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上海蟹食べたい
気が付くと僕は見知らぬ土地にいた。周りからは魚醤、異国の匂いが漂っている。ここは何処か、これは夢か。分からないままに、怠い身体を起こしてみる。
ここはどこ。聞きなれない言葉は中国語?早口でまくしたてるように届く音の意味を理解することは出来ない。でも騒がしくて生活力に溢れたような、生き生きとしている。さっきまで一人暮らしの自宅にいたはずなのにおかしいな。頬を抓ってみる。痛い。どこに迷い込んでしまったのか。
今日は日曜日のはず。僕は普通の社会人で、ブラックでもホワイトでもない企業で働いている。昨日は大学の時の友達と大手町で飲んで、女の子を紹介されて、帰りにラインを交換して、少しやり取りして、家に帰ってシャワー浴びて寝た。ただそれだけ。
聞こえてくる音楽に覚えがある。くるりだ。「上海蟹食べたい」が妙に頭に残っている。
やっぱり夢の中だと思うことにした。ここは市場なのかな。豚の頭、色とりどりの果物、何かわからない臓物。そして手足の長い上海蟹(何だろうと思う)。手招きしている人がいる。
用意されたオープンカーに乗り込んだら勝手に走り出した。海辺にはビキニのお姉さん。脈絡のない時間の流れ。僕は現実で何をしていたんだっけ。そうだ、昨日紹介された女の子とどうするか決めないと。
「上海蟹食べたい?」
そう聞いてみようか。思ったら、運転手がこちらを向いていった。
「あなたと食べたいよ」
そうかもしれない。と思ったら、僕の意識は急に1Kの部屋に戻った。昨日はワインとアヒージョだったはずだ。スマホを見ると返信があった。
「どこで飲みますか?」
上海蟹を食べられる中華料理屋を探してみよう。それだけでいい。あなたと食べたいって思ったんだから。