
今さらですが、言語の名称って難しい
ありがたいことに、4月も多言語『星の王子さま』の蔵書が増えました。世界各地を訪れたり滞在している方からのご厚意で、ご恵贈賜る機会が重なったのです。
ご恵贈くださったみなさまには、できる限り返礼の品を送ろうとはしているのですが、まだの方に対してはそのうちいつか出世払いで(もはや出世どうこうという年齢ではないのですが)、と申し上げているところです。
さて、直近でいただいたのが3冊。ボスニア語、セルビア語が2冊。まあこの蒐集を始めなければ、けっして接することがなかったであろうバルカンの言語ですね。ただ、後述するようにボスニア語なのか、セルビア語と呼ぶべきなのか…というのが今日の本題です。
こちらが今回3冊いただいたうちの1冊なのですが、リンク先のリストではこの言語が「ボスニア語(Bosnian)」となっています。一方、出版地はバニャ・ルカとなっています。
正直なところ、いわゆる旧ユーゴ地域の地理的なことは今日地図を見るまで全く感覚がなかったのですが、このバニャ・ルカはスルプスカ共和国の事実上の首都、ということなのだそうですね。Wikipedia情報鵜呑みで恐縮なのですが。
としますと、「スルプスカ」が文字通り、「セルビアの」を表す語であるとするのであれば、この地で出版された同書の書かれている言語をボスニア語と称してよいのかどうかというのは難しいところではないかという話があり、なるほどと思わざるを得ないなと思います。
なお、こちらはサラエヴォ(セルビア共和国)で出版された「ボスニア語」版だそうで。また、「セルビア語」はこちら…だそうですが、こちらはセルビア共和国の首都ベオグラードが出版地なので、つじつまという意味で問題なし、ということでしょうか。
一方、ではバニャ・ルカはどの国の都市なのか?と言われたら、「ボスニア・ヘルツェゴヴィナ」の都市というしかないのでしょうから、その意味でBosnianの本だというのだという主張もあるのでしょう。賛同するかどうかは別として。
なお、上記リンク先の商品は「クロアチア語」版の『星の王子さま』。セルビア語とクロアチア語もまた、名称と互いの類似点・相違点の話が複雑になりそうな両言語のようです。星の王子さまを蒐集するようになってから、一気にこの問題が自分にも身近なものになってしまった気がします。やや大げさな言い方ですが。
言語の名称、かように政治的な要因が多分に作用するんだなと改めて思うのでありました。本当に今更ですけどね。日本にだってどこにだって、そういう話は存在するわけですし。
もちろん私自身はこの地域についてはまったく知識がありませんし、言語の名称の問題はもちろんのこと、各地域の言語の分布も、各「言語」間の違いについてもまったく知識がないのでうかつなことは言うべきではないのを重々理解していることを申し上げておきますが、そのうえで素人なりにこういう話を聞くにつけ、難しい問題というものはあるのだなと改めて思うのでありました。
かつて勤めていた場所には、まさにこの旧ユーゴ地域の専門家の同僚がいたので、彼から少しこういう話もまじめに聞いておけばよかったなと今更悔いるものの、時すでに遅しというべきなのかどうなのか。
あの頃はテュルク諸語どころか、(ほぼ)トルコ語にしか興味がなかった時期でありました。あの頃に比べれば、今なら言語学以外の専門の方の話を興味深く拝聴できる自信はあるのですが、今それを述べたところで詮なきことなのでしょうね。
言うとりますけれども。ともかく、王子さまリストがまた一歩、充実に近づきました。
多言語趣味は、精神衛生にとてもよきです。みなさまもどうです?王子さま蒐集。生活が少しだけですが、楽しくなります。たぶん。
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