リスクマネジメント初心者と眺めるLoL炎上問題
1.はじめに
現代人にとって、炎上は日常の光景といえるだろう。
League of Legendsにおいても、各所で度々炎上は発生してきた。
その中でも特に大きかった炎上は、公式キャスターの炎上と、ウォッチパーティにおける炎上だろう。
特に後者は、個人の発言が原因とは思えないほど大きな炎上となった。
この背景には、複数の火薬(不満)が存在していたことが考えられる。
また、その問題に関する議論や不満はSNSなど短文でのコミュニケーションでは説明しきれず、複数の問題点が入り乱れたままになり、コミュニケーションエラーによる火薬が増産された可能性も考えられる。
ある程度時間が経過し、筆者を含む各方面は、当初の激情から解放されてきたことだろう。
ここで改めてウォッチパーティ炎上問題とそれに関わる要素を分解し、リスクマネジメントの初歩的な観点を中心に、どこで火薬が発生していたのか考察する。
2.炎上を考察するにあたって
2.1.炎上対策について
本題を始める前に、基本的な炎上対策について取り上げたい。
我々の生活において、最も身近で大規模な炎上対策とは何か。それは、三権分立だと考える。
権力を分散して相互監視をし、取り締まる基準を明文化して曖昧さを排除し、これに反するものは明文化された基準に沿って罰する。現代では当たり前のこの仕組みが、炎上対策の基本でもある。
曖昧な法律、曖昧な公権力、曖昧な裁判がいかなる結果をもたらし、いかに多くの不満を貯めこむのか理解できない方は、ぜひ独裁的な国や一部の社会主義国家、あるいは過去の歴史を参考にしてもらいたい。
この三権分立の仕組みをそれぞれの組織に合う大きさに調整して用意しておくことが炎上対策の基礎であり、企業に寄せた制度設計がコーポレートガバナンスなどと呼ばれるものになる。
当初は、コンプライアンスが重要視されてきた。
それでもまだ足りず、多くの問題を乗り越え、リスクマネジメントの概念が整備されてきた。
これらは、現代の組織には欠かせない、基本的な仕組みとなった。
炎上問題を考察するにあたっては、これらを念頭に置く必要があるだろう。
2.2.謝罪について
炎上が発生した後の対策としては、当然だが謝罪がある。
謝罪に関しては多くの研究があり、効果的な謝罪方法について提案されている。
謝罪の効果を軽視する人も少なくないようだが、適切な謝罪があれば訴訟をしなかったという人が4割に達するというアンケート結果もあるようだ。
謝罪の効果は、謝罪が適切であるほど高いといえるだろう。
2.3.評価基準
上記事項やリスクマネジメントの基礎的な部分を簡素化しつつ、できる限り基準を明確にし、評価分析をしていく。
炎上を評価するにあたっては、以下を判断基準とする。
・問題の説明があるか
・再発防止策が提示されたか
・問題を判断する基準が明確か
・処罰の基準が明確か
・問題を起こした人の処罰が基準通りに行われたか
・効果的な謝罪が行われたか
・組織内で問題が共有されたか
効果的な謝罪かどうかを判断するにあたっては、以下のような項目がある。
・炎上から謝罪を行うまでの早さ
・過ちを認める謝罪か責任回避の謝罪か
・謝罪内容が詳細で明確か
・十分な広さがあり圧迫感のない場所か
・不要なものがあり感情を刺激することがないか
・感情を刺激する服装でないか
・感情を刺激する表情でないか
・相手の意見を受ける場があるか
・謝罪にコストがかかっているか
曖昧な点が多いため、以下のように整理する。
謝罪は、2日以内であれば十分早いと判断する。
謝罪場所の判断は、ネット上で活動する人が多いため割愛する。
不要なものは適宜提案するが、明確な判断はしないものとする。
服装は適宜提案するが、明確な判断はしないものとする。
謝罪コストは対面対個人ではなく非対面対多数謝罪がメインとなるため割愛する。
よって、以下を判断基準とする。
・炎上から謝罪を行うまでの早さ
・過ちを認める謝罪か責任回避の謝罪か
・謝罪内容が詳細で明確か
・不要なものがあり感情を刺激することがないか提案する
・感情を刺激する服装でないか提案する
・感情を刺激する表情でないか
・相手の意見を受ける場があるか
3.時系列
大きな炎上が発生するには、それに応じた火薬が必要だ。
つまり、炎上発生時点で、どこかに火薬が存在していたことになる。
今回主に取り上げることになる問題は、キャスターK氏の問題行為とその対応、そしてウォッチパーティ問題だ。
これらの関係者として、League of Legends(以降、LoL)の日本での運営会社(以降、運営)、公式キャスター(以降、キャスターK氏、キャスターR氏)、ウォッチパーティ権のある配信者(以降、A氏、S氏)、ウォッチパーティ権をもらえなかった配信者(以降、U氏)、LoLで有力な配信者(以降、K氏、R氏)、LoLプレイヤー(以降、LoL民)、配信視聴者(以降、~氏視聴者)が挙げられる。
時系列を整理しつつ、どこに火薬があったのか、考察していく。
まず、筆者を含む一般人サイドが捉えられたであろう時系列は、一部前後しているかもしれないが、概ね以下のようになる。
1.キャスターK氏による問題行為とその対応
2.ウォッチパーティ権のある有力配信者によるウォッチパーティがほぼ行われなかった
3.以降のウォッチパーティも、似た状況が続いた
4.U氏の配信があった
5.U氏配信視聴者の一部がA氏等に攻撃的言動
6.配信がSNSや切り抜き動画等によって拡散した
7.A氏がウォッチパーティ辞退
8.炎上
9.K氏、R氏等、LoLの有力配信者による炎上に対する反応
10.U氏補足説明配信
11.公式キャスターによる、炎上に対する反応
12.謝罪配信
上記時系列を以下の5点に整理し、問題を分解しつつ考察していく。
1.キャスターK氏の問題
2.有力配信者によるウォッチパーティ問題
3.U氏のウォッチパーティ炎上問題
4.関係者の炎上問題に対する反応
5.Worlds2024直前の謝罪配信
4.問題分析
4.1.キャスターK氏の問題
【問題点】
公式キャスターによる不正行為とその対応
【関係者】
・公式キャスターK氏
・運営
【流れ】
・キャスターK氏が、LoLで不適切行為(duoブースト)を行った
・キャスターK氏「やっぱねえ、皆ダイアうらやましいんすよ」発言
・キャスターK氏が謝罪し、LoLに関わるすべての活動を自粛する宣言
・キャスターK氏は身内専用discordに籠って反省してない言動をしていることをリークされた
・キャスターK氏は、自粛期間中に裏方としてLJLに関与した
・公式キャスターK氏が自身で開始した自粛を運営が解除し、翌日実況再開した
【公式キャスターK氏】
●評価基準分析
問題の説明は、あまり詳細ではないが過度に不足でもなかった。
再発防止策は、提示されていなかった。
問題判断は、所属組織次第なので割愛する。
処罰基準は、所属組織次第なので割愛する。
処罰が基準通りに行われたかは、所属組織次第なので割愛する。
謝罪内容に虚偽があったため、謝罪は逆効果だった。
組織内で共有されたかは、所属組織次第なので割愛する。
問題発覚から謝罪までは早かった。
過ちを認める謝罪だった。
謝罪内容は、何に対する謝罪なのか問題の具体名の記載はないものの、広い範囲でのまとめ方をしており、不足や不明瞭すぎるというほどではない。ただし、自粛宣言は虚偽だった。
不要なものの提案事項はない。
服装の提案事項はない。
表情はおおむね問題ない。
相手の意見を受ける場は、配信で設けてはいた。しかし、モデレーターが批判コメントをBANし続けた。批判的意見を聞き、それに対し説明や議論をする気はなかったと判断できる。
●問題点考察
ゲームでの不適切行為は、運営側の人間が行ったことが問題であり、職業倫理が欠如している行為だった。ただし、違法行為ではなく、重要性は高すぎるわけではない。
不適切発言は、このご時世では誰もが引っかかる可能性があることであり、内容を鑑みても重要性は低いと考える。
最大の問題点は、謝罪内容に虚偽があったことだ。
この点により、謝罪の意味がなくなるどころかマイナスになり、炎上した。これにより、不適切行為及び不適切発言の火薬にも引火することになった。
キャスターK氏は、職業倫理やコンプライアンス、リスクマネジメントの基礎的講習を受ける必要があった。
【運営】
●評価基準分析
問題の経緯を説明しなかった。
再発防止策を提示しなかった。
問題判断基準が不明瞭だった。
処罰基準が不明瞭だった。
自粛解除の基準が説明されていなかった。
運営としての謝罪はなかった。ただし、問題を起こしたのはキャスターK氏であるため、運営としての謝罪の必要性は判断が分かれる可能性がある。
組織内で十分な問題共有が行われたとは考えられない。
謝罪はなかったため、謝罪の評価基準判断は割愛する。
●問題点考察
評価基準を基本的に満たしていない。
このような炎上はとても古典的でよくあるものであり、リスクマネジメントにおいて対応はある程度テンプレート化されている。
その基本的な対応が、一切なされていなかったということだ。
また、運営は公式キャスターK氏が自粛中に裏方で活動できる環境を提供した。
運営は公式キャスターK氏が自身で開始した自粛を解除し、翌日実況再開した。
今回の問題を、そもそも問題と思っていなかった可能性がある。また、他の公式キャスターが、このような状況でもキャスターK氏を擁護した。組織として問題共有が行われたとは、とても考えられない
この運営に適切なリスクマネジメント担当がいれば、このような炎上は発生しなかっただろう。キャスターK氏の炎上被害も少なくて済んだはずだ。
仮にマスメディアのキャスターが似たような問題を起こして、そのマスメディアの運営会社がこのような対応をした場合、どのような反応をされるだろうか。
運営は、ガバナンスを根本から見直す必要があるだろう。
【まとめ】
公式キャスターK氏は、公式キャスターとしての職業倫理が欠如していた疑いが強い。
運営の上層部には、コンプライアンス意識が不足しているように思われる。リスクマネジメントにおいては壊滅的で、ガバナンスが効いていない疑いがある。
典型的な日本的な問題解決手法である、基準の曖昧さ、問題の棚上げ、うやむや化を行っており、問題解決になっていないことが多くの不満と不信感につながった。
不信感は、政治家やメディアを見ればわかるように、一度抱かせれば、取り除くことは難しい。
この炎上と対応のマネジメントミスが、後々まで尾を引く、運営に対する不信感を抱く一部LoL民との対立構図になったと考える。
4.2.有力配信者によるウォッチパーティ問題
【問題点】
ウォッチパーティ権のある有力配信者によるウォッチパーティがほぼ行われなかった
【関係者】
・運営
・配信者S氏
・配信者A氏
【運営】
●評価基準分析
問題となるU氏の配信まで炎上しないので、本項目を割愛する。
●問題点考察
運営は、ウォッチパーティがほぼ行われない状況に対し、何も対応しなかった。
ウォッチパーティを告知しながらそれが行われない状況というのは、メニューに書かれた商品を提供しないレストランのようなもので、おとり広告と虚偽広告に近いものだ。
限られた予算で、LJL視聴者を増やそうとしたり、LoLへの新規参入を増やそうとする戦略だったのかもしれない。
しかし、結果として、有名配信者を「おとり」としたようにも見える状況を作ってしまった。これを問題と思わない組織は、ガバナンスに重大な問題があるように思える。
忙しい有力配信者を呼びつつ「おとり」の状況を回避したいのであれば、最低限この日はウォッチパーティをやってもらうなどのスケジュール調整をしてから、それを含めた告知をするべきだった。
また、この状況を複数回のウォッチパーティで続けたことで、さらに不満を貯めこむことになった。
運営のリスク意識が低く、それを指摘する存在もいない可能性がある。
2024/10/21追記
上の記事にある「アクセス数集計サイトは当てになるか問題」を見てもらいたい。これによると、LJL運営パートナーが、SNSを通じて偽りの数字を拡散したということだ。
日本では、消費者や投資家が、正確な情報に基づき、安全に消費や投資活動を行えるようにするため、多くの法規制が存在する。これは、自由市場資本主義経済の根幹を支えるものだ。
偽りの情報の拡散は、コンプライアンスにおける重大インシデントだ。
これが個人の指摘であったため、この程度で済んでいる。しかし、LJL運営パートナーのライバル企業やLoL競合タイトルの運営、e-Sportsを嫌う人が最初に見つけて対応した場合、どのような結果が待っていただろうか。いかにLJL運営パートナーにリスクマネジメント上の問題があるか、理解していただけるだろう。
コンプライアンスとリスクマネジメントに問題がある組織は、ガバナンスが効いていないということになる。
コンプライアンスとリスクマネジメントに問題があり、ガバナンスが効いていない企業を運営パートナーに選んでいる運営も、同様の疑惑を問われる案件だ。
ここまでが追記したものになる。また一つ運営を決定的にフォローできない問題が増えてしまい、大変に残念だ。
【配信者S氏・A氏】
●評価基準分析
問題となるU氏の配信まで炎上しないので、本項目を割愛する。
●問題点考察
忙しい有力配信者である点は理解できる。
ただし、それに対して十分な説明がされない場合、多くの憶測を含んだ解釈が勝手に拡散されてしまうことになりがちだ。
ウォッチパーティの仕組みをよく理解していない一般人からすると、「なぜあの配信者は、ウォッチパーティという仕事を請けているのにもかかわらず、仕事をしていないのか」と見られる可能性がある。
有力配信者のLoLウォッチパーティを期待をしていた人からすれば、期待を裏切られた状態になってしまい、火薬製造へとつながった。
また、「おとり」に見える状況には、間違っても加担してはいけなかった。
運営からスケジュール調整等の打診がなかったとしても、自主的にウォッチパーティをやる日を決め、ウォッチパーティが決まった時点で事前告知するなどの対応をするだけで、配信者側の問題の大半を回避できたのではないか。
運営がウォッチパーティの仕組みを十分に説明していないのであれば、代わりにわかりやすく説明することもリスクヘッジのためには必要だったと考える。
【まとめ】
運営のガバナンスが機能していない疑いがある。
広報活動も、十分な確認や検証が行われているか、疑わしい。
有力配信者は、これに巻き込まれる形となった。
有力配信者だからこそ、仕事依頼の精査を行い、リスクを判断する担当者が必要だった。
運営は内容に疑惑のある告知をしたことで信頼を落とし、LoL民は有力配信者のウォッチパーティを見れないことで運営と配信者に不満を持ち、有力配信者のファンはウォッチパーティがないのでLoLに興味を持つ機会がほぼなかった。
結果として全員が損をする戦略だったのではないか。
4.3.U氏のウォッチパーティ炎上問題
【問題点】
U氏の炎上配信とその対応
【関係者】
・U氏
【流れ】
・問題になった最初の配信は、激怒から始まった
・MSIのウォッチパーティ権が3枠に限られている説明
・日本サーバーがないときから9年間大会動画をアップロードし続けたプライドを主張
・世界大会ウォッチパーティで一番数字を持っていた事実を説明
・攻撃的な口調と芸人染みた言動が入り交じっていた
・「LoLを普段から見ない人たちに見てほしいから、ね、他のVtuber2人が選ばれた、理解はできる」発言
・親交のあるR氏への、ネタだと思われる攻撃的発言
・「あの、他の人に攻撃するのはやめてください。選ばれた方々が悪いわけじゃない」発言
・ウォッチパーティ権を持つA氏が、ウォッチパーティを辞退
・2日後の補足配信では、前提から丁寧な解説をしている
・ウォッチパーティ枠に選ばれた人の説明と擁護をしつつ、改めて自分の経歴などを説明したうえで言い分を主張
・「炎上したからUGに与えるとなるとクソ燃えるじゃん。ただ、言わせてくれ。他の人が貰ってもその人燃える。俺以外がもらったらまた同じことが起きる。だから俺が何が言いたいかっていうと、Riot。炎上は俺が受けよう。すべての批判は俺が受ける。だから1枠余ったところを俺にくれ」発言
【U氏】
●評価基準分析
補足配信は謝罪ではないため、本項目を割愛する。
●問題点考察
最初の配信で攻撃的な口調と芸人染みた言動が入り交じっていた点は、本気と冗談の境目がわかりづらくなり、ネット上だけでなく現実でも問題を起こしやすい。
ただ、登場する関係者の人間関係や性格を理解し、親交のある人の間だけであり、かつすべての内容を聞いていた状態であれば、問題にはならなかっただろう。
この攻撃的口調は、配信者としての演出面もあるのだろうが、意見を提示する場ではやってはいけなかった。これだけで冷静な議論は失われ、炎上しやすい環境を構築してしまった。
攻撃的な口調と芸人染みた言動が入り交じった表現は、切り抜きやSNS等の短文拡散にとても弱く、細かなところでフォローしている内容が一切伝わらない状況になり、より過激に見える状態で拡散されることになった。
これに加え、今までの運営への不信や、A氏S氏のウォッチパーティが十分に行われず、説明もなかったことで生産された火薬もあり、そこにU氏の一部の過激な視聴者が引火させた。
結果として、A氏のウォッチパーティ辞退へとつながり、本格的に炎上したと考える。
2日後の補足配信は、この時点で正式な謝罪配信にするべきだった。
欧米など複数の人種が入り混じる地域であれば、謝罪よりも率直な意見提示や意思表示が優先されることに何ら問題はなく、炎上していないだろう。議論の後に、非を認めるという流れも十分にあり得たはずだ。しかし、日本の文化では優先順位が異なる。炎上が発生してしまった時点で、丁寧な謝罪から入り、速やかに事態の沈静化を図るべきだった。
また、補足配信後半での辞退者枠を引き受けるという発言が致命的であり、決定的な炎上へとつながった。
その後、それぞれの過激な配信視聴者同士が活発な火薬生産を行い、配信者が新たに配信すれば、今度はそれを原料に火薬生産活動に勤しみ、次々に引火して炎上が収まらない状況へと移っていった。
まず、炎上発生時点で、誰かが文化の違いを指摘し、U氏を引き留める必要があった。
また、コンプライアンスやリスクマネジメントの基礎的講習を受ける必要があった。ただし、個人勢配信者であるため、このような講習を受ける機会はなかっただろう。可能であれば、早期に事務所等への所属をするべきだった。
【まとめ】
今まで挙げてきた関係者の中では、S氏とU氏のみ個人勢である。この弱みが顕著に出ている。
過去にストリーマー契約を結んでいたプロゲーミングチームも存在するようだが、このチームからは給料を滞納されていたほどであり、講習などに資金を投入していたとは考え難い。
個人で文化の違いや講習を受ける機会というのはほぼ存在しないため、あまりにも対応が困難だ。
補足配信の冒頭が丁寧に進められているだけに、U氏が文化的差異を認識していれば、謝罪配信になっていた可能性を感じる。
4.4.関係者の炎上問題に対する反応
【関係者】
・K氏
・R氏
・キャスターR氏
【K氏】
https://clips.twitch.tv/RoughDifferentGoshawkRalpherZ-xKwCt8l_adoB8wYX
https://clips.twitch.tv/GiantOpenCobblerDerp-QvCKHfaU22U-IYVT
●問題点
・なし
●問題点考察
良い雰囲気の場を用意し、比較的冷静に感情を表現している配信をした。
この炎上で大きな被害を受ける1人ではある。しかし、感情をある程度抑制しつつも表現し、雰囲気の演出も上手かった。このことから、メンタルコントロールとリスクマネジメントが大変に上手い人だと判断できる。さすがのCEOといえるだろう。
【R氏】
1次資料の確認ができなくなっているため、不本意ながら、その痕跡をたどれるものをリンクに貼った。
https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/netgame/16621/1714292659/
●問題点
・U氏1回目の配信をまとめた動画のコメントで、U氏の「ウォチパ権もらえた方々に対してのコメント禁止」コメントに対し、「俺には言ってもいいよ」とコメントした
・A氏ウォッチパーティ辞退という結果を見てからU氏を糾弾した
●問題点考察
K氏と対極的な配信をした。
感情的な対立が発生している中で新たに感情をぶつける行為は、炎上に関しては下策だ。
結果的に、問題を鎮静化させるのではなく、新たな火薬生産者を増やす行為だったといえる。
K氏と真逆の評価ということになるだろう。
リスクマネジメントの基礎的講習を受けることが好ましいと考えるが、個人勢であることを考えると難しい可能性がある。
【キャスターR氏】
https://www.twitch.tv/videos/2239616916?t=4h29m41s
上記動画の0:18-0:46
●問題点
・公式キャスターが、自身の配信(公式イベントの公式ウォッチパーティ配信)でU氏を糾弾した
・公式キャスターが、公式キャスター謝罪の場で笑いをこらえていた
●問題点考察
R氏同様、感情的な対立が発生している中で新たに感情をぶつける行為は、炎上を促進させる行為であり、下策だ。
また、これを公式キャスターが行った点が新たな問題の争点になる。
キャスターは、メディアやイベントにおける外向けの顔そのもので、それを売りにしている職業だ。当然、契約内容にも守秘義務を含めた相応のものが交わされると考えられる。
キャスターを採用している企業の評判に直結するため、ある程度私的な配信等に制限があっても疑問には思わない。キャスターの発言は、公式の発言と判断されてもおかしくないからだ。
マスメディアのキャスターが、公式キャスターを名乗った上で、そのマスメディアが力を入れて開催している公式競技中に、その競技の公式観戦パーティ会場において好き勝手にネガティブな感情を吐き出す行為をしているだろうか。
キャスターR氏が行った行為は、まさにそれそのものだった。
なお、キャスターR氏は、キャスターK氏が問題を起こした際の謝罪の場では、隣で笑いをこらえていた過去がある。
謝罪の場を台無しにする行為であり、キャスターとしては、通常ではこの対応はありえない。
この2つのケースは、公式キャスターが公式の場で発言や反応という情報の発信を行った点と、運営は特にこれらの情報発信を否定していない点が共通している。
つまり、運営は、公式キャスターR氏が公式な場で行った情報発信を、運営の公式見解として問題ないと判断したと考えられる。
運営が謝罪を台無しにする行為を黙認したということは、運営の判断としては以下が考えられる。
・キャスターK氏だけの問題であり運営には関係がないと判断した
・キャスターK氏の謝罪はあの程度で十分だと考えた
・キャスターK氏は特に問題があると思っておらず、謝罪の必要性を感じていなかった
また、U氏に対する糾弾を黙認したということは、運営の判断としてはU氏は糾弾されるだけの行為を行ったと判断したということだ。
まとめると、キャスターR氏の問題点は以下のようになる
・公式キャスターが、公式の場で個人的な感情を剥き出しにし、個人を糾弾した
・公式キャスターが、炎上により「たった一人しか得しなかった」という、根拠が不明瞭な情報を発信した
・公式キャスターが、炎上を抑制するわけではなく、促進する発言をした
・公式キャスターが、公式キャスター謝罪の場で笑いをこらえていた
そして、以上の点について、運営は黙認したということだ。
もし、運営の公式見解とキャスターR氏の判断が同じなのであれば、キャスターR氏に問題はない。
一方で、運営は公式の場で感情的に個人を糾弾することを容認し、公式の場で炎上を促進する公式キャスターを容認する組織であることが判明する。
もし、公式見解とキャスターR氏の判断が異なっているのであれば、契約にも絡む問題だ。
この場合、キャスターR氏は、公式の場で、公式見解と異なる私的な感情を吐き出したことになる。
キャスターR氏には職業倫理が著しく欠如している可能性が強まり、キャスターR氏はキャスターK氏同様、職業倫理やコンプライアンス及びリスクマネジメントの基礎的講習を受ける必要があったと考えられる。
運営も、このような情報発信に対応していなかった点が問題になり、リスクマネジメントを行っていないずさんな組織であることが判明する。
【まとめ】
K氏の対応の上手さが群を抜いていた。
R氏の対応のまずさは、個人勢としては仕方のない面もあるだろう。
キャスターR氏は、運営の判断次第で、本当に問題があったのか判断が分かれることになる。政治家であればトカゲのしっぽ切りにあう可能性のあるケースだ。
一方、どの情報を考察しても運営のずさんな対応が目に余り、フォローすることは非常に困難だ。
4.5.Worlds2024直前の謝罪配信
【関係者】
・U氏
【U氏】
https://www.twitch.tv/videos/2254074343
●評価基準分析
問題の説明は、文書にて詳細に行われた。
再発防止策は、努力面の意思表示のみで具体案は提示されなかった。
問題判断は、組織に所属していないので割愛する。
処罰基準は、組織に所属していないので割愛する。
処罰が基準通りに行われたかは、組織に所属していないので割愛する。
効果的な謝罪が行われたかは、
組織内で共有されたかは、組織に所属していないので割愛する。
正式な謝罪としてはあまりにも遅かった。
全面的に過ちを認める謝罪だった。
謝罪内容は、文書にて詳細かつ明確に説明され、口頭での補足もあった。
ヘッドセットは配信者の癖なのかもしれないが、不要だったのではないか。
服装は、個人勢であり家での配信とはいえ、謝罪をするにはラフだったのではないか。
にやにやしているような表情に見えることがあった。
コメントを通じて意見を受ける姿勢は見せていた。
●問題点考察
大会前であり、次のウォッチパーティで同じ問題が発生しないように牽制できるタイミングを選んだという説明は理解できなくもないが、正式な謝罪としてはあまりにも遅すぎ、効果は大幅に薄まったと考える。
ことあるごとに謝罪や非を認める言動をしていたことを確認しているが、それと正式な謝罪は異なる。謝罪の遅さは致命的だ。
事前に謝罪文を公開し、日時を指定し、謝罪配信を行い、謝罪文はきっちりと形式が整っていた。
これらの点は、リスクマネジメントについて誰かが支援したのか、基本的な形式をしっかりと抑えた対応だった。
ただし、配信面では事前準備に問題があったのか、一部設定を切っていなかったため、不謹慎に見える場面があった。結果として笑いをこらえるような表情に何度かなっていた点には大きな問題があった。
配信でも文書をしっかりと読み、スムーズに進行するなど、形式を整えるべきだった。
リアルタイム配信にこだわらず、動画という形をとった方が、より良かった可能性がある。
【まとめ】
謝罪の遅さを考えると、謝罪の効果としてはあまりにも致命的だ。
ただし、謝罪タイミングの遅さを除けば、個人の謝罪としてはかなり整った良い部類になると考える。
5.結論
全体を通じて、初歩的なリスクマネジメントや職業倫理の欠如をきっかけとした問題が積み重なったものだった。
それらに不満を持った、過激で行動力あふれる視聴者がSNSを通じて火をつけて回ったということだろう。
関係各所があらかじめガバナンスを強化し、職業倫理やコンプライアンス、リスクマネジメントの講習を開催していれば、今回取り上げた問題のほぼすべては起こらなかったと考える。
ゲームや配信業界は、他業種と比べれば比較的新しく、まだ環境整備が進んでいない面もあるかもしれない。
他業種の事例を見習いつつ、現状を改めていく必要があるだろう。
6.炎上を抑えるために
キーワードは「関与」だ。
小さな組織ほど、関与していると実感でき、仲間意識が強くなる。
大組織になるほど、関与している意識が薄れ、疎外感が強まっていく。
疎外感は不満を生み、対立や炎上の火種となる。
この構図は、村と都市、ベンチャー企業と大企業など、どこでも見られる光景だ。
「こっちは昔から自治会費を払い、ごみ集積所や側溝などの地域清掃、自治会費で予算を付けて安く商品を提供している夏祭り運営などを通じてコミュニティ維持に協力してきたのに、新しく来たやつは金も払わず、掃除もせず、ごみは捨て、祭りも気まぐれに参加することもある。タダ乗りにもほどがあるだろう。」
「こっちは忙しくてそれどころじゃない。法律で規制されているわけでもないのに文句を言われる筋合いはない。」
こういった対立を見たことはないだろうか。
このような対立に対し、実際にコミュニティ運営に多少なりとも関与してもらうことで、コミュニティの一員としての意識が芽生え、クレームや対立ではなく建設的な意見交換ができるようになったという話がある。
炎上や対立を可能な限り回避しつつ建設的で持続可能なコミュニティにするためには、多くの人が関与を実感できるサイズのコミュニティが複数存在することが必要不可欠だ。極めて少数の巨大なコミュニティを構築する大都市型ではなく、小さなコミュニティが接続されているネットワークシティ(コンパクトシティ)型が理想なのではないか。
LoLでは様々な意味で有名なボッサイ氏とそのコミュニティが存在する。
ボッサイ氏とソロランクに当たるだけで味方がゲームを投げたり、複数のレポートをされてBANされる様子は、動画やSNSを通じて何度も見られた光景ではないだろうか。
そのボッサイ氏がコミュニティを形成し、ソロランクではなくフレックスを回すだけで、すべての問題がポジティブな解決をするのだ。
ソロランクでボッサイ氏以外がボッサイ氏の戦術に合わせるストレスを感じることはなくなる。フレックスでボッサイ氏の独特な戦術を発揮することで、ボッサイ氏コミュニティは存分に楽しむことができ、ボッサイコミュニティと対面した人は普段と異なる試合を楽しむことができ、その誰かが配信や動画化をすることでLoL視聴者も楽しめる。
対立は平和的に回避され、多くの人が楽しむことができるようになったのだ。
コミュニティに広く深く関与させることで傍観者ではない主体性のあるプレイヤーへと変化させ、炎上に関わる暇をなくすことが問題のポジティブな解決へとつながる。
今回炎上した人は、自身のコミュニティに主体的に関与させるためのイベントやコンテンツをより精力的に考案し、増やすと良いかもしれない。
もし炎上が頻発しているのであれば、それは人を狭い場所に閉じ込めすぎて、傍観者や被害者意識を植え付けたしまった可能性が高い。コミュニティの分散と接続が多くの関与を促し、問題解決への道筋をつけるの鍵になるだろう。
7.感想
一連の炎上に関し、運営には特にリスクマネジメントの面において問題がある。
LJLの運営パートナーは、ここ数年は立て続けに企業が入れ替わっていることを確認することができる。しかし、一般視聴者にとっては、自分で調べようとしない限り企業名を見ることはほぼない。一般視聴者からすれば、LJLはLoLの大会で、運営はRiotJPで、その顔は公式キャスターだ。
公式キャスターが問題を起こせば、LoLのブランドを棄損し、LJLのブランドを棄損し、RiotJPのブランドを棄損し、Riotのブランドを棄損する。
なぜキャスターK氏の問題から5年経っても、ブランド戦略の急所でもあるキャスター周辺のリスクマネジメントを強化をしていないのか、自社が抱えるブランドの価値に興味がないのか、純粋に疑問だ。
ずさんな運営のあおりを直接受けるクレーム担当には深く同情せざるを得ない。
皮肉なことではあるが、日本におけるLoLプレイヤーや視聴数の少なさゆえにこの程度の問題で済んでいると考えられる。
また、今回分析した炎上だけではないだろうが、切り抜きやSNSの短文表現の悪い面をあまりにも多く目にした。
短いコミュニケーションにおいては、複数の問題が混同して伝わることが多い。
この特徴を理解していないのか、理解していて悪用しているのかはわからない。ただ、この特徴を利用して個人の怒りを表現し、拡散したことは確かだ。
ネット上ではメディア偏向報道を指摘する人をよく見るが、それと類似した行為をやっているケースも多く見られ、炎上問題に深く関わっている。
また、この炎上を見て時々窺えたのは、疑問や不満を率直に伝えて問題解決への話し合い等へと繋げる欧米等の他民族共生文化と、問題を棚上げしつつ有力者や時間での解決を図る日本の村社会文化の対立が発生したように見える点だ。
日本も、あるいは配信者業界は急速に、人種の多様化が進んだように思う。
今後、文化の対立に基づくトラブルは急速に増えていくのだろう。
炎上は今や日常的な話であり、仕事やニュースを通じて日常的に目にする光景だ。
だからこそ当たり前のように対応部署が用意されているし、組織に所属する人にも講習を用意するなどしなければいけないご時世といえる。
その昨今では当たり前となっているガバナンス、コンプライアンス、リスクマネジメントの言葉が、ゲーム運営や配信者界隈ではまるで存在していないかのような有様だ。
今回の関係者を見ると、個人や規模の小さな組織が多い。このため、仲間意識が強く、閉鎖的な村社会のような構図になっている。小規模ゆえにコンプライアンスやリスクマネジメント講習といったものを受ける機会が少ないことも、今回の炎上に大きく影響しているだろう。
これらの業界が拡大するにつれ、他の業種と同等の対応が求められるようになると考えられる。
特に配信者などインフルエンサーには、規模の小さなマスメディア並みの影響を持つようになった人もいる。海外でもインフルエンサー向けの法整備が進んでいる地域が増えており、これから日本でも多くの変化があるだろう。
今はその過渡期なのかもしれない。
つい先日、U氏は事務所所属となり個人勢ではなくなった。
もし炎上発生時に所属していたのであれば、この問題は発生していないか、発生しても炎上規模を抑えることができただろう。
この加入は、今回の炎上関係者すべてにおいてプラスとなる判断なのではないか。
U氏は、結果的に炎上への対応を行ったわけであり、運営との対応の差が浮かび上がる。
運営にも組織改革等、問題への根本的対応を期待したいところだ。
8.おわりに
今回のちょっとしたレポートのようなものは、専門家からすれば鼻で笑われるような、短くて専門性もなく内容の薄い、ただの感想文のようなものだ。しかし、LoLの炎上問題について取り上げ、問題を分解してごく簡単な分析し、感想や提案をするだけでこの長さになる。SNSや切り抜きなどの短文コミュニケーションが、いかに不正確な情報と感情を拡散するツールか、理解していただけるかと思う。もし専門だという学生がいるのであれば、拡大していくe-sportsや配信者業界にフォーカスした、リスクマネジメントや炎上回避と持続可能なコミュニティ形成といった内容をテーマに、より専門的な分析を通じて論文にでもしてもらえれば面白いだろう。
炎上といえば多くのテーマがある。過去に大きかったものといえばセクハラだろうか。
セクハラが問題になってから、法整備が進んだだけでは足りず、過去にさかのぼってまで責任を追及されるようになった。これと同様の火種となり得るテーマとして、男性蔑視発言に注目している。
配信者界隈でも、「男に謝る必要はない」といった発言や、それに同意する大手事務所所属女性配信者たちの配信を確認している。そこまでではなくとも、大変に疑わしい発言を多くの女性配信者がしてきたことを耳にしている。
世代を経るごとに常識は変わっていく。男女平等という言葉のニュアンスも徐々に変化し、上の世代ほど「公平」、下の世代ほど「平等」に近い意味で扱っているような印象を受ける。
この変化が続くのであれば、いつか「男に謝る必要はない」といった発言をした人たちも、問題になる日が来るのかもしれない。
参考
今回記載した内容においては、1次資料が削除されているものが少なくない。不本意ではあるが、可能な限りその痕跡をたどれるような、2次資料、3次資料へのリンクを参考に挙げている。
2024/10/23追記
参考にあったリンクを、適切な場所に移動した。
過去の痕跡をたどりやすくなるよう、リンクを追加した。
また、内容自体に変更はないが、一部項目をより詳細かつ具体的に記述した。
note初記事であったこともあり、不慣れな点が多かったことが原因ではある。しかし、投稿した記事を度々編集している点は筆者の不徳の致すところであり、お詫び申し上げる。