自律性を支援するための枠組み:内在化を支援する(2)
自律性を支援するための内在化(internalization)に着目してみようと思います。
内在化は、心理学的にみればよい意味だけで用いる用語ではありません。
恐怖、身体的な訴え、不安、社会的引きこもりなど自己の中にそうしたネガティブな感情が内面に取り込まれてしまう現象も意味しています。
ここでは自律性という観点からどういった内在化が必要なのかを考えてみたいと思います。デシ・フラスト(1999,127ページ*邦訳)では、内在化の2つの形態は、取り入れ(introjection)と統合(integration)である、としています。
デシ・フラスト(1999)は、取入れは、ある事柄(考え方、ルール)をそのまま取り入れること、統合とは、ある事柄(考え方、ルール)を消化することであり、これが最適な内在化である、としています。
*同書の中では、フリッツ・パールズを引用しながら、「ルール」と整理していますが、ここではあえて、考え方、ルールとしています。
自律性の観点から、「取り入れ」よりも「統合」の望ましい結果です。
「消化」、つまり自分のものとして受け入れることが出来ていなければ、自律を伴った内在化にはなりえないからです。
そのためには、どういうプロセスが必要なのでしょうか?
明らかには、「~しなければならない」、「~すべき」から「進んで取り入れる」というプロセスが必要だ、ということです。ここで難しいのは「進んで取り入れる」ということがどうやったら可能か、ということです。
ポイントは、「無理やり」取り入れさせても取り入れたことにはならないということです。
必要なのは、デシ・フラスト(1999)は、理由付け、承認、および選択であるとしています。
理由付け:その事柄を理解できるような環境を整える。
承認:一人の人間として認められている、という実感が得られること。
選択:その事柄に対して選択の余地があること。
ここで一番難しいのは選択の機会を提供することでしょう。例えば、夏休みの宿題は、自律性という観点での内在化(統合)は困難なのは明らかです。
その理由については説明し、生徒に対しての承認を与えたとしても、選択の余地がないからです。
組織としても選択の余地がない、という状況もありえます。
あるプロジェクトに参加する権利があるか否かを選択させることが出来るかどうかは微妙ですね。
「しなければならないこと」「受け入れなければならないこと」が多くあります。そう考えると、フリーランス、独立して仕事をしている人が自律性が高いのは、常に、理由付け、承認(自己での承認)、選択の機会があるから、ですね。
この点、どう考えていくか、ですが、選択の機会がなかったとしても、理由付けの点で本人がそれに取り組むことの意義がどの程度理解できているか、かが重要なカギになるでしょうし、さらに言えば、自分自身が認められてその事に取り組んでいるという実感(承認)もやはり必要になるでしょう。理由付け、承認の2つの機会で、選択の余地がないことをカバーするということが重要になってくるでしょう。
とはいえ、望ましいのは、理由付け、承認、選択の3つの要素が揃っている状況を多く提供できる事なのは間違えないでしょう。