語れる話なのである。
「見落としだ、恥ずかしいやつ」なんて雑なことは言わない。
わしの素直な本音は
(意地悪で嫌な先輩だな、言い返せない後輩相手に、よく言うわ)
だったのだが。
「研究不足だろ」と、意地悪よりは、顔が立つ方で。
さらに
「だから他団体相手にタイトル全然とれないんだよ」
と、本音7割の嫌味も足しておいた。
まあ、それはいいと。
わしと同じように、堀さんも強めに放った軽口なのじゃろうと。
しかし問題は、その堀さんの軽口をアンチたちが
「強い武器」として使い
「堀プロがそう言ってるからには、見落としなんだ!
なのに菅原本人はまだ認めていない!誤魔化してる!ずるい!」
と、ワイワイ話題を盛り上げ続けているのである。
ホリホリうるせえなと。
とうとうトレンドにもなってしまった。
それをふんわりと軽く眺めるギャラリー、大勢がそんな「しっかりログなんか読まない人たち」である。義務もないし、面倒くさいからだ。
「手役を見落とししたらしい」
「インタビューで誤魔化してるらしい」
「堀さんも見落としと言ってるらしい」
「らしい」だけが広がっていく。
「あ、菅原さんってそんな感じな人なんだ、どうでもいいけどね、ふーん」
くらいの静かな感じで広がっていく。
どうでもいいから、しっかり内容を確認しにも行かない。これがきつい。
園田さんの時と、状況は一緒なのである。
「それおかしいだろ、言いすぎだろ」
ちょっと擁護するだけで、なぜかしこたま叩かれる。
「おまえは堀さんより強いのか、信頼あるのか!」
と来るので。
人間と会話してる気にもなれない。
あれはただの軽口で、堀さんも強くは主張していない。
菅原さん本人が、あわててツイッターで釈明するのも、かなり危ない。
相手は
「面白いから、見落としであって欲しい人たち」
「熱くなりすぎて、今さらひっこみつかない人たち」
である。
アンチは「だって堀さんが」を盾に使ってくるので。
下手な反論をすると、他団体の偉い先輩「堀慎吾」の顔を潰すことになる。新人が、サクラナイツやプロ協会を敵にまわせるかと。無理である。
そもそも争いにしたくない。関係者も巻き込みたくない。
無言でいるしかない。
我慢我慢で、泣き寝入り。
その結果、麻雀ツイッター界隈で連日
「菅原はずるいと叩く勢」
「無言勢」
「ログも読まず、わかった気になる勢」
この3者ばかりツイッターにいると、結果「園田さん状態」になってしまうのは、まったく同じなのである。
毎日、誤解がゆっくり広がっていく。
叩かれてるのが、すでに大人気のベテランプロなら、まだ少しはいいかもしれない。叩かれてるの堀さんならば、本人もチームも全然平気だろう。
味方も多い。大勢力のサクラナイツファンと、協会プロも全員味方である。
しかし、これから人気を上げなくちゃいけない、若い新選手が。
この残酷な「園田さんモード」で、勝手につけられた悪い印象だけが広がっていく、そんな可哀想で理不尽なMリーグのスタートはキツすぎる。
何のハードモードだ。
じゃあ、ボヤ炎上に解決策はあるのか?
・鎮火するのを待つ。
これは完全に園田さんモードになるので、絶対やばい。駄目。
「なんかよくわからないけど、ズルい女なんでしょ?」
の、シャ乱Q扱いが、軽く乗っかりファンの間で、何年もうっすら続く。
・堀さんやサクラナイツが、面白ネタにする
これが一番良い。ピコピコハンマー写真で2人仲良さげにすれば。
その写真やツイートによる好印象が、雑な噂を塗り潰し。
両者を「なんか好き」になる。
ライトファンの最大多数を占める「軽く乗っかり勢」は。
表面の噂やネタだけで、選手を「雑なノリで嫌い」になるけど。
同じく楽しければ「雑に好き」にもなる。
誰も損はしない。
ほぼ解決。今までもお笑いネタにして、解決した例が多い。
逆に謝罪はよくない。
堀さんのファンが「俺たちの兄貴を、よくも謝らせたな!気に食わねえ!」と逆恨みしてくる。元は軽口なのだ、軽い笑いが一番。
そこを期待したが、サクラナイツ側は特に何もしなかった。
元々、堀さんはツイッターをあまり動かさない。
本人が、その後のフォローをするつもりがないのなら。
せめてチームがフォローして欲しかったが、そこは残念だった。
変わったなあ、サクラナイツ。
そうなると、Mリーグと無関係のまわりが、フォローしなくちゃいけないという、空気にはなってくるもので。
・声の大きい人が、デマや、根拠のない悪口に言い返す。
とにかく、見落としはしてないのだ。
これはフォロワーさんが多い、Mリーガーがやるのが一番である。
例えば、アメリカのフォロワー50万人いる人気歌手が、英語で反論してあげたところで、誰も読まない。
「麻雀ファンがわざわざ、進んでツイートを読みたくなる人」じゃないと駄目なのである。
フォロワー数が多く。RT応援協力者も多く。
ツイートも目に入れば、読み飛ばされることも少なく。
そのジャンルのファンに、中身をしっかり読んでもらえる。
それこそが「Mリーガーの強い発信力」
ただそれを麻雀プロがやると。所属チームに迷惑や手間かけたり。
仲の良い堀さんを前に、気まずかったり。気をつかったり。
なにより「絶対見落としだと、言い張ってしまった勢」に嫌われる。
人気商売では無理だ。無言が一番安全。もうちょっと激しく強く炎上すれば、言いやすいかもしれないが、静かにダラダラ燃えてるボヤ炎上である。動けない。
ならば、他にいるだろうか?
Mリーガーに匹敵する発信力で
「嫌われてもいいですよ? おまえのせいで、菅原さんが可哀想、菅原さんを逆におまえから守りたくなった…とアンチに言われるまでやりましょうか?」
と言える、業界の外の、麻雀ファンにも名前が広い人。
そんな都合の良い人、いればいいんだけど。いない。
なかなかわしの目でも、そんな人は見当たらないし、浮かばない。
鏡見たほうが早い。
たぶん「あ、嫌われてもいいよ」と、できるMリーガーは、多井さんくらいである。でもやっぱりボヤのうちは、ラスボスも動きづらい。
ラスボスはラスボスだけに、最後に出てくるべきである。
・近代麻雀などの人気記事コンテンツで、しっかり説明する。
とにかく菅原さん本人が、勝手にツイートするのは危ない。
おそらく引用RTがついて「こう言ってるけど、見落としに決まってる」「じゃあ堀さんが間違ってるっていうの? おまえ強いの?」と書かれるだけである。アンチ勢なんて、本人の食いつきが嬉しくて、小便ビタビタ漏らすくらいですよ。それはまずい。オモチャになる。
しばらく野次に我慢して、観察して。
勝手に一人で感情的に動かなかった、菅原さんの選択はさすがである。
慎重、それが、菅原千瑛!
なので定番の、黒木さんが記事を書いて。
上げた拳をふりおろす場所を探してる、しつこいアンチには。
菅原さんのかわりに、黒木さんがぶん殴られるのが一番いい。
後輩や若手のかわりに殴られるのが、あの人の仕事。
今見たら、まだ殴られてる。
便利な先輩だな、黒木さん。
結果、この騒動は、しつこいアンチがまだ頑張りつつも。
軽く乗っかり勢が飽きてきたのか、ゆっくり火は小さく。
落ち着いた頃に、多井さんがこのボヤ騒ぎに
「そういう見方はやめようぜ、スマートいこうぜ?」
という動画を発信。
これをされるとアンチには、堀の盾より、たかはるの剣が強し。
ほぼほぼ鎮火。さすがラスボスである。
そして、一番美味しいところを持っていく白鳥翔。
あまりの爽やかさに、見落としだ!と粘って騒いでた連中も、ムード的に叩くのに耐えられなくなり。
「そうですよね!」なんて、過去発言を忘れたように掌返し。
これができるのは、白鳥翔だけ。
一連の騒動がほぼほぼ終わり。
今わしは、こう思うのじゃ。
白鳥翔、ハゲればいい。
炎上には2種類あって
頭をドコンと撃ち抜き、一度ダウンさせるような、激しい炎上と。
ゆっくりボディに効いてくる、ボヤ炎上。
回復させるのが難しいのは、SNSでは後者なのである。
一度たいしたことないと放っておくと、何年もずっとコゲ臭い匂いを、理不尽に漂わせて生きていくことになる。財布ナンパおじさんにもなり、ズルい言い訳女にもさせられてしまう。
あとサクラナイツは、何か菅原千瑛プロが、より好かれて持ち上がる、楽しいアクションや絡みをどこかで起こしてあげてくれ。得意じゃろ。
笑顔の発信と言えば、どこよりもサクラナイツだ。
あと、園田さんの財布は無事に見つかっている。
(おわり)