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母音調和案件と「カザフ語ニキ」の煽り
昨日、毎週水曜日夜開講のトルコ語講座に向けて、予定している内容についてツイートしました。「オープン」なアカデミーということなら、受講者の利害に反しない程度の情報公開も悪くないかなと個人的に思ってはいます。
そもそも、言語じたいはオープンなものですからね。文法のことも語彙のことも、調べればすぐ情報が手に入る昨今ではあります。トルコ語についても、何を隠そう東京外国語大学自身が惜しみなくコンテンツをシェアしています。
上記リンクを一通り身につければ、あなたも立派なトルコ語の使い手…と言いたいところですが、そうもいかないのが外国語学習のきびしいところ、なわけですが。
ある種のトルコ語に関するアウトリーチ的な意味でも、ベタな内容のことを意図的にSNSでアウトプットするということはしています。noteもその最たる活動の一つ。まあそれはともかくとして…
今週のOAトルコ語は、母音調和の話をします。プリントをPDFで副教材的に配布していこうと思うているんですが、これは公開してもよいのならnoteかresearchmapあたりでアレしてもいいかもしれんね
— ウギャーさん(ぴののしもべ) (@uger_san) April 12, 2021
既習の方からしたら、なにを大仰な、とは思うのでしょうが、いざ講座の担当者として教える側からすると、いかに難しいと思わせないかを考えたいトピックではあります。
なんせこちらは顧客を確保しなければなりません。やっぱめんどくさそうだから諦めよう、となる人を減らすのが使命ではないかと思ってしまうというか。マーケットが小さいのでですね…
ということで、一連のツイートを備忘録としてここにも貼っておきたいと思います。同じ内容のことをもう一度書くのが面倒だというだけなのですが。
çocuk 「子ども」
— ウギャーさん(ぴののしもべ) (@uger_san) April 12, 2021
複数形 çocuklar
kedi 「ねこ」
複数形 kediler
さて、複数形接辞にいったいなにが起こっていますか?という話です
ここで、母音にはどうやら「派閥」みたいなものがありそうだな、という気配が漂ってきますやろ?
— ウギャーさん(ぴののしもべ) (@uger_san) April 12, 2021
a派: a, ı, u, o
e 派: e, i, ü, ö
で、語の中の母音っつうのはですね…派閥でなんとかチーム作っていこうぜ、という力が働きまんねん…
で、もう一つ派閥のでき方があって、
— ウギャーさん(ぴののしもべ) (@uger_san) April 12, 2021
al- 「取る」→ aldı「取った」
gel-「来る」→geldi「来た」
koy-「置く」→koydu「置いた」
gör-「見る」→gördü「見た」
過去を表す部分、母音のバリエーションが4種類ありまんねんね。では、なにで決められるかっつう話
で、これは実際言語学的によく取り上げられる現象なわけです。母音のチョイスに根拠あるよ、っつって。
— ウギャーさん(ぴののしもべ) (@uger_san) April 12, 2021
一方、ワイらは実践が目的だというわけです。それこそ、反射神経的に「正しい」母音がチョイスできますか?と。ここが多少慣れが必要なものだから、トルコ語始めるときの「最初の壁」と言われがち
ただその壁は、なんとなくやってたらいつのまにかモノにしてたりもするので、結局最後は演習量がモノをいうのか、となりがちでもあります。外大生はテストの点数が関わるからはよモノにするようにがんばってね。
— ウギャーさん(ぴののしもべ) (@uger_san) April 12, 2021
それ以外の人は、気楽にやりましょう。頭の出来は関係ないので問題はなし
以上のような内容を、90分のタームのうちの半分くらいをかけて説明しようというわけです。理屈としてはわずか5ツイートぶんの内容、といえばたしかにそうなのかもしれない…
とはいえ、トルコ語の母音が「派閥を形成する」のはいいとして、どうしてそういう派閥構成になるのか?というところまで知りたいという人も出てくるかもしれないわけで、それを聞かれることも事前に考えておかないといけないよね、という話もあります。
ところで「母音調和」というのは、トルコ語そのものに触れてはいなくても言語学の知識がある人にはピンとくる話でもあるかもしれません。
言語学の授業で、トルコ語などに観察される母音調和という現象を学ぶかもしれない。それが日本語でも観察されるかもしれない、と聞いて感動して道を踏み外せれば言語学者になれるかもしれない。
— Shigeto Kawahara@Keio (@PhoneticsKeio) May 15, 2020
そういう話もあるんだそうで…でも、言語学者はやめといたほうがいいという説もあるとかないとか…
いずれにせよ、ある意味でトルコ語の象徴的な現象ではあるので、なんとか早めに受講者の方々に親しんでもらえるようにはしたいなと思うところです。ある意味、毎回が勝負ですよね。
外国語の最初のステップというのは重圧がかかります。ほんとに。
余談
ちなみに、名詞の複数形がler, larの2種類あるという話についてなのですが、カザフ語のエキスパートから煽られましてね…
— ウギャーさん(ぴののしもべ) (@uger_san) April 12, 2021
カザフ語では6種類のパターンがあるのだそうです(cf. 中嶋2013, Muhamedowa 2016)。
すなわち、/a/か/e/かのバリエーションだけでなくて、最初の子音の部分もつねに/l/とは限らず、その複数形接辞の前の子音が何かによって、/l/か/d/か/t/かに変化するというんですね。
さらに、母音は母音でまた変化すると。なるほどなるほど。3(子音)×2(母音)で6パターンというわけか。
これは母音調和案件というよりは、「子音調和」も関係する現象といえそうで、やや戦線が拡大しているということはありそうですが。
理屈としては、それほど難しくないような気がします(いや、負け惜しみじゃなくて)。が、やはり実践としてものにできている(身についている)かどうかというのが勝負どころなのでしょうねえ…
ということで、カザフ語のよい教科書、はよできあがるといいですね。
学習者にカザフ語とか楽勝じゃん!と思わせるようなものだといい…(煽り返す)
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![吉村 大樹](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/173281934/profile_953f1e6dd0436f4ca73e8e6926eb1fb7.jpg?width=600&crop=1:1,smart)