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山本遊子更年期日誌、十七

6月末、酷暑でなんかすごい凶悪事件が起きそうだなあって漠然と思っていた。カミユの「異邦人」みたいな感じを想像していたかもしれない。コロナも落ち着いた時期は過ぎて、じわじわ感染者数が増えてきて第7波に突入したというし、みんなイライラしてどこかで何かが暴発しそう…と。

そうしたら、安倍元首相が暗殺されてしまった。

しかも41歳のこれといってオーラのない、年の割には若く見え、中3の長男の友人にいそうな(これホント、なんなら服装が長男にそっくりでたまげた)普通の見た目の男性に。人生を統一教会にボロボロにされたという恨みから安倍元首相を狙ったのだという。

ニュース速報を見てすごく驚いて涙が出てしまった。なんやかんやで私はテレビ越しに安倍元首相のことをずっと見つめ続けていたからな。毎年、国会中継を見ながら確定申告の資料作りをするのが私の中の決まりだったので私の中で安倍元首相はここ数年は3月に見つめる人だった。正直好きではなかったし、首相を辞めた時すごくほっとした。これでやっと政治がらみのニュースやテレビ番組を見る時イライラしないで済むと思っていた。だけど、テレビの中とは言え普通の人の手作り銃で撃たれて殺されてしまい、銃撃シーンを何度も何度も繰り返し流すのを見ていたらなんともやりきれない絶望的な気持ちになっていった。ある方向から見れば問題の多い首相だっただろうし、自民党内では求心力のある支柱となる存在だったのだろう。夫人から見れば良き夫だっただろうし、犯人から見れば復讐の相手だった。
でも、最後は殺されてあっけなく人生の幕を閉じてしまった。本当に一瞬で。

犯人は普通の人のオーラを纏っていた。捕まった時、やれやれ、終わったよ、っていう雰囲気だった。

防衛費は7兆円に!などと息巻く、長きに渡り日本のトップで活躍していた人が、あっけなく普通の人に手作り銃で殺されてしまった。それを目の当たりにして、えも言われぬ空虚な気持ちになった。生ききった先には何もない、というような。




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