形態構築アプローチの概念と診方 その4
書籍「形態構築アプローチの理論と技術」を持っていない、知らない人は知っていただくために(^^)/
持っている人は書籍の内容がより理解できる様に、そして臨床で活用できる様に、弟子の土屋元明が研修で学んできた事を踏まえて解説。
今回は各基本動作における体幹の運動域確保のポイントについてご紹介いたします。
是非一読くださいm(_ _)m
動きのこだわりテーション 理学療法士 土屋元明
根源的運動である基本動作のとらえ方
ほとんどの動作は、体幹の位置変化が伴います。
このため、体幹の動きにある程度の多様性がないと動作遂行が困難となります。
老化の特徴の1つに、体幹の動きが画一的になることが挙げられます。
これは体幹の可動性が低下(形態も変化)すると同時に、前回説明した運動域の確保も困難になります。
つまり、動作がシステムとして機能することが難しくなるため、楽に動く事ができないのです。
もちろん老化により機能は低下し、様々な障害を呈しやすくなるため理学療法の限界もありますが、それでも可能な限り運動域の確保を行う必要があると考えています。
リハビリテーションでは基本動作が困難になったヒトに対して、そのヒトの努力を前提として練習させることが非常に多いのが現状です。
確かに限界はありますが、困難な動作を少しでも楽に行えるように、運動域を確保したうえで練習をさせる方が効率のよい動きになることは明らかです。
ここでは各基本動作においての運動域確保のポイントを簡単に述べます。
(具体的なアプローチ方法は研修ノート※4を参照してください(^^)/)
※4:研修ノート
形態構築アプローチのセミナーや山嵜勉先生の実際の臨床研修で私自身が学んだことをまとめたノートです。形態構築アプローチを臨床で使用したい、応用したい方にとって参考になるものを分かりやすく解説しています。
~寝返り動作~
寝返り動作は背臥位から側臥位へ姿勢を変化させる動作です。
このため体幹を対側へ移行させて、また戻すだけの運動域の確保が重要となります。
また、寝返り動作は歩行の1st swingの形を作ることにも繋がります。
左側への寝返り動作における体幹の移行する順は、
体幹左偏位から右へ移行し、
最終的に左へ移行すると、
動作が楽に行えます。
このため寝返り動作に対する体幹の運動域の確保は、前額面の動きが重要となるわけです(図11)。
~起き上がり動作~
起き上がり動作は体幹の屈曲から伸展への動きです。
このため、体幹を前方へ移行させる運動域の確保が重要となります。
また、起き上がり動作は立位形態の構築にも繋がります。
起き上がり動作における体幹の移行する順は、
体幹後方移行位から前方移行位であり、
これにより動作が楽に行えます。
このため起き上がり動作に対する体幹の運動域の確保は、矢状面の動きが重要となるわけです(図12)。
~端坐位からの立ち上がり動作~
端坐位は左右足底を設置させた状態を指しています。
この時、骨盤の形態が立位形態と逆転していることが理想的と言えます。
端坐位からの立ち上がり動作は支持基底面内に重心を留め、体幹を引き起こす動作です。
この時、体幹の対側移行と前方移行の運動域の確保が重要となります。
また、立ち上がり動作は歩行動作と相関します。
立ち上がり動作は、
頭部の回旋を誘導することで体幹の移行を形成することができますが、寝返りや起き上がり動作における体幹の運動域の確保が何よりも重要となります。
(具体的方法は研修ノートに記載しております)
このため、端坐位からの立ち上がり動作に対する体幹の運動域の確保は、前額面と矢状面の動きが重要となります。
~歩行動作~
自然立位形態の特徴を「形態構築アプローチの概念と診方 その1」で述べました。
そこでは1st swingが右の場合を記載しております。
(ちなみに1st swingは脛骨の捻転と相関すると山嵜先生は述べています)
ヒトの自然立位形態を観察し、1st swingが右か左かを歩行動作で確認することに何の意味があるのか。
それは運動域が確保できていない部位の予測と機能低下部位の予測、そして足部形態の決定です(図13)。
以下に述べることは非常に重要ですので、しっかり読んでくださいm(_ _)m
運動域の重要性については既に述べましたが、自然立位形態を観察することで運動域が確保できていない部位を予測し、それに伴う機能低下の部位をあらかじめ予測することが可能となります。
そして、予測したことを歩行動作で確認(リズムや流動性、脚の真上に胴体が乗っているか、力が逃げないかなどを確認)し実際に目の前で起こっている現象を考察します。
さらに、考察した内容で優先順位の高いところからアプローチを行っていきます。
多くは身体部位の運動域の確保ですが、アプローチを1つ行ったら歩行動作で確認し、現象をまた考察していくと推論が立てやすくなります。
最後に、歩行動作に改善がみられ、本人の主訴の軽減または改善が得られた時点で、治療効果が持続するようなアプローチを行います。
これが足部形態の決定です。
山嵜先生はよく言っていました。
「インソールは眼鏡と一緒なんです。眼が悪くて車の運転に支障を来すなら眼鏡をしますでしょ。体の形が悪くて動きに支障を来すならインソールが効果的なんです。もちろん、土台を安定させすぎたら動きに支障を来すわけですから、我々が対応する場合のインソールはそのヒトの形態や動き、そして体力を考慮して作成しなくてはいけません。」と。
また歩行動作において山嵜先生は、踵接地直前までに体幹が対側から同側へ移行できる機能が必要であるとも述べていました。
この機能があることで、足部内反で踵接地が可能となります。
また、対側の脚を振り出す時の支持脚は、わずかに足部外反から内反への動きがないと楽に振り出せないとも述べていました。
以上のことから、歩行時の1st swingがスムースでない場合や、骨盤回旋でなく挙上で振り出す場合は、足部の動きが不足していることを予測するわけです。
実際に足部内反からさらに内反の動きが形成され、骨盤回旋量が不足している症例も多く存在しております。
(足部形態が内反位であっても外反位であっても、動きとして外反から内反のわずかな動きが重要なのです)
これは骨盤を挙上させる動きにつながるため、結果として、体幹のスムースな移行も形成できないことになります。
このため、1st swingが右の場合、左足の運動域を確保(外反から内反の動きを確保)すること、もしくはその形態をつくる事が必要であり、同時に体幹が移行できる運動域の確保も必要となるわけです。
(詳細は研修ノートに記載しております)
各基本動作における体幹の運動域確保のポイントを簡単に述べました。
最後の歩行の部分は少し難しかったと思いますが、文章よりも体感したり、動画で見た方がスッと理解できます。これは山嵜先生の研修で実感したことです。百聞は一見にしかず。今後は動画なども取り入れて配信していく予定です。
さて、あとは実際に運動域をどう確保すればよいのかです(^^)/
書籍「形態構築アプローチの理論と技術」で紹介されているので、ここで押さえておきたいポイントを次回ご紹介いたします☆
形態構築アプローチという考えに少しでも興味をもっていただいたり、再び興味をもっていただければ幸いです。一緒に学んでみたいという方、少しでも興味のある方は是非ご連絡ください(^^)/
Facebook(土屋元明)からでもnoteからでもご連絡お待ちしております。
動きのこだわりテーション 代表 土屋元明
理学療法士/JMFS常任理事