中田花奈って誰?…の話
あの日。
わしは一人のアイドルの名前を聞いた。
「……中田花奈?」
知らん。
ナカタ?
ナカダ?
そもそも乃木坂46とやらを、わしはよく知らない。
モーニング娘。のファンを、6期あたりで引退してから、その先のアイドル界隈のことはまったく知らんのだ。
おそらく AKB48の、いとこユニットみたいなもんじゃろ。
姉妹ですらないだろ。雑魚グループだろ。人気あるのか?
所属メンバーを誰一人、知らないわ。
そんで、その雑魚ユニットの足軽みたいな女が。
Mリーグのパブリックビューイングに顔を出して。
人気アイドル・須田亜香里にくっついて、風林火山を応援していると。
そのナカダなんとかって足軽が。
嘘つけ。
おまえ麻雀なんか好きじゃねえだろ。
どうせ(二階堂姉妹はなんか聞いたことあるな…ここでいっか) くらいで、風林火山をとりあえず応援チームに選んだんじゃろ?
勝又先生なんて、まだ知らないままだろ。
仕事の幅を広げたくて、軽く乗っかっただけじゃないのか?
そんな芸能人がこの10年、麻雀業界に山ほど踏み込んできたけれど。ノリで麻雀プロのライセンス取ったが最後。リーグ戦にも出ないで、みんなどっか自然に消えた。
中田花奈、どうせおまえも、それ狙ってるんだろぉおおおおお!?
Mリーグがまだ黎明期の、2019年のことだった。
フォロワーさんに話を聞くと、乃木坂とやらは、女性アイドルグループではトップくらいに、世間では大人気らしく。
わしが「あ、顔は知らないけど、話題はよく聞くなあ」って名前が、ほぼ乃木坂のメンバーであった。
その黄金聖闘士12宮みたいなグループの一人が、中田花奈であると。
まじか。
ややや、おまえだけは名前を聞いたことねえわ。
誰だよ。
きっと黄金聖闘士でいえば、おまえ、山羊座のシュラあたりだろ。
右下でしゃがんでる、黒髪短髪の。
わしは元・アイドルオタなので知っている。
グループの中で、髪型をショートカットにできる女性は、ガチの美人だ。
「顔に強い個性がありつつも、すごい美人」でないと、アイドルとして、ショートカットにするのは難しい。髪をバッサリ切った瞬間に、中学卓球部の女子部員みたいになり。花畑で埋もれてしまう。中田花奈はショートカットになれる美人だ。確かに綺麗じゃ。
しかしボーイッシュで、涼しい目線のモデルみたいな美人は、アイドルオタクには絶対ウケるわけがない。あいつらは多勢が「女の子らしくて、ふわふわ可愛い」を好きなのだ。
藤本美貴もそうだった、ソロからグループに入った瞬間、埋もれてしまった。みんな、なっちや、加護ちゃんや、亀井が好きなのだ。
ここで聖闘士星矢から、ジャンプつながりで「ハイスクール奇面組」の女性キャラを思い浮かべた。
アニメの主題歌がすべて、秋元康プロデュース。
うしろゆびさされ組。
初代・乃木坂みたいなものだ。
乃木坂のことはまったくわからないが。わからないなりに例えれば。
ピンク髪のセンターの女の子が、正統派可愛いの、橋本奈々未じゃろ?
一番元気に物語を動かしていた青髪の子が、高山一実じゃろ。
ツンツンしてる黄色のビキニが、齋藤飛鳥。
端っこの外国人が、ドイツ生まれの生田絵梨花。
左端の一番かっこいいのが、白石麻衣じゃろ。
中田花奈…おまえ。
わしの予想では、乃木坂において、右から2番目の水色ビキニ。
物月珠美のポジションだろ!
つねにアニメの画面の中にいて。登場回数はめっちゃ多いのに、名前を知らないまま、顔だけはよく覚えてる、あいつだ。
センターを取れるわけがない。
しかし…思いだしてしまった。
わしがアニメを見ていた、子供の頃。
このキャラが一番好きだったのだ…!!
確かこのキャラ。当初はヒロインの、恋敵ライバルみたいな役での登場だった。その後はヒロインたちの級友として、つねに隣にいるだけのキャラに。
とはいえ、ギャグ漫画の世界、頭のおかしなやつらばかりの中で。
この物月珠美だけが、唯一まともな一般感覚をもったキャラ。
こいつがいないと、他のキャラの異常さが際立たない。
なので漫画の構成上、必須キャラになっていた。つねに画面にいる。
わしは幼いながらも、このキャラの重要さがわかっていたので。大事な役割を、でしゃばることなく、影でいつも気づかれず頑張ってる、このキャラがめちゃくちゃ好きだった。
乃木坂にくわしいフォロワーさんに聞くと、けっこう似たポジションだった。
やはりセンターまでには届かない。ダンスは飛び抜けて上手く、踊ると目立つ。ハマると一直線のオタク気質で、かなり頭が良いと。経済学の本を出しておる。
苦労人だが、それを暗く見せることもなく、けなげな人だと。最近、麻雀プロからアイドルが麻雀を教わる、クソみたいな企画番組にちょいちょい出ていると。おいおい、売れないアイドルの、墓場見てえな企画だな。
とはいえ…。中田花奈。
好感度が高いやんけ。
そうか、麻雀覚え始めてるのか。
うっかり本気で好きになってくれたら嬉しいな。
ちょっと気になるアイドルだな、と思いながらも。
ほぼほぼ忘れかけていた
その2年後。
2021年
3月。
桜がつぼみをつける季節。
「中田花奈、麻雀プロテストに合格!」
という、冗談みたいなニュース記事が飛び込んできた。
やりおった。
こいつ、やりおった。
来たぞ、進路に困った芸能人が、また一人。
軽い乗っかりで、麻雀業界に乗り込んできた。
合格したことが、盛り上がりのピーク。
どうせ一瞬で終わる盛り上がりじゃろ。
来年にはこいつ、ひとことも麻雀の話をしないじゃろ。
ちょっと尻を一瞬置いただけの、いつものアレだ。
アッハッハ、くっだらねえ。
「中田花奈が、麻雀カフェ経営の準備」
待て待て待て!
軽い乗っかりにしては、派手すぎるじゃろ。
落ち着け。
知らない町で、市営バスにちょっと乗っかった…じゃねえのか?
ハーレーにまたがってるじゃねえか!
戻れねえぞ、それ。
麻雀のパープルハイウェイをどこまでも飛ばす気か。
「中田花奈、桜蕾戦予選突破、ベスト16進出」
待て待て待て待て待て待て待て待て!!!
さっき、プロになったばかりじゃん。
3月9日にプロ試験合格を発表。
3月14日に、プロになって初めての公式対局。
なんで1週間後に、放送対局に出るんだよ。
しかも自力で、予選突破してるのかよ。
さらに予選2位で通過ってw
強いんじゃねえのか。
ややや、絶対そんなわけないだろ。
たぶんこのアイドル。
麻雀なんて、企画番組の仕事で、ちょろっと打っただけで。
本業が忙しすぎて、さらにカフェオープンの準備でバタバタ。
たぶん生涯で、100戦も麻雀打ってないだろ。
50戦も怪しいわ。
努力家で、お勉強がすごくできるのは聞いていたので。
そりゃプロ試験は仕事忙しかろうが、しっかり勉強を間に合わせ、合格するだろうけど。
無理だろ、放送対局は!
事故るぞ!
覚えた点数計算も、試験後にはもう、全部忘れてるじゃろ。
てか、なんで、予選2位で突破できるんだよ。
桜蕾戦は、その2021年に新しく立ち上げられた
「20代の女性プロ限定のタイトル戦」
である。
のちに女流桜花を目指していく、桜のつぼみたちの大会である。
瀬戸熊プロが、若い子に早いうちから舞台経験を積ませるため、わざわざ森山会長と殴り合いをして、右腕と片目を失ってまで作ったものだ。
もちろん、中田花奈と同じように、1年目の若い女性プロも予選に混ざってくる。しかし同じ1年目でも、その雀歴や、そこまでの打数が違う。
大学に入って、見つけたバイトがたまたま、雀荘のウェイトレス。
麻雀を覚えてハマってしまい連日、麻雀を鬼打ちしてしまう。
1年後、2年後、お店の看板娘になってしまい。
いっそのことプロになれば?…といわれ、プロ試験に挑戦。
新人とはいえ、そんな腕の立つ女の子ばかりである。
合格前にはすでにもう、常連の強いオヤジ客相手に負けじと鍛え上げられ、かなり打ち慣れている、プロ1年目でも、そんな猛者たちだ。
中田花奈は違う。
わしの予想では、生涯で50戦も打ってない。
これは放送で事故るぞ! ワクワクしかない!
この試合を見るためには、日本プロ連盟のチャンネルに加入しなくちゃいけないらしい。くっそ面倒くせえ。でも仕方ない。
わしは今世紀最大の大惨事を見たいのだ。
点数計算できるかも怪しいアイドルが、放送対局でしくじりまくり、番組がめっちゃくちゃになる光景をゲラゲラ笑いたいのだ。
楽しい時間になるであろう。
そんなの即、課金ですよ課金!
その日の中田花奈、桜蕾戦ベスト16
プロデビュー戦、放送対局。
ものすごい数で、チャンネル加入者が増えたらしい。
彼女のファンなのか、それとも、わしみたいな意地悪な麻雀ファンなのか。とにかくその日は、とんでもない視聴者数に。
試合前の、選手インタビュー。
現れる、プロ歴・1週間のアイドル。
来たな、中田ぁああああああ………
おまえ……
くっそ可愛いなっ!!
緊張で目がうるんでいる。それが可愛いをさらに加速させる。
「いたらない点も多いかと思いますけど…自分のできるかぎりを尽くして、これから頑張っていこうと思っております」
や、絶対、すべてにおいていたらないじゃろ。
間に合ってないじゃろ。
辞退すりゃ良かったのに。
放送対局で堂々打てる腕になるまで、どっかで1年も3年も練習してくりゃ良かったんじゃないのぉ〜〜〜〜〜?
ニヤニヤと可愛い女の子に、意地悪な視線を飛ばしてしまう中年オヤジ。
そんな中田花奈のプロデビュー戦。
20代限定のヒヨッコ同士の戦いだ。
中田花奈と戦う相手も、おそらく放送対局に慣れておらず、それなりにビビってるはずだ。一緒に恥かくにはいい舞台だろう。
さて。
記念すべき、中田花奈、デビュー戦の相手は…
待て待て待て待て待て待て待てっ!!!
そいつ、ヒヨッコじゃねえだろ。
わしがツイッター始めた大昔から、知ってる名前だぞ。
「千瑛の読み方わからない」で有名な、菅原ひろえだろ。
中堅の強いやつじゃねえか。まだ20代だったのかよ!
20代で、一番麻雀打ち込んできたであろう、プロ歴長い中堅女流と。
一番打ち込んでないであろう新人女流を。
ひっそり「若手同士のフレッシュな大会」みたいに放映するなよ。
他2人の対戦相手は
のちにプロクイーンを穫る蒼木翔子と
のちに渋川難波を穫る早川りんかである。
ヒヨッコどこだよ、リングに闘鶏のシャモしかいねえよ。
デビュー戦からカード強すぎるじゃろ。
これはえらいことになるぞ。
新人ボッコボコもいいとこだよ。
中田花奈が、初めてもらった配牌。
迷って、第一打を選ぶ指が、宙でフワフワさまよい。
選んだのは、1s
ええやないか…!!
初級者は手癖で、孤立の字牌を切りそうなところだけどな。
これ、ホンイツも見てるんじゃろ?
でも緊張して、ポンの声が出ないんじゃないの?
もとい人生で、ポンしたことある?
「ポン」
あ、出た。
ホンイツまっしぐら、中をポン。
24sのカンチャン払ってる最中だったので、4s切るかな思ったら
危険度で先に、ドラそばの3pから打つ。
あれえ?
おかしいぞ、この子、普通に打てるぞ。
中に続いて、西もポン。
テンパネの香り。大丈夫か点数計算。
そして終盤、リーチを打ってきた、菅原千瑛
その曲げた7mに
「ロン」
7mはペンチャン待ちにも取れるので、絶妙なラインだが。
一瞬も迷わず
「3900」
正解。
点棒の受け渡しもスムーズで、解説の白鳥プロも褒める。
なんでそんな当たり前ことを褒めなくちゃいけないんだ思いつつ。おそらく実況解説も、すごく心配していたのであろう。
中田花奈は、はたして放送対局に間に合わせてきたのかと。
間に合ってた。
間に合ってたどころか。
3回戦オーラス、中田花奈、ハイテイで大まくり。
解説席もコメント欄も跳ねるように、大盛りあがりである。
ハイテイがついたので、今一度、丁寧に指を折る中田花奈。
3000,6000
そうだ、いいぞ、堂々と指を折れ。
もう、その仕草までキュンキュンくるように。
あかん、わし、この子を好きになってきている。
まさかのベスト8への勝ち抜きが見えてきた。
もう馬鹿にしたい気持ちも、だいぶ薄らいできていた。
ただただ「いっそこのまま、中田花奈に勝って欲しい!」である。
最終戦を前に、トータルトップである。
イケる。
中田花奈の表情も、勝利を目指す、凛々しいプロの顔になっていた。
しかし、最終戦。
いきなり事件が起こる。
東1局がスタートしてすぐ
中田花奈が手を挙げ、立会人を呼び始めた。
第一打を、ツモる前に切ってしまったのだ。
やりおった。
やっぱり、やりおった。
やめろ。
立会人のともたけさんを、至近距離からトップアイドルが
そんなうるんだ目で見上げるな。
ジジイが若返ってしまうだろ!
チョンボで、マイナス30ポイントである。
これは終わった。今まで積み重ねたポイントがごっそり消去である。
マイナスしたことより、対戦者にご迷惑をかけてしまった申し訳なさで、ぐったり落ち込んでる表情だ。苦しそうに、うつむいている。
もうこれは負けた。
メンタル的に戦えない。
アイドルがチョンボするのをワクワク待っていた意地悪な中年オヤジも、一緒になぜかションボリしてしまった。
当初の予想のかなりナナメ上で、しっかり戦えていた。
きっと悔しいじゃろ。
わしもなぜか悔しいぞ!
しかし。
中田花奈は折れなかった。
接戦のオーラスをアガりきって勝ち上がってしまう。
勝ち上がりを笑顔で称える先輩たちに、水飲み人形くらいの勢いで、ずっとヘコヘコ頭を下げ続ける、中田花奈。
下げすぎだ!もげるぞ首が!
そんな水飲み人形、中田花奈。
ベスト8も勝ち進み。
決勝戦進出。
なんだ、おまえは。
こういうのが、スターなのか?
もう、この頃には、わしは中田花奈の半分ファンである。
最初はヨチヨチだった理牌。
勝ち進むごとに、その速度が上がっていく。
成長を見るのが、楽しくてたまらない。
ここまで来たら、いっそ優勝して欲しい。
してくれ。
馬鹿にして試合を見るより、応援するほうがもっと楽しい。
認めよう。面白い。
最強戦のアンバサダーをやってるらしいが。
今、最強戦より、きみの試合が面白い。
決勝戦前のインタビュー。
解説のタッキーの言葉を聞きながら。まるで監督の指示を真剣に聞く、部活少女みたいな眼差しで、カメラを見つめている中田花奈。
主人公感がたっぷり。これはもう流れ的に、優勝間違いない。
しかし、ペコペコ水飲み人形の前に、本物が現れた。
優勝が決まった瞬間、なにごともなかったように水を飲んでた怪物。
吸引中に、カメラに気づいてハッとして。
あわてて感極まった表情を作ろうとしたが、全然間に合わず。
まるで「私が優勝に決まってるでしょ」と言ってるかのように、只者じゃない貫禄ある表情で、ゆったり水をすすってる姿をすっぱ抜かれた、この新人。
のちにMリーグでMVPを穫る怪物、伊達朱里紗。
観衆の前で、ウイニング水飲みを初めて見せた瞬間である。
伊達朱里紗も、声優の世界では人気でファンも多い。そこへさらに中田花奈のファンも大勢集まり。
若手の大会ながらも、大観衆。
その大勢の目の前で、かっこよく勝てたからこそ。
伊達朱里紗が、より早く、強いと多方面に知られたと思っている。
そう、才能ある人が浮き上がるには、大勢の目が必要なのだ。
中田花奈は、その目を集める、強い引力がある。
とにもかくにも怪物の前に、中田花奈はやぶれさった。
プロ歴1週間のアイドルは
決勝戦終わりののインタビューで
「本当にありがたい」
と、感謝を口にした。
この先、どんなに勉強しても、強くなっても。
決勝戦で得られる経験を手にするのは、なかなか難しい、と。
この場所に立てたことが、ありがたい、と。
そういえば、勝又先生も言っていった。
「Mリーグ1戦で得られる経験は、100戦相当」
のちに彼女は、RTDガールズトーナメントでも決勝に進む。
優勝したのは、のちにチームメイトとなる、菅原ひろえだった。
解説のたかはるが、賛辞を送った。
「ボクに似て、消極的なところが弱点。上手く打とうとして負ける」
「この優勝は評価されて、必ず次のステージに上がる」
「いつか戦いたいね」
2年後、たかはるの言葉が、すべて的中。
おそらくこの優勝がきっかけで、ビースト選考会の8人に選ばれ。
今やMリーグでたかはると戦うことになり。
三暗刻を前に消極的になり、うまぶりガードでラスることになる。
そんな解説のたかはるが
4位で敗退した中田花奈にも、アドバイスの言葉を送った。
「ボクはいっぱい負けて、悔しい思いをして、麻雀なんかやめようと何百回も思って、でもそのたびに少しづつ経験を積んで強くなっていった」
「まわりと違う、すごいプレッシャーがあると思うのよね。スターとして入ってきてしまっちゃったから。すごくやらなくちゃって思ってるのを、義務みたいに思ってるところがあって。それで麻雀を嫌いにならないかすごく心配なの。嫌いにならず、プロを続けて欲しいなあ」
よう、アイドルさん。
泣くほど、麻雀に本気かね。
そうか、ガチなんだな。いろいろ悪かった。
麻雀カフェのロゴマークを「ネコの肛門みたいだな」なんて言って悪かった。
いつしかわしは。
中田花奈がグラビアの雑誌を、コンビニへ買いに走るくらい、情が乗ってしまった。軽く乗っかってしまったのは、結局わしの方である。
中田花奈は、麻雀のスタートがあまりにも遅かった。
麻雀との出会いも遅ければ、多忙なアイドルの仕事に追われ、
アイドルを卒業、やっと麻雀を楽しめると思ったところで、麻雀プロ入りだった。
たぶん普通に麻雀を勉強したくらいでは
学生時代にどっぷり麻雀にハマって、朝晩と何年も打ちまくっていたまわりのプロには、一生追いつかない。
リーグ戦も頑張り、昇級も降級も経験した。
天空麻雀でも優勝した。
でもまだまだ追いつかない。
じゃあどうするか。
そこは、たかはるがいうとおり
どんな嫌な思いをしてでも、馬鹿にされてでも、野次られてでも。
経験を積んで、強くなるしかない。
経験値がより高い場所に身を投じて、もまれるしかないのである。
勝又先生が言っていた、1戦が100戦相当の場所。
Mリーグだ。
本気で。
本気で強くなりたくて、この道で食っていく覚悟なら。
叩かれても、飛び込むしかないと思ったのだろう。
もしこれを逃げるなら。
そいつの「強くなりたい」の気持ちは、嘘っぱちだ。
今、Mリーグを見て、中田花奈を野次ってる人たちの気持ちはわかる。
おそらく桜蕾戦を見て、中田花奈を知る前の、わしと同じように。
芸能界から麻雀に、軽い気持ちで乗っかってきたアイドルに見えているのだろう。
どうも性格的なものなのか、芸能育ちの習性なのか。
多方面に気をつかいすぎ。全部をしっかりやろうとして、余計なものを抱えて、脳がキャパオーバー。
その情報処理の混雑の隙間で、たびたびチョンボを発生させているように感じる。
プロの料理人ならば、立派なトンポーローを作らねば!
…と、いざ身構えてキッチンへ。
レシピも読み込んだ、食材も吟味した、良い精肉店で豚肉を選んだ、料理道具を買い直した、キッチンも綺麗にした。
さあ下ごしらえ、豚肉のうぶ毛を丁寧に剃るぞ、調味料の分量を守らなきゃ、これを正しい時間で煮込み、タイマーをセット…
あれ、八角を入れ忘れた…みたいな。
そこいちばん大事だろ。
これは慣れるまで、しばらくあるんじゃないかと思っている。
やはり料理も麻雀も、場数が大事なのだ。
思考のどこをサボるか。作業に余裕をもたせるか。
これだけはきっと、場数が必要なのだと思う。
Mリーグでも、いつかチョンボをやるかもしれない。
わしは絶対やると思ってる。
予想、今シーズン2回はやる。
点数申告ミスで、あれだけ馬鹿にされ、叩かれるのだから。
チョンボの時は、大きい祭りになるであろう。
それでもあの舞台から逃げたらあかんのじゃ。
もしMリーグで15戦打てたのなら。
来年はきっと、1500戦打ち込んだと同等の