メランコリー、のようなもの #4
「でもさ、全然知らない間に誰かを傷つけてるのって最悪じゃない?」
確かにそうなんだけど、それはこっち側(男側)が勝手に思っていることだから、本質的には関係ないんだ。言わなくていいこと言っちゃったな、と後悔する。気付かせる必要なんかなかった。彼女にとっては何の意図もなくて、ただ楽しいだけかもしれない。その本心は分からないし、分かる必要もなかった。
「ごめん、変なこと言った」
「別にいいけど。でも、だったら○○君は来てくれるの?」
「僕?」
話が変な方向に進んでいる。僕はもちろん、彼女のことを好きだから、断る理由なんてない。でも今まで勝手に諦めて外から見ていた僕が勝手にほかの人の気持ちをばらしてデートに行くなんてどうなんだろう。躊躇してしまう。
「楽しければいいんでしょ?なら行こうよ。楽しいと思って誘うのは間違ってないんだよね」
自分が言ったことでどんどん首が絞められていく。困っていたら、今日知り合ったとは思えないくらい仲良くなっている二人が声を掛けてきた。
「ねえ、今週の土曜日ってひま?吉祥寺で遊ぼうよってなってんだけど」
「いいよ!行こう行こう。吉祥寺って近いけどあんまり行ったことなかったんだよね」
僕が答える前に彼女の方が答えていた。三人で色々と話が進んでいく中、僕は気まずい感じになって一人黙っていた。
「じゃあ、13時に吉祥寺駅集合ね」
「これってダブルデートじゃない?」
そう言ってまんざらでもない感じで笑いあっている二人。ノリで決まってしまったけど、これはサークルの皆の恨みを買うのではないか。抜け駆けした後輩を先輩たちがただで許すのか。憂鬱な気持ちでただ俯いていた。そうしていたら、彼女が僕の耳元でこうささやいた。
「決まっちゃったよ?楽しく遊ぼうね」
そう言い残して、二人の会話の方に入っていった。こういう所なんじゃないの?って思ったけど、彼女の方が上手なのは間違いない。週末の予定がこうして埋まっていく。吉祥寺には何があるのか、僕はまだ知らない。