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【小説】夜の歩調を合わせて。4話 小林夏美ノ章
独白
夏の日差しに心が焼かれて
情熱的で初恋みたい、少し痺れる浮かれた微熱
熱さも過ぎると痛みになるから
そっと優しく夜風に当たろう
夜の歩調を合わせて。4話 小林夏美ノ章
お母さんが教えてくれた
少し寂しいけど素敵な話し
それは正に、物語の登場人物みたいな素敵な女性、松河鈴音さんと、若かりし頃のお母さんとお父さん、そんな3人の情熱的な友情と、心がドキドキ音を鳴らしてしまう程に魅力的な、不思議な夜の物語
今年の夏休みは素敵な街で
素敵な夜に
素敵な出会いが待っている、そんな予感が溢れ出して、お母さんを見つめ直すと
「手延のお爺ちゃんとお婆ちゃんには連絡しとくから、お兄ちゃんと一緒に行ってらっしゃい、そして、余り危険な事はしないように、解ったわね?」
ため息混じりに了承の言葉が貰える、それだけで私の心に火が着いた
きっと今年の夏休みは、素敵な夏休みになる
何度もの闇を超えて、真の夜の夢に触れる、そんな静かで澄んだ、冒険の日々が私を待っている。頭の中をそんな妄想が、栗色の馬の形に変化して駆け巡る
お母さんに感謝を伝えて部屋に戻ると、早速旅に出る支度を始める、私と兄の二人分のボストンバッグ、手始めに手延街に持っていく着替えを入れていく、勝手に兄の部屋から、着替えの洋服やら下着やらも持ってきて詰めていく、私も兄も服は古着が好きだから、月に一度は、2人で下北沢まで買い物に行く、同級生の友達からは
「優しくて大人で素敵なお兄さんね、同い年の男共が、砂場で遊んでる子供と、同列に見えてくる。」って評価を頂いてる、やったねお兄ちゃんモテモテだ!私は少しだけそれが誇らしい
ちなみに兄は、年上の女性が好みらしい、かくも世の中は上手く行かない物で有る
まぁ大切にされてる自覚はあるし、私も兄には素直に頼れる、兄の背中は身近で大きい、きっと今回の冒険でも、私を守ってくれるだろう
私が何かを思い立ち行動する
そうすれば
兄が尻拭いをしながら、最後の一押しをしてくれる
「お前達兄妹は、ゼロをイチにする事が上手い、これは非常に大切な事だ、流石はオレの、自慢の息子と娘だな。」
私達兄妹が小さい頃から、2人で何かをやり遂げる度に、お父さんはそうやって褒めてくれる、だからだろう、何事をするにも、兄と2人が私の中で常識になっている、だから今回の冒険も
頼りにしてるよ? お兄ちゃん。
そして
「せめて事前に、メールでも良いから連絡をして欲しかったな、後せめて、下着の準備ぐらい自分でさせて? 今年の夏は……大変な夏になりそうだなぁ。」
そう兄が嘆きながら腹を決めるまで、後3時間20分
そろそろ、眩しかった日の光がオレンジ色に染み渡り、夕日がカラスから物悲しい鳴き声を誘い出し、夕暮れの音が耳に入る時刻
そして冒険の準備も終え、ベットの上で横になる、ボーッとスマホで動画を見ながら、兄の帰りを待つ、この一瞬の日常はきっと、ここから始まる非日常への準備の時間
部屋に響く冷房の音
何処か悲しげなカラスの鳴き声
スマホから流れる明るい音楽
そんな3つの音に影響されて、微睡みだした私の意識は、それでも喜びの言葉が口から漏れた
「あぁ、とっても楽しみ」
すぐ側まで近づいてる、夏の音が確かに聞こえた
そして、お母さんにも言っていない、私が決めた、秘密の最終目標
松河鈴音さんを見つけだす