第109回薬剤師国家試験 所感
今年も現役時の知識だけで解いてみます。
筆者は現在薬学からは離れていますがメンテナンスのためにやっています。いろいろとご了承ください。
やや解きづらそうなものや差がつきそうなものに絞ってコメントします。
必須問題
解けなくても変わらない埋没問題は少ないものの、トータルとしては簡単だった昨年よりは数点取りづらい気がします。
<物化生>
2.実習ちゃんとやってたか問題。
4. あんまり2θとは意識しないはずなので難しいのでは。
7.一重項酸素が活性酸素ってイメージしにくくないですか?
9.どの種類の反応かを理解してないと解けない問題。
10.薬理と生薬の融合問題。
11.生物と薬理(副作用)の融合問題。
13.これも衛生との融合問題。
14.問題がややこしい…コレステロールの割合と輸送方向で問うている方向が逆になっているところがポイント。
<衛生>
20.CBT的というかあんまりきっちりやらないのでは。
25.確かに統計調査はあるけど、苦情件数の順位を答えさせるのは…難問。
<薬理>
特になし。アプレミラストがやや新しい?
<薬剤>
42.P糖タンパク質の場所。ちゃんと図で覚えましょうというメッセージの問題。
49.必須としてはやや難?
51.OD錠の吸収は腸。引っ掛からないように。
52.これも実習問題。
<病態>
59.実質薬理。トルバプタンは尿排泄の促進で起こるのは血漿浸透圧の上昇→高Na。ただしループ利尿薬はNaの再吸収を抑制しているので逆に低Na。
61.多形性心室頻拍という語句がややわかりづらい。TdPなら多くの人が正解できるはず。つねに語句理解は正確に。
62.これも特発性膜性腎症という語句がわかりづらい。ネフローゼなら正解できるはず。ネフローゼは症候群であり、どういった疾患でなるのか?という観点が必要。
64.問題はやや難しめなものの正答率は高いはず。
68.組換え体医薬品の具体例を持っているかどうか。
<法規>
75.薬局方の目的を知っているかどうか。今回の法規は考えればできる問題が多め。
77.雑学的問題。薬の歴史よりはこういう問題のほうがいいのかも。
<実務>
81.クロタミトンを知らないと厳しい。
83.これもトリアムシノロンを知らないと厳しい。
85.ハチミツを禁忌肢に使いたそうだけど選択率的にないと思います。
90.入院してても必要なものはどれか?という観点が大事。
理論問題
去年よりは格段に難しく感じました。知識が抜けていってるのを加味しても105回とか107回を思い出します…。
できなくてもまだ実践で挽回の機会は十分あるように思います。
あとなんというか年々予備校対策が進んでいる感じがあるように思います…具体的に言うと語句や概念の言いかえが多いため、知識を総動員すれば解けるのに一見できなさそうに見える問題が増えてきています。
予備校に頼りきりではなく、自分でひとつひとつ語句について理解していくこと、分からない概念を無くしていくことを大事にしてほしいです。
その上で医薬品に対し化学的思考を持てるようになるといいなと思います。
<物理>体感:並~やや難
ここ数回続く地力が求められる問題。他の科目が難しくなってきたので取れる人は取っておきたいかも。
91,92.ここ3回くらいは概念の理解問題が2問入ってるような。知らない概念を日ごろから調べてるかどうかで差がつくと思います。
93.分析科学の問題っぽくて実際は濃度の計算。
94.溶解度積はKsp=[M²⁺][OH⁻]²の式と濃度関係[OH⁻]=2[M²⁺]が分かっていれば解けるので、濃度計算が苦手でもできれば取りたいところ。
95.光の式を引き算するだけ。選択肢に気圧されないように。
96.正答2つはそれほど難しくないので取りたいところ。
97.確認試験は捨てる人が多いですが、意外とパターンは少ないです。今回は同様の問題では簡単な方。
98.難問。問うている事項が多すぎるので埋没問題だと思います。
99.2と3がひっかけで細かいものの明らかな正答2つを選びたいところ。
100.クロマトもそんなに変な問題は出ないので、勉強すれば割と点になる分野です。
<化学>体感:並
基本的な反応を理解しているかしていないかで差がつく内容はここ数回変わっていません。
101.違うものを選べばいいのでサービス問題。
104.反応そのものはやや難しいものの、最低限最初の求核反応で3と5の2択にしたいところ。
108.横断的な問題。マクロライドにポリケチドのイメージを持っているかどうか。
109.生薬の難易度はこれくらいなら…というギリギリの感じ。
110.互変異性を意識すると2と5から切れない。逆アルドール反応を理解できていればできるものの…。
<生物>体感:並~やや難
相変わらず新傾向問題が多め。選択肢がやさしめなのでそれで何とかする方向性。
116.基本的な配列の読み方やタンパク質の構造の見方を理解していれば解けるようにはなっています。
117.選択肢が厳しい代わりに1つ選ぶ問題。でもそれっぽく書いてあって難しい気がします。
119.グラム染色の理屈までは理解していても、チール・ネールゼン染色までは厳しいのでは…埋没問題だと思います。
<衛生>体感:やや難~難
123.選択肢がふんわりしているので案外難しいのでは。
127.ひとつひとつは基本でもとても幅広い知識を問う問題。何より「動物の皮膚」という表現がまたややこしい。
130.アスパルテームのみが指定されていることを知らないと答えられない問題。じゃあなんで構造式から出すのっていう…。化学的な視点からは2~4から絞れません。
131.かなり細かい。消去法よりは正答2つを当てに行く方がまだ楽。
132.代謝はパターンが決まっているので慣れたら取れるものの、最低限の化学的な思考は前提になります。
133.選択肢3のひっかけが嫌らしい。5と迷うと絞れないはず。
134.毒性試験は毎回出るものの、今回のは細かいと思います。
136.図1、化学物質Aを塗布し続けたと思った人も多いのでは…。
137.簡単ではないものの、このレベルは落とせなくなってきているような。
138.知識として持っていた人は少ないはず。地下水はそのまま使わないだろう、という考えでいいのでは。
<法規>体感:並
122.どちらかというと消去法で解く問題だと思います。
143.実務実習で学ぶところかなという感じ。
144.法規は新しい制度が頻出するので押さえたいところ。
<薬理>体感:やや難~難
もう作用点と機序の両方を正確に覚えていることが前提になってきているように感じます。あとは新薬が多かったように思いました。
151.確実に絞るには内活性やEC50の正確な理解が必要になります。
152.当初予備校間で回答が割れてました。確実な順は4>2>1だと思いますが、1がなぜ違うのか自分の知識ではわかりませんでした…。持続的に脱分極するのは神経終板の中でも筋肉細胞側であって神経終末側ではない、という話なのでしょうか…。
153.プレガバリンの作用点のサブユニットがα₁かα₂かまで覚えてないと解けない問題。エレヌマブも新しくて難しいです。
155.154と連動して考えると逆に引っ掛かる問題。これも細かいので難しいと思います。
158.カルシニューリン阻害がNFATの脱リン酸化阻害というところまで知っていないと4と迷うと思います…。これも難しいと思います。
159.イバブラジンは想定していませんでした…。知っていれば答えられるものの知らないと厳しい問題。
160.RAASのしくみまできっちり理解していないといけないので、生物的な要素が強い問題。
161.造血系は難しいことが多いです。今回もしっかり生理学を理解していないと解けない問題。
168.エムトリシタビンの説明が細かい。化学的視点から構造を理解していると解けるのですが、そうでないと消去法になります。
169.アファチニブまで押さえきれている人はあまり多くはないのでは。シタラビンも構造の理解が必要なので難しめだと思います。
<薬剤>体感:やや難~難
少なくなった定型の問題もひとひねりしてあったり、なかなか点が取りづらいように感じました。
171.速度的BAの低下ではなく吸収の遅延と書いてあったら正答率はそれなりにあるはずですが、こういう言いかえ問題は差がつく気がします。
172.何も考えずにD/AUC=CLとやると終わります。
175.薬剤師的視点という意味で大事な問題なものの難しいと思います…。
179.丸覚えだと太刀打ちできない問題。内部摩擦係数が大きいほど流動性が悪いことに1で気づけるかどうか。
180.Noyes-Whitneyの式って結局ラプラス変換しないと解けないと思ってたんですが、微分方程式を普通に立てるだけで普通に解けるということに今更気づきました…。導出できるようになっておくと楽だと思います。
182.ゼータ電位を知らないと即終了。一応手元のノートには習った跡がありましたが、これはあまりにも専門的なのでは…。
183.製造機械の問題は少し前から出されるようになりましたが、もう答えられないとだめなのかもしれません。
<病態>体感:並
166.高血圧→副腎腫瘍→原発性アルドステロン症と考える問題ですが、結局生理学的知識が必要になります。
189.ニンテダニブについてまで知っていないと正答できない問題。
190.タイミングに気を取られすぎてアスパルトとデグルデクの効果の違いまで頭が回ったかどうか…。正答率はあまり高くない気がします。
193.多発性骨髄腫でもアミロイドーシスまで思い出せたかどうか。3と5までは切れるのですが…。
実践問題
実践は選択肢がやさしい傾向にあることが多いですが、実践1はそうでもない感じ。1つ分かっても…という問題が多かったのでは。
実践2と3は割と選択肢自体は平易でした。特に病態と法規で稼ぎたいところ。ただその分実践単問が難しかったことからそんなに得点率は伸びない気がします。
実践全体で見ても去年よりは難しいので、得点分布などはどちらかというと105回や107回に近い気がします。
<物理>体感:やや難
197.もう○○法は原理をすべて調べておく時代のように思います。
199.薬理を学んだときは必ず適応も調べておくとこういう問題が楽になります。一度でも調べておけば記憶の片隅にドロキシドパがあるはず。
202.インスリンは垂直に。皮下注は45度のものもあるので注意。あとは消去法。
204.ただでさえ難しいのに絶食は数時間というひっかけがあります。
205.SPECTって何の略?というところをちゃんと調べていれば解ける問題。
<化学>体感:やや難~難
207.セレギリンの炭素結合場所を答えるのはかなり難しいと思います。イミンじゃないということに気づけるかどうか。
209.腸間膜動脈硬化症はみんな対策済なのでは。つまりその先一歩、サンシシがどれかを知っているかどうかという問題。
210.グルクロン酸の構造をちゃんと知っているか、抱合反応を理解しているかの問題。反応に強ければ忘れててもなんとかなります。
211.バルプロ酸とラモトリギンの相互作用はまあまあ有名なはず。問題はその先どうするかという視点まで求められているということ。
213.難問。自分の知識ではさっぱりでした。
215.ヒドロキシ基が4つあっても炭素が30もあれば溶けないだろう、という目安も化学的な視点の一つ。
<生物>体感:並~やや難
216.HBs抗原とHBs抗体の違いをしっかり理解しているかどうか。難しめ。
217.エンテカビルの使い方。割と細かいので1つ分かっても…という人も多かったのでは。
219.錐体外路症状とはどこの症状?という問題。語句の言いかえに近いので知っておきたいところ。
220.思考だけでは解ききれない難問。マーカーは血中で安定するものを使いたいこと、NT-proBNPはproと名の付く通り前駆体由来なのでBNPとは作用が違うことに思い至ってもNT-proBNPがAかBか判断できません。
221.高Kはいいとして脱水をBNP上昇から導けたかどうか。知らないと220から考えて解くことになります。
224.この特徴よりどちらかというとセフタジジム投与から推測できる問題。
225.アモキシシリンへのアレルギー歴につられ、ニューキノロンが年齢的に使えないことが落とし穴。
<衛生>体感:やや易~易
230.胆道がんのマーカーはマイナーだと思いますが、困ったら色んながんのマーカーになるCA19-9を選ぶという考え方ができてる人は得点できたはず。
231.化学的視点を求められる問題。
235.総エネルギー量からタンパク質の分を引き忘れないように。
237.マークについても調べておけば…という問題。新傾向なので正答率は高くないはず。
240.放射性ヨウ素内服療法について。詳しく学ぶことは少ないはずなのに2つ選べなのでやや難しいです。
242.問231と同じく化学的視点を求められる問題。衛生の検査の原理や様々な原因物質は構造を調べておくことを強くお勧めします。
244-245.一酸化炭素がどうやって窒息させるかを理解しているかどうかで2点変わってくる問題。どっちか1点ならいいんですが、ややアンバランスな気もします。
<薬理>体感:並~やや難
247.アムロジピンは相対的に休薬しなくてもいいはずなので、グリメピリドとの2択で消せたかどうかになります。
248.バルプロ酸とメロペネムのどちらが変更しやすいかという問題なんですが、即バルプロ酸と答えた人も多いのでは…。
249.バルプロ酸はGABAトランスアミナーゼ阻害については必答ですが、T型Ca²⁺チャネル阻害は知らない人が多いのでは。
251.SNRIからα₁刺激を導けたかどうか。結構盲点な気がします。
252.多発性骨髄腫を2問出すのは…ダラツムマブについてはコロナ禍でリツキシマブの免疫抑制などが問題となった点を連想できれば。
256.好酸球と思わせての体重。埋没問題だと思います。
259.珍しい問われ方。でもウステキヌマブが分かるかどうかに尽きると思います。
262.ブリンゾラミドがスルホンアミド系であることを思い出せたかどうか。これも化学的な視点が必要になります。
<薬剤>体感:やや易~並
267.溶解じゃなくて懸濁なんですね…知りませんでした。
275.1は即答、2,4,5は消去法で消えて3が残るんですが「妊娠がわかったらすぐに連絡してもらう」でもいいんでしょうか…?普通は何らかのやり取りをすべきなような…何か見落としていたらすみません。
281.典型問題ながら難しめ。DDSはなかなか対策しづらいところがあると思います。
284.食事の影響については難しいので消去法で何とかする問題。難しめだと思います。
285.バルガンシクロビルのバルとはVal、つまりバリンから来ています。リン酸のホス~みたいに、一般名の法則や由来はとても大事なのでいつも意識するようにしてください。
<病態>体感:やや易
典型的な問題が多かったのであまり落としたくないところ。
287.テリパラチドの使用期間は特徴的なので覚えておきたいところ。ただ正答率はそれほど高くないのではと思います。
289.MTX治療からの追加治療に対しての副作用というところに気づかなかった人が大半なのでは。想定解は2,3だと思います。
293.ここ数回よく見る既往歴や患者データから使用薬剤を絞る問題。これ系は差がつきやすいです。
296.メトホルミンでヨード造影剤を思い出し乳酸アシドーシスから嘔吐を連想できるかどうか。よく使われる薬は深く掘り下げておきたいところ。
297.夜間の血糖値にまで意識が行けば正答できる問題。
298.5を選ぶのはやや勇気がいるように思います。
299.エピペンはこれを正答できるくらい知っておきたいところ。
300.菌とPCRがなかなか結び付かないものの、消去法で何とかなる問題。
305.管理が厳重な薬は頻出するので詳しく調べておきたいところ。2は選びがちなものの薬剤師の範囲ではないところがポイント。
<法規>体感:やや易
ここも典型問題が多いのでなるべく多くとりたいところ。
309.4と5の二択になった人が多いはず。そこまで持ち込めていることがまず大事。
314.3はバイアスにつながります。
315.臨床研究法は前にも出たため、その時にしっかり調べておけたかどうかで決まる問題。
320.アセトアミノフェンの解熱に対する鎮痛効果の弱さから考えてしまった人もいるのでは。
321.今回の中ではやや難しいかも。
322.地域ケア会議は初出。これに限らず初出問題はだいたい無難な選択肢が出るものの、次回以降は突っ込まれて聞かれる場合があるので、周辺知識を入れる調べ学習をお勧めします。
325.雰囲気で選べた人も多いかもしれないですが、ヒゲナミンは押さえておきたいポイントでした。
<実務単問>体感:やや難~難
最近は情報量が多くしかも一筋縄ではいかないものばかり。
2日間の終わりにこれを20問やるのはやっぱりとても疲れます…。ミス防止のために先にやってしまうのもおすすめ。
あとは薬の副作用は薬理作用くらい大事なので、薬を学ぶごとにその薬に代表的なものは覚える習慣をつけた方がいいと思います。
329.勘案すべきことが多い問題。ITCZ併用によってシクロスポリンが減量していたものの、ITCZ飲まずシクロスポリンの濃度が低くなっている状態を疑って1,5ということなのかなと思います。
334.どっちかを中止しないといけないような問われ方なのが難点。
335.正解できなくても1か4かまでは絞りたいところ。
339.ジルコニウムシクロケイ酸は新しいので難しいかも。
341.それっぽい選択肢が多くて2つ当てるのは難しめ。
343.NSAIDsといえば腎臓というイメージは持ちたいものの、1を5より優先して選ぶのはなかなか難しいと思います。