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一過性のブームか、安定した人気を獲得できるか:「タタール語」人気への祝福と雑感
例の本、早くも重版出来だそうで。年明け早々すごいことですこれは。私も宣伝記事を書いた甲斐がありましたか…?ひょっとして。(まあそれはないな)
『ニューエクスプレスプラス タタール語』おかげさまで重版が決定いたしました。ありがとうございます。
— 白水社・語学書編集部 (@hakusuisha_G) January 6, 2023
オンラインのイベントも企画中ですので、気になられている方はぜひ書店でいちどお手にとってみてください。(鼠) https://t.co/mtvcdyjlRX
タタール語が脚光を浴びる時代が、ひょっとしたら来るのかもしれないですね。この機会に、ユーラシア、とりわけテュルク諸語が注目をさらに集めるようになるといいなと思います。願望を込めてそう書いておきましょう。
しかし、どの言語がいつ注目を集めるかというのは予想しにくいということがここ数年でもよくわかるような気がしません?一例ですが一昨年までの段階で、ウクライナ語にかなりの需要が出てくるよと言って、信じる人がどれくらいいたでしょうね…
ところでふと、一つ思い出した話があります。
たしか2002年の日韓共催サッカーW杯の時だったと思うのですが、日本代表は決勝トーナメントでトルコ代表と対戦するということがありました。それで日本の相手となったトルコ代表、あるいは彼らの本国たる(といっても、選手の多くがドイツ在住のトルコ・ドイツ双方にルーツがあるという話だったようにも記憶しています)トルコってどんなところなのか…?というので、一時的にテレビでトルコのことがずいぶんピックアップされているなと感じた時期がありました。選手の中にも日本で突然アイドルのような人気が出た選手がいたりなどしましてねえ…
あれがもう20年以上も前の話だってんですから時間の経つことのはやいものですが、ともかくあのサッカーW杯が開催されていた時期に、母校のトルコ語関係のとある先生と酒席を共にする機会がありました。それで話題がサッカーのことになって、当時のトルコのメディアでの露出がずいぶん増えていますよね、と院生だった私はその先生に話を向けたのです。「どうでしょう?これでトルコ語にも需要が出てきたりとか…」
するとその先生、笑って首と手を振って(首だけでなく、手も振りましたよね)いやいやだめだめ、仮に人気が出るとしても一過性のもの(たしか先生は「ブーム」とおっしゃったと記憶しています)で終わるよ、と。
えーそういうものですかねえ?と若かった私は不満を口にしたようにも思いますが、果たしてその結果、先生の予測が正しかったっすね…みたいなことがありました。
ウクライナ語も、今幸か不幸か(おそらく不幸なほうで、と考えるしかないですが)脚光は浴びている。が、戦争が終わった後はどうなるでしょうか。タタール語は、そしてトルコ語はどうでしょうね。それはもう、これからはもっとそういった地域や言語に多くの関心が向けられるならそれはトルコ語にわずかながら関わる私自身としてもとてもうれしいことではありますが。
やはり、日本で「身近にない」言語を扱う側にとって厳しい状況というのは今も昔も変わらないのかもしれません。「そんな言語やって何になるの」に常に抗っていく…
というのが、「その他」扱いされる言語に従事する者の宿命なのかな、というと言いすぎになるのでしょうかどうでしょうか。
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