なつのうた
飲みすぎたかもしれない。そんな気がしてたけど、案の定そうだったみたいで、今僕は井の頭公園のベンチで蹲っています。大学のサークルの飲み会はいつもそう。乾杯して少しコース料理を食べたらコールやって店に怒られて、誰かが潰れて介抱して、平謝りしながら次の店に移動する。そうやって脈々と受け継がれてきた僕たち。いや、日本の大学生は皆こうなんじゃないかって気がしています。
深夜を過ぎて、終電も無くなった。タクシーで家に帰るお金も無い。ただ今は寝ていたい気持ち。
二次会までは確かに介抱する側だった。僕はそんなにお酒に弱くない。酔っ払うことも無いし、皆を家に送り届ける立場だったはず。でも、今日は違った。夏にやられてしまった。
言葉自体も古いけど、暑気払いっていいですよね?夏の暑さを払おう!みたいな。その勢いに任せてテキーラを一気してしまった結果、井の頭公園のベンチで動けなくなっています。
友達はどこへいったのか分からないけど、知っているような知らないような顔がしきりに「大丈夫か」って連呼している。うるさい。大丈夫だよって言おうとしたら胃が痙攣してきて、繁みにダッシュして吐いた。なにやってんだろうね。繁みの傍で土に手をついた。
ふと横を見ると、同じように地面に這いつくばってる人がいた。なにやってんのって、いや僕と同じか。
「なにしてんの?」
逆に聞かれてびっくりした。
「テキーラ飲みすぎて吐いてるんよ」
って全然カッコよくない。
「私も」
そういって笑ったと思ったらまたすぐに俯いてゲロゲロやってる。西東京の中心地、住みたい街ランキング上位のこの街の、昼にはカップルも親子連れも訪れる井の頭公園で、酔っ払って何もできなくなっている。なにやってんだろって思ったら、やっと正気に戻ってきた。
「立てる?」
「いいよ、このままで」
冷静になって断られると少し傷つく。
「いや、ここだと風邪ひくよ?どうもならないから、とりあえず移動しよう。」
「嫌だよ。私はここが好きだからここにいんの。話しかけないで」
まだ酔っぱらってるように見える彼女には何を言っても難しいらしい。でも、放っておくことは出来ない。