ホテル カクタスでまた逢えたら

 きゅうりと帽子と数字の2。これだけ聞いても何のことだか分からないと思う。この3人(と言っていいのか分からないけど)が織りなす物語が江國香織さんの「ホテル カクタス」。ある種の空想でありながら、僕たちに大切なことを教えてくれる。

 友人との出会い。人は一人ひとり違うということ。誰かと関わることは窮屈だけど、それ以上に楽しかったりする。人生の彩りってそういうことなんだなって読み終わった後に感じた。

 メタファーとして構成されたきゅうりと帽子と数字の2。生まれも育ちも性格も何もかも違う。一見、交わることがなさそう。だってきゅうりと帽子と数字の2だから。読んだことが無い人はこの人なに言ってるんだろうってなるかもしれない。けど、読んでみたら分かる。僕たちはそれぞれ全く違う世界を生きている。細かい意思疎通の術を持たない他の生物は、自分の世界だけで生きていて、その他の生物にはなるべく関わらない。関わる時は食べたり食べられたりする関係になることがほとんどだろう。ある意味、生きるために必要な本能に従って、過ごす。

 もう一度繰り返すと、この3人は全く別々の世界を生きてきた存在であって、本来なら交わることが無い。それがひょんなことから知り合いになり、お互いを知り、認め、何の変哲も無いかけがえのない日々を過ごしていく。

 過ぎ去ったものは戻ってこない。だからこそ、今を大切に生きていくのがいいんじゃないかな。そんなことを思い出させてくれる素敵な小説です。

いいなと思ったら応援しよう!