もしもシリーズ「私が政治家だったら、選択的夫婦別姓を最大限利用する」
1st phase -選択的夫婦別姓-
私「上の手のひら」は選択的夫婦別姓に賛成いたします!
生を受けてより今日に至るまで慣れ親しんだ大切な名字でございます。
それを結婚という紙切れ一枚のキズナのためだけに、これまでの人生、苦楽を共に歩んできた名字を失ってしまう事など、決して!あってはならないことなのです!
相手の戸籍に入るということは、これまで育ててくれたあなたのご両親との縁を切る事にもなるのです。
なのに相手は何一つ失う事はないのですから、初めから不平等な結婚生活を強いられるのです。
そう!強いられているんだ!
これでは平等で対等な関係とは言えません!
お互いがお互いを尊重し尊敬し合える関係性を築くためにも選択的夫婦別姓は必要なのです!
ワーパチパチペチペチ(サクラの拍手)
ワーキャーイエー(サクラの声援)
- 時が過ぎ -
2nd phase -選択的夫婦別姓の自由化-
私「上の手のひら」は現在の選択的夫婦別姓に反対いたします!
これまで各々が旧姓を名乗ることこそが平等であると、公平であると、法の整備をすすめて参りましたが、完全に間違っておりました!
政治家としてお詫び申し上げたい気持ちでございます。
よくよく考えてみますと、別姓以前にあなた方の名字そのものが自ら望んだモノではございませんでした。
これは、いわば…先祖による重大な人権侵害であり、つまりは先祖代々強いられ続けている…。
そう!強いられているんだ!
我々はこの名字を名乗りたいわけでも守りたいわけでもございません!
そう思えるようになるためには「自分達で考えて付けた名字」だからこそ、本当に大切にしたいと思えるのです。
それぞれ別の名字を名乗るのも良いでしょう。
ですが、例えば結婚を機にお相手と話し合って新たな2人だけの名字を新調するというのはいかがでしょう。
きっと今まで以上に2人の…いや、いずれ産まれてくる子供たちも含めて、家族のキズナが深まっていくとは思いませんか!
これを「選択的夫婦別姓の自由化」と称し、広めていこうではありませんか。
真の平等、お互いがお互いを尊重し尊敬し合える関係性を築くためにも選択的夫婦別姓の自由化は必要なのです!
ワーパチパチパチパチ(サクラとガチの拍手)
ワーキャーイエー(サクラとガチの声援)
- さらに時が過ぎ -
3rd phase -名自認-
私「上の手のひら」は選択的夫婦別姓の自由化ごときでは到底覆すことの出来ない非常に重大な人権侵害を見落としておりました!
誠に遺憾、痛恨の極みでございますっ。
政治家としてお詫びを検討しているところでございます。
そもそもの話なのですが、強要されていたのは名字に限ったことではございませんでした。
「名前」も両親から勝手に授けられ、一方的な願望や期待を押し付けられた代物です。
これは、いわば…両親による重大な人権侵害であり、つまりは先祖代々強いられ続けている…。
そう!強いられているんだ!
我々は親の身勝手により多大な被害を被り続けております。
ただでさえ大変なこのご時世に、生き方を指し示すような名前だったり、プレッシャーのかかるご大層な名前を押し付けるという事は、かわいい我が子を追い込む行為なのです!
そこで、自己判断が出来る年齢になれば「誰でも」「いつでも」名前を変更出来るようにしましょう。
そうすれば人々は「親から与えられた名前」という鎖から解放されて、今まで以上に家族のKIZUNAが極まる事は想像に難しくないのです。
「今日はたかしの気分で家を出たけど、昼はハヤオ、夜はマイケル!」
その日その時の気分で自由に名乗って良いのです。
皆さんっ、名自認の社会を目指しましょう!
選択的夫婦別姓の自由化を推し進めたからこそたどり着いたこの「名自認」を広めていこうではありませんか。
真の平等、お互いがお互いを尊重し尊敬し合える関係性を築くためにも名自認は必要なのです!
ワーパチパチパチパチ!
ワーキャーワーキャー!
- あれから時が過ぎ、ついに法案が可決された -
4th phase -人間の尊厳-
家族の形は一変しました。
始めこそ互いの呼び名を確認し合っていたものの、徐々に面倒くさくなり家族間の会話が少なくなりました。
名字を自由化したことで互いの存在が希薄となり、今まで家族であったはずの人たちが、まるで他人のように感じられて、同じ屋根の下で暮らすことにうんざりするようになりました。
それでも願いを込めて名付けた親たちもいましたが、その思いも虚しく、気安くその名を捨て去る我が子に失望しました。
結婚し、これまでの名字を捨てて新たな名字を付ける夫婦が増える一方、親兄弟や親族との関係性は薄くなっていきました。
保護者としての責任放棄、親族同士の集会、正月やお盆など日本の伝統行事は軒並み衰退の一途を辿りました。
身元を保証してくれる人も激減し、賃貸やビジネスの場でもなかなか信頼が得られず、入院すらままならなくなりました。
個人の尊厳が高まるはずだった政策は、反対に人間の尊厳を貶める結果となってしまったのです。
final phase -姓名の価値-
そこで私「上の手のひら」の出番でございます。
皆さま方、ご安心ください。
毎日名字や名前が変わりましても、あなた方には唯一無二の識別手段「マイナンバー」があるではありませんか!
何の支障もございません。
行政に全てお任せくださればあなた方は何も考える必要はないのです。
我々が徹底的に厳格に管理し統制いたしますので、あなた達…いや「ナンバーズ」はただ黙って従っていれば良いのです。
かくて姓名は形骸化し日本人は番号のみで管理されるようになりました。
政治家としてこれほど楽な事はございません。
日本で働きたい外国人労働者にも番号を付与し、自国民と全く同様に扱いますので差別も一切ございません。
なんと素晴らしい世界でしょう。
…ああ、そうそう。
今後はごく限られた者にだけ姓名を登録する事にいたします。
人間なのに姓も名もなく番号だけなんて諸外国に示しがつきませんからね。
ああ、恥ずかしい。
当然、政治家は姓名を登録いたします。
諸外国との付き合いもございますが、我々政治家は姓名を受け継ぎ繁栄することでナンバーズどもを使役する大切な役割がございますからね。
…何ですか?
番号の分際で姓名を取り戻したいと?
それは…あなたの献身と納税額次第でございます。
しかしながら、、、自ら姓名の価値を貶めた間抜けどもには番号だけで十分だとは思いませんか?
- おしまい -
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