The Last of Us Part2 - 考察と感想(ネタバレ有り)
PS4専用ソフト「The Last of Us Part2」のストーリーをクリアしたので、ネタバレ有りの考察や感想をアウトプットしたいと思います。ラスアス2、語らずにはいられない!
2020/07/19追記:
本日で発売から1ヶ月経ちました。ちょうどプラチナトロフィーもゲットでき、2周目もクリアしたので、感想や考察を追加しました。
はじめに
本記事は、今作の「The Last of Us Part2」及び前作「The Last of Us」と追加エピソード「Left Behind」の重大なネタバレを含みます。未プレイの方は、ぜひ早急にゲーム本編をプレイしてみてください。
本記事は、今作「The Last of Us Part2」を高(好)評価しているものです。賛否両論あるゲームですが、賛の方なんて見たくない!という方は、ぜひ別のゲームをプレイしてみてください。
感想①「ストーリー」
ジョエルをアビーに撲殺され、エリーの復讐が始まる…というところまでは、よくあるストーリー展開でしたが、その後主人公が交代して憎き復讐相手のはずのアビー編が始まります。途中で「いつアビー編が終わるんだろう」と思うぐらい、どちらのシナリオもボリュームが大きかったと思います。
エリー編は、ダウンタウンでの地図を見ながらの探索がとてめ楽しく、その後は一本道になりますが、ディーナやジェシーとの共闘、ボート移動など多様なシチュエーションが楽しめました。セラファイト初登場時の何とも言えない異質感、シャンブラー初登場時の演出、ブローター再登場のインパクトなど、印象的なシーンも満載でした。
前作終盤、エリーの意思に反して病院から彼女を助け出し、嘘をついてジャクソンへ連れ帰ったジョエル。ジョエルの嘘や父性に勘付いてモヤモヤする、世界を救う大義を失ったエリー。今作の要所で挿入される回想シーンにおいて、父娘のような交流、すれ違う様子などが描かれていて心が痛みます。
アビー編は、WLF(ワシントン解放戦線)とセラファイトの泥沼の抗争を描く一方で、WLF所属のアビーと行きずりで出会ったセラファイトのレブとヤーラと組織を超えて共闘するストーリーが描かれています。
エリー編は、先車から目的が決まっていて、ただただ復讐相手に向かって突き進む雰囲気でした。一方のアビー編は、行きずりの仲間が大怪我をしたから治療道具を探しに医療施設を探索したり、仲間を助けにセラファイトの本拠地たる島へ潜入したり、他人のために動くことが多いストーリーで、バイオハザード的なサバイバルホラー感が強い気がしました。
その最たるシーンが、ラットキングと戦う地下の医療施設です。最初の感染者が運び込まれた場所という前フリから、薄気味悪い施設内にはアビーしかおらず孤独で、ずーっとイヤな感じが漂っているホラー味が最高でした。
その後の話やエンディングについては、考察の中で述べたいと思います。
感想②「キャラクター」
エリー
今作の主人公と見せかけて、最強のボス。アビー編最後の戦闘で多種多様な攻撃を仕掛けてきてめっちゃ怖い。その後に見るとパッケージも怖い。ロード待ちの画面も怖い。
ジョエル
フルネームはジョエル・ミラーであると判明(前作で明かされていなかった気がする)今作の主人公と見せかけて、最初の10分ぐらいしか操作できない。もうちょっとジョエルが主人公の姿を見たかった。エリーと「じゃあまたね」と別れた後、その「また」の機会が撲殺シーンなんて悲しすぎるぜ…
ディーナ
今作の相棒キャラ。追加エピソードの「Left Behind」のライリーにしてもディーナにしても、エリーはこういう自由奔放で積極的な子が好みなんだろうか。個人的にはイマイチ好きになれなかったけど、エリーの心の支えだったことは間違いない。
ジェシー
今作の相棒キャラ。敵地に単身潜入する腕っぷしがあり、仲間思いで良いヤツっぽかったけど、あっけなくアビーに殺害されてビビった。
トミー
今作の相棒キャラと見せかけて、最大の被害者。ジャクソンを取り仕切る頼りになる陽気なおじさんだったのに、アビーに撃たれて半身の自由を奪われ、マリアとも別居した模様。復讐心が燻っている。
ユージーン
会話の中で名前が出たり、写真があるだけで直接本編には登場しないが、おそらく老齢で故人のおじいさん。冒頭で隠れ家が登場し、銃器を工作したり大麻を作ってたりエッチなビデオを見ていた模様。一方で、タグを持っていることや手紙の内容から元ファイアフライであることが判明。ジャクソンやジョエルのことをアビー達へリークしたのはユージーンっぽい…?
JJ
ディーナとジェシーの間に産まれた赤ちゃん。終盤、農場でエリーとディーナが育てている。おそらく、お互いの大切な(でも亡くなってしまった)ジェシーとジョエルのイニシャルを取っているんだろうなぁ…
アビー
今作のボスと見せかけて、主人公キャラ。元ファイアフライで、父親をジョエルに殺害された。オーウェンとの青春を犠牲にしてまでも訓練に励み、鋼の肉体を手に入れ、ジョエルへの復讐を果たした。その後、レブと行動を共にするようになるが、ラトラーズに監禁・拷問されて鋼の肉体は見る影がなくなった。冷静に見れば悪い人間では無いが、ひたすら不遇。
ジェリー(アンダーソン博士)
アビーの父親。前作のファイアフライの病院で、エリーの手術を行おうとしていた執刀医。エリーを助け出しにきたジョエルに殺害される。優しい父親だった一方で、ワクチンを精製できる唯一の優秀な医者だった。彼が殺害されたことにより、ファイアフライが目的としていたワクチン精製は絶望的になり、解散の一因となった。
マーリーン
ファイアフライのリーダー。前作のファイアフライの病院で、エリーを助け出そうとしたジョエルに殺害される。前作では割と冷酷そうに見えたが、エリーを死なせてまでワクチンを精製することに反対していた。マーリーンとジェリーの亡き後、ファイアフライは解散した。
オーウェン
過度な暴力に走りそうな仲間を制したり、戦争のような現状に嫌気がさしていたり、理性的で飄々としたリーダータイプ。アビーの幼馴染でおそらく両想いであったが、父親の復讐に生きるアビーからメルへ乗り換えて子供を作った。にも関わらず、アビーと浮気した。身体は自制が効かないのか。
メル
オーウェンの今カノ。元カノのアビーを内心では嫌っていたっぽい。エリー編ではダボッとした上着を着ているので分からないが、オーウェンの子供を妊娠している。おそらくディーナと対になる存在。
マニー
エリー編ではジョエル撲殺時に唾を吐きかけてた憎き相手、アビー編では女たらしなお調子者だけど良いヤツ。気分が高揚すると英語でない言語で喋る。トミーを追い詰めるが、逆に銃殺される。おそらくジェシーと対になる存在。朝起こしに来る役回りなのは意図的なのだろうか。
アイザック
WLFのリーダー。セラファイトに対して拷問や殲滅戦を仕掛けていく残忍な性格。一方で仲間には甘いようで、アビーは割とお目こぼしされている。組織を裏切ったも同然のアビーに対し「3秒待ってやる」と銃殺を躊躇ったため、その隙に瀕死のヤーラに撃たれる。
レブ
まだ少年(少女)という年ごろのセラファイトの敬虔な信者。丸坊主にしているが、本名はリリーであり女性。嫁ぐよう言われたが、兵士になりたかったため反発、頭を丸坊主にした。その結果「掟破り」として追われる身となる。アビーと出会った後、行動を共にするようになる。
ヤーラ
セラファイトの女性信者。掟破りのレブを連れて逃げていたが、捕まって左腕をハンマーで砕かれる。その出来事をきっかけとしてアビーと一緒に行動するようになる。結果的にアビーの命を2回も救ったり、WLFのリーダーのアイザックを殺害したり、意外と活躍してる。
これ以降は、考察になります。
考察①「叙述と倒叙が収束するストーリー構成」
叙述(じょじゅつ)とは、順を追って述べることです。時系列に沿ってストーリーが語られるスタイルです。一方の倒叙(とうじょ)とは、時間を逆に遡って述べることです。
エリー編は、現在の時間軸の復讐の旅を叙述で描き、4年前から現在に至るまでのジョエルとエリーの関係性を倒叙で描き、その2つのストーリーが1つに収束していきます。アビー編も、現在の時間軸の物語と現在に至るまでの過去の物語が描かれ、1つに収束する同じ形式です。
さらに、アビー編から見ると、エリー編が倒叙になっており、ここでもまた2つの物語が1つに収束します。その後、時間は一度飛んで、舞台はサンタバーバラに移り、最終的にまたエリーとアビーの物語が交錯します。
そして、最後の最後、エリー編の倒叙側で描かれていたストーリーのゴール地点に辿り着きます。さんざん会話の中で匂わされていた「ディーナとキスをして一悶着あった夜」の話です。
最終的に全体像を見ると、エリー編の現在の時間軸から叙述で描かれ、4年前から現在に至るまでのジョエルとエリーの関係性を倒叙で描いていた一本のストーリーになっています。
前作は、叙述(時系列に沿った)形式で、ジョエルとエリーの関係性を描いていました。今作は、叙述と倒叙の二本柱かつアビーの視点も含めて描かれているものの、根本的にはジョエルとエリーの関係性を描いているものでした。賛否両論ありましたが、やはり今作のストーリーも「The Last of Us」なのだと私は思います。
考察②「エンディングとギター」
エンディングについても賛否両論あるようですが、そこに至るまでを少し詳しく考えたいと思います。
物語終盤、ファイアフライの痕跡を追うアビーとレブ、それを追ったエリーが新組織ラトラーズが牛耳るサンタバーバラで再び邂逅します。エリーはアビーを圧倒しますが、ジョエルを思い出し、結局殺さずに見逃します。
初見は「えっ、何で?」と思うのですが、その後の回想で「ディーナとキスをして一悶着あった夜」におけるジョエルとエリーの会話が語られます。
この回想の中でエリーは、ジョエルのことを「許せないが、許したいと思っている」と述べています。おそらく「嘘は許せないが、父性は理解できる」的な複雑な感情だと思いますが、オープニングでトミーも「自分も同じことをしただろう」と理解を示していますし、前作のプレイヤーもジョエルの行動をある程度は理解していると思います。しかしその後、ジョエルが殺害されてしまったため、このエリーの思いは宙に浮いてしまいます。
その後はエリー編で辿ってきた通り、復讐の旅を経てアビーに肉薄するものの、逆に拠点としていた劇場へ攻め込まれて敗北。心を病むほど後悔した後、サンタバーバラで後悔を断ち切る(復讐の)機会を再度得ました。
しかし、そこでエリーが見たアビーは、WLFもセラファイトも裏切り、ラトラーズには反逆してボロボロにされ、それでもなお、レブの命だけは守ろうとする強い意志を見せていました。世界を敵に回しても一人を守る、その姿はジョエルと重なる部分があったと思います。
ジョエルを殺害したことは「許せない」が、ジョエルと重なるアビーの姿を見て「許したい」とエリーは思ったのだと考えます。ジョエルに対して抱いていた宙に浮いた思いの結実こそが、このシーンだと思います。
一方で、復讐の連鎖を断ち切ったとは思えません。エリーは旅の中で人を殺し過ぎました。ジョエルと同じように誰から恨まれていてもおかしくない状況です。エリーもジョエルのような最期を迎える可能性はあります。
エリーが断ち切ったのは、自身の復讐心と後悔、そしてジョエルへの思いだったと考えています。アビーとの激闘で指を失い、ジョエルから習ったギターが弾けなくなりました。そして、農場の家にギターを置き、エリーはどこかへ去っていきます。
復讐の旅の中でたびたび弾いていたギターは、ジョエルへの思いや復讐心の象徴だったのではないかと思っていますが、最後にエリーから切り離されました。そう考えると、多少は救いがあるのかなと思います。
考察③「戦う目的と地図(マップ)」
ギターと共に重要なアイテムとして今作に登場しているのが、地図だと思っています。前作も今作も、他のアクションアドベンチャーゲームではほぼ登場している「マップ」や「ミニマップ」の要素がありません。細かいことを言えば、今作はダウンタウンの探索で地図が出てきますが、前作は遺物で発見できる程度で地図を使う機会はありません。
エリー編では、燃料を求めて地図に書き込みながらダウンタウンを探索をしたり、エリーの復讐相手の場所を無線と地図で特定しながら追い詰めました。アビー編では、メルとオーウェンを殺害されて心挫けたものの、エリーが落とした地図を発見して奮起、劇場に攻め込みました。
終盤の農場やサンタバーバラにおいても、コンスタンス2425を地図で探したり、トミーが持ってきた地図をもとにアビーの居場所を特定したり、今作はとにかく地図というアイテムに突き動かされています。
前作の最後でジョエルは「何があっても戦う目的を見つけなければダメだ」と述べます。また、今作のエリーとの回想シーンにおいても「やり直すチャンスがあっても同じことをするだろう」と述べています。ジョエルは、その心のうちに戦う目的を強く持っており、地図というアイテムが要らなかったのだと思います。
一方で、エリーやアビーは精神的には未熟であり、要所要所で地図という存在が出てきます。地図には戦う目的を与えたり、目的を強く認識させる作用があったのではないかと思えます。特にエリーは、前作でワクチンのために死ぬつもりだったのに死ねなかったという空虚さを抱えており、強い目的が必要でした。
ゲームシステムに地図は登場しませんが、各キャラクターがそれぞれの物理的な地図や心に秘めた地図を見ながら、戦う目的に邁進していくストーリーという一面もあったのではないかと思います。
考察④「ジョエルとエリーの認識のズレ」
ジョエルとエリーの間には、かなり大きな認識のズレがあります。これは前作から引き続くもので、ジョエルはエリーを庇護対象と見ており、エリーはジョエルの助けが無くてもやっていけると思っています。
前作の大学キャンパスにおいて、ジョエルは重傷を負って生死の境を彷徨います。その間のエリーの奮闘は、Left Behindと本編の両方で描かれています。エリーは単身ショッピングモールを探索し、生存者(ハンター)や感染者を蹴散らして救急セットを調達、ジョエルの危機を救いました。
その後、エリーは湖畔地帯へ狩りに出掛けて、ジョエルを恨むデビット達と遭遇、ハンター達の拠点に拉致されてしまいます。一方のジョエルは、怪我から復帰し、行方不明になったエリーを捜索します。
その後、デビットに追い詰められて取り乱したものの殺害に成功したエリー、そして取り乱したエリーを保護するジョエル。ジョエルから見ると「エリーは大変な目に遭わされた」と心配になる一方で、エリーから見ると「ジョエル不在の中、一人で勇ましく闘った」のです。
この認識のズレによって、ジョエルはエリーを本当の娘のように強く思い、ファイアフライの病院から助け出す決断をさせたと思っています。一方のエリーは、自分自身で苦難を乗り越えて「生きた証を残せた」はずであり、それが果たせなかったことに強い空虚感を抱いたと思います。
前作のエンディングで、エリーはジョエルの下手な嘘を薄々見抜いていたであろうものの、その嘘を全部本当だと誓ったジョエルと共にジャクソンへ向かいます。それでもやはり心のモヤモヤは晴れず、今作の回想シーンの通り、単身でソルトレイクシティの病院へ行き、真実に至ります。
今作の終盤、サンタバーバラに居るアビーを追ったことも然り、エリーは周囲に一旦納得させられはするものの、結局自分自身で決着をつけなければ気が済まないタイプなのかもしれません。
一方のジョエルは「ディーナとキスをして一悶着あった夜」においても、酒場のおっさんとの一悶着に割って入り、エリーに諌められます。ジョエルにとっては、前作のデビットに傷付けられたエリーを思い出させるのかもしれません。
それでも、その後、ジョエルとエリーは「やり直すチャンスがあっても同じことをするだろう」「許せないけど許したいと思っている」というようなお互いの思いを吐露します。
エリーの自立を認め、ジョエルの父性を理解し、これから認識のズレや関係修復を行なっていく未来があったかもしれないと思うと心が痛いです。
考察⑤「ポリコレとこの世界に生きる人間たち」
否定的な意見で散見されたのが、ポリティカル・コレクトネス(性別・人種・民族・宗教などに関する差別や偏見を防ぐため、政治的・社会的に公正・中立な言葉や表現を使用すること)やLGBTQIA+(性の多様性)に対して過剰に配慮されているという指摘でした。
それらを「The Last of Us」の世界で表現する必要は無かった、本筋とは関係なくて違和感がある、この配慮によってゲームレビューサイトから不当に高評価を与えている…などなど。初回プレイではあまり気になりませんでしたが、言われてみれば配慮している部分は多いように思えます。
しかし、これらは本当にマイナスポイントなのか?違和感があるか?というのは話が別です。炎上騒ぎになってしまったのはマイナスですが、ストーリーとの調和を見ると、特に違和感は無く、むしろ「The Last of Us」の世界だからこそ、上記に配慮した表現を色々と盛り込めたと思いました。
前作を含めて物語の舞台設定は、20数年前の寄生菌パンデミックで壊滅状態にある世界です。私たちが住んでいる世界と同じではありません。まったく異なる秩序や価値観が存在している世界になりつつあります。(価値観という言葉を使いますが、もっと良い言葉が思いつきませんでした…)
ジョエルやトミーの年代の人間は、壊滅前の世界の価値観を持っています。これは現実世界の私たちの多くが持つ価値観に近いと思います。一方で、エリーやディーナの年代は壊滅後の世界に生まれており、私たちとは異なる価値観を持って成長しているでしょう。
そして、ゲームに登場するジャクソンやWLF、セラファイトなどの集団は、人種・民族という境界線がなく、生きるために人々が集まって共同生活を営んでいます。そんなゲーム世界のアメリカにおいて、一つの人種や民族だけで構成される集団が存在する方が、逆に違和感があると思います。
現実世界の情勢はご存じの通りで、現実世界ベースのゲームでは多様性を描くのは難しいでしょう。一度世界が壊滅した「The Last of Us」だからこそ描けるものであると思いました。
とは言え、世界が変わっても理想郷ではありません。上述した通り壊滅前の価値観の人間と壊滅後の価値観の人間が、共同生活を営んでいる状況なので、当然ながら価値観の衝突は発生しています。これが、ゲームの冒頭で描かれているジャクソンのシーンです。
エリーとディーナが公衆の面前でキスをしたことで、酒場のおっさん(名前忘れた)と揉め事になり、ジョエルを巻き込んだ一悶着になった…という感想でも述べた「ディーナとキスをして一悶着あった夜」がゲーム冒頭から仄めかされています。
その後、マリアの仲介で、酒場のおっさんからサンドイッチで和解を求められますが、エリーはかなり冷たい反応をします。
初回のプレイでは「おいおいエリー、大人になれよ。公衆の面前でキスしたことにも多少非があるんだし、もう少し柔らかい態度で許してあげなよ」と正直思いました。しかし、終盤でこのシーンの真実が明かされます。
回想シーンで、酒場のおっさんは「レズキスすんな」と明らかに罵倒しています。これは典型的な壊滅前の世界の価値観です。これを踏まえて和解を求めるシーンを見てみると、そりゃ「コイツは根本的に何が問題か理解していない。マリアに言われたのか知らんけど、場を収めるために適当な謝罪だけで済まそうとしてる。分かり合えない」とエリーが受け取っても不思議ではありません。ケンカ両成敗ではあれど、エリーの冷たい反応も理解ができました。
※揉め事の仲裁に入ったジョエルも、別の回想シーンの中で「ジェシー(男)が好きなのか」とエリーに質問して「ハズレ」と言われるシーンがあります。これは本当にジェシーのことを好きそうに見えたのか、価値観のフィルタが掛かっているのか、ちょっと判断が付きづらいです。
ポリコレへの配慮やLGBTQIA+を意識したキャラクターやシーンが盛り込まれているのは確かだと思います。しかし、私はそれをマイナスなことや違和感とは思っていません。むしろ上述の通り、描きたいテーマの一つとして、さらっと盛り込んでいるような気がしてスルメなストーリー描写だなと思います。
考察⑥「セラファイト予備軍のジャクソン」
エリーが暮らしているジャクソンでの集団生活は、平和な街の1シーンとして描かれています。一方で、WLFやセラファイトの争うシアトルは真逆の殺伐とした世界として描かれています。
ジャクソンの集団生活が平和に見えるのは、マリアの存在が大きいと思いました。トミーの奥さんです。
ジャクソンは統率が取れた集団か?と問われるとそうは思いません。軍隊式のWLFの方が統率された組織です。では、なぜ平和に暮らせているのか。それは、マリアがコミュニケーションの潤滑油として機能しているからだと考えています。
ゲーム冒頭のマリアは、酒場のおっさんとエリーの揉め事を仲裁し、エリーとジョエルの関係性にまで気を配っていました。前作のダムでも、ジャクソンの元となる集団を上手くまとめていたように思えます。集団生活を平和に送るため、マリアは手を尽くしていたと思います。
そして終盤、トミーとマリアは破局します。トミーは満身創痍の身体で、マリアが支えてあげるべき状況のように思えます。それでも別れることを選んだのは、マリアがジャクソンのリーダー格であるからだと思います。
復讐に燃えるトミーに影響され、ジャクソンが闘争への道を歩むことを懸念したから、マリアはトミーを切ったと推察しています。(復讐に後ろ向きなエリーをトミーが罵倒するシーンもあったので、単純にモラルハラスメント的な理由の可能性もあります)
さて、平和穏健派のリーダーを失い、武闘派のリーダーに変わった後、泥沼の闘争に巻き込まれた集団があります。セラファイトです。アビー編で詳細が語られていますが、元はWLFと争うような組織ではなく、ただの宗教団体でした。
ジャクソンはどうでしょうか。平和穏健なリーダーのマリアを喪ったとき、復讐に燃えるトミーがジャクソンをセラファイトと同じ末路に導くのではないかと思いました。今後Part3があれば、そんなイヤな展開もあるのかなぁと思っています。
考察⑦「犬と闘うことのジレンマ」
ストーリー本編の深掘りとは異なりますが、このゲームには「犬」が敵キャラクターとして登場します。ゾンビ犬やケルベロスではなく、軍用犬ではあるものの普通の犬です。
私は、ゲームの中とは言え、犬を殺すことに非常に抵抗がありました。ペットを飼っている人は尚更だと思います。しかし、この感覚は正常なのでしょうか?
勿論、犬を殺すことを躊躇う感覚は正常だと思いますが、狂っているのではないかと疑問に感じたのは人間を殺すことに対する感覚の方です。全然躊躇わないどころか、どういう風に撃退するか作戦すら練りますよね。
ゲームプレイ上、敵を倒して進むのは仕方ないし、ゲームと現実の区別がどうのこうの言いたいわけではありません。ゲーム世界において、犬は殺すのを躊躇うのに、人間を殺すのは躊躇わない感覚が不思議という話です。
今作の犬は、匂いで主人公を追跡し、発見したら仲間に知らせたり、自分で直接飛び掛かって殺しにもきます。小柄でスピードも速いので、かなりの強敵です。人間は銃や物理でやり返してくるから、というなら犬もまた同じです。
この感覚に対する解は出ていません。
おわりに
現時点での私の感想や考察は以上ですが、また何か思いついたら内容を加えるかもしれません。考察でも述べましたが、今作はスルメゲーだと思っていて、噛めば噛むほど味が出てきます。
さて、今作の評価は文字通り賛否両論で、時に酷い言葉を投げられながらも、一方で刺さった人たちは各自が思い思いの考察や感想を書き表しています。それを読むのも、とても楽しい体験です。
最後に、私が読んでみて面白いな・鋭いな・よくまとめられているな…と思ったオススメのブログや動画をご紹介します。もちろんネタバレ有りです。ぜひ色々な人の考えに触れてみてください。
PS4ちゃんねる Proさん(ブログ)
KENさん(note)
ぐう実況ゲーム紹介chさん(Youtube)
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