リップシンク
透明な何かがはじけていた。口裏合わせて何がいいか考えてみてもわからない。そんな日々。ここから物語は始まる。
何もないと思っていた1日。丸の内線の車内でポッドキャストから流れてきた歌声に気を取られた。リップシンクって何だろうと思って調べてみると、口パクという意味らしい。何だろうなこの感じ。ただただ楽しそうなメロディ、何かが始まりそうな予感がした。どんどん進んでいくような。
大きな予定はなくとも、楽しい日になるんじゃない?って気がした。自分をワクワクさせてくれる唄に出会うことはとても楽しい。
「東京はすごい」ってみんな揃ってそういう。ああ確かに凄い。こんなにも人がいて、眠らない東京。そんな中の自分っていう存在について考えた。毎日仕事して、友達と遊んで、飲んで、寝て。ちっぽけだね確かに。でもそんな1人から色々な人と繋がって、誰かと会って、また繋がっていく。そんな感じで皆は何処かで結ばれていく。東京はその密度が濃いんだと思う。
知り合いの知り合いでも、口パクでも、リップシンクで奏でる音のような模様。僕らが織りなすこのメロディは僕も含めたたくさんの人たちで成り立っている。
そんなことを考えると楽しい。今日のアルコールでもまだ酔えない。