メランコリー、のようなもの #7
ボートの後は動物園に行って、カモシカとかペンギンを見た。ベタなデートコースと言われようと、やっぱり動物園は定番と言って過言はない。自分たちと違う生き方をする動物たちを見ていると、人間って何なんだろうなって気持ちになる。餌をやる二人を見ながらそう言ったら笑われた。
「何それ。結構哲学的なこと考えるんだね」
「いや、別にそんな深く考えてないよ。単純に楽しいし」
「でもそう言われるとそうかもね。毎日難しいこと考えて、色々悩んでるのって人間だけかも」
「まあそうやって楽しければいいんじゃない」
「急に冷たくなった。○○君はサークルの時もそうだよね。特に飲み会の時とか」
初めて聞いた。というか考えてることがばれてる。彼女はいつも全然酔ってないけど、普段は喋らないからそういう風に思われてるのはなんか意外だった。
「あの時はさ、皆楽しそうじゃん。別に自分はその時に皆を見て楽しければいいから」
「確かに。あの時の雰囲気は私も好きだな。学年関係なく仲いいし」
これには全面的に賛成。そういうのが大学の良いところだと思う。本当に色んな人たちがいる。出身も学年も学部も性別も立場も違う。でもその場は本当に生まれてからずっと一緒にいたみたいな気持ちになれる。
「それだけで満足なんだよ」
それに尽きる。笑って彼女も答えてくれた。
夕方になってきて、そろそろお腹も減ってきた。
「よし、夕飯行こう!今日は、焼き鳥で」
事前に調べていた井の頭公園の「いせや」へ。予約は出来ないけど、運よく10分待ったら入れた。店内は込み合っていて威勢のいい店員さんの声を炭火の美味しそうな匂いが漂っている。
生ビールで乾杯して、おいしい焼き鳥とつまみに舌鼓を打つ。二杯目からの瓶ビールって美味しい。生はもちろんだけど、瓶を小さなコップに注いで飲むのってなんでこんなに美味しいんだろう。
お酒も入って楽しくなってくると、自然と全員が饒舌になる。知ってる共通の友人の話に高校時代の話。少し誇張して、皆で笑う。いつも一歩引いていた観覧者の自分とは違う意味で楽しかった。
お腹を満たした僕らは、逆口の商店街の方に向かった。少し気分も高揚して、どこかいい店を探そうか。