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海外ドラマ「KIZU-傷-」エイミー・アダムズが醸す薄幸さがハマる渾身作…
原題:Sharp Objects ★★★★★
2019年は海外ドラマから。オスカーに5度ノミネートされながら、レオよりも見放されているといえそうな実力派エイミー・アダムズが製作総指揮とTVドラマ初主演を務めた渾身作。(『メッセージ』でもノミネートされて然るべきだった!)
2017年にドハマリした「ビッグ・リトル・ライズ」を手掛けたジャン=マルク・ヴァレが監督、『ゴーン・ガール』原作のギリアン・フリンのデビュー作となるベストセラーミステリーのドラマ化。
これから発表されるゴールデングローブ賞ではTVの部<リミテッドシリーズ部門>作品賞、主演女優賞(エイミー・アダムズ)、助演女優賞(パトリシア・クラークソン)にノミネートされています。
また、エイミーは先ほど予告が解禁になったクリスチャン・ベイル主演『バイス』でもディック・チェイニーの妻リンを演じており、映画の部の助演女優賞にもノミネート。
いまだオスカー無冠なのが本当に信じられない彼女は、ついにTVでも栄誉を手にすることになる可能性大。
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年明けから、かなり強烈なやつをビンジウォッチしてしまいました…。「KIZU-傷-」は「ゲーム・オブ・スローンズ」でもお馴染みのHBO局による海外ドラマシリーズ。観る前は「この邦題よぉ…」と思っていましたが、心も体も、家族もコミュニティも、あらゆる層が抱える普遍の傷と思えば納得かも。
エイミー演じる主人公カミールの記憶と現在を描く物語で、これだけフラッシュバックが多用されながらも、観る者にある種の程よい(というと語弊があるかな)混乱や誘導を起こさせる編集や、鏡面を使った撮影手法には舌を巻きます。鏡に映っているもののほうこそ、どんなに取り繕っても実相であるように見えてきます。
サントラもジャン・マルク・ヴァレ監督と「ビッグ・リトル・ライズ」などで組んでいたスーザン・ジェイコブズの名前もあり、不穏で見事にマッチ。
田舎町の名士の家に育った新聞記者のカミールは、故郷で起きた連続少女行方不明事件を記事にするため、久しぶりに帰郷します。
アルコール漬けと壊れたiPhone、そこから流れる音楽が、彼女にとってこの帰郷は相当な痛みであることが伺えます。
前半、不気味な母娘関係の真実に気づくまで、あまりにも閉鎖的なコミュニティや支配的・高圧的な母、無関心・無干渉の父の存在に、なかなか客観的に見ることができず、ツラいものがありましたが、
『スリー・ビルボード』や「ツイン・ピークス」の世界で、「ビッグ・リトル・ライズ」で「デスパレートな妻たち」に「13の理由」を加味したような物語が展開していくことに。
やがて町民の邪推の中、2人目の少女の遺体が凄惨な形で発見され…。
傷だらけの娘と母の間にある関係と、最後の最後に明かされる事件の真相は、当たってほしくない予想が当たってしまうダウナー系の究極でした。
原作のギリアン・フリンといえば、『ゴーン・ガール』ではロザムンド・パイク、2作目「冥闇」を映画化した『ダーク・プレイス』ではシャーリーズ・セロンが主演を務めてきましたが、今回はエイミーの巧さやカリスマ性により、そこはかとなく醸し出される薄幸感と、全8話のTVシリーズという“煮込み具合”も相まって、これまでで最高の組み合わせになったのではないかと。
フリンはヴィオラ・デイヴィス主演『妻たちの落とし前』(原題:Widows)でもスティーヴ・マックイーン監督と共同脚本を務めていて、こちらもさらに楽しみになりました。