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世界一周旅行で出会った人たち#1「ロサンゼルス」


一年前の今頃は世界一周の旅の最終準備段階にあった。忙しかったが、それは旅への期待でいっぱいで忙しいと思うより、楽しい気持ちの方が強かった。
一年後がどうなっているのか、なんて全く予測不能の中、9月21日に羽田空港国際線乗り場から、第一の訪問先ロサンゼルスへ向かって、出発した。

一生に一度は乗ってみたかった、ファーストクラスの旅。それは想像を超えていた。
利用するお客が少ない手荷物検査場は、一般客とは違うため、混雑を避けられる。そして、ファーストクラスラウンジへ向かう。国内線では何度か利用したことはあるが、国際線では初めてだ。ロッカーがあり、そこに機内持ち込み用のスーツケースとリュックを入れると、駐機場に向かって大きな窓が作られたラウンジへと入っていく。
通路が長く、和風の屏風があり、くつろぎスペースも十分にある。すぐにスタッフの人がやってきて、説明を受けた。
料理の注文は専用アプリで。飲み物はドリンクバーで。もちろんシャンパン、ビール、焼酎、日本酒、ワインなどなんでもある。アプリで見るお料理は、まるで高級レストランにきたかのような
品揃えだ。機内食があることはわかっていても、このメニューには抗えない。
「真鯛のポワレ」「えんがわの寿司」を注文して、シャンパンを撮りに向かう。
シャワーは予約制で、準備ができたらアプリにお知らせが来る。
まずは食事を済ませてからにしよう。時間はたっぷりある。


長崎県産真鯛のポワレ

これから48日間日本を離れる、と思うと、こんなに長く日本を離れるのはどのくらいぶりだろうか、と考えてみた。高校生の時、10ヶ月間の留学に行って以来かもしれない。その経験があるから、48日間くらい大したことはないか、と思っている。何より旅先でどんな人たちに出会っていくのだろう、と考えると、自分の世界が広がっていく気がしてワクワクする。

この旅に向けて準備をすればするほど、不安は消え、ワクワク感が増えていった。
何よりファーストクラスを利用することは、大きな安心感を与えてくれた。何かがあっても、絶対に優先的にファーストクラスの人を助けてくれるだろうし、わからないことは遠慮せず聞けばいい。そう思うと、安心を買っているという、目には見えない価値がファーストクラスには含まれているように思えた。そして、みんなが思うほどファーストクラスは高くない。中にはマイルを貯めて無料でファーストクラスに乗る人もいるくらいだが、今回の世界一周ファーストクラスチケットは、1年間有効。ワンワールドチケットでは、6大陸に行くことができ、もちろん搭乗回数は各大陸で決められているが、エコノミーなら30万から50万、ビジネスなら70万から80万、ファーストなら130万から150万だ。え、なんでそんなに安いの、と友人たちにその度に聞かれたが、航空会社が与えてくれる大きなサービスだと私は思っている。ただ、今後価格が上がる可能性もあるし、何よりファーストクラスは席数が少ないので予約が入るかどうかが問題だ。私は2023年という、まだコロナを恐れている人たちが多い中出発したため、4ヶ月前の予約でも十分だったが、今は1年くらい前から予約しないと難しいかもしれない。


ラウンジカウンターからの景色
少し雨模様だった

最初の訪問先をロサンゼルスにしたのは、いとこ家族が住んでいるからだ。いとこのロサンゼルスの家には一度も行ったことがなく、「いつでも遊びに来て」と言われていたのを思い出し、世界一周の旅に出る前に「海外に慣れる予行演習」として、5日間滞在させてもらうことにしていた。

いとこ家族との交流は、ちょっと置いといて、このロサンゼルスでの「人との思い出」をあげるとしたら、いとこ家族と休日に行った「ホテルコロナド」で見かけたカップルかもしれない。


可愛らしいホテルの看板

私は全くこのホテルを知らなかったが、いとこは以前行ったことがあったようで、案内してくれた。
あのマリリン・モンローが宿泊した有名、高級リゾートホテルで、オーシャンフロントのホテルだ。ホテルロビーに向かう廊下には、モノクロの拡大されたマリリン・モンローが颯爽と歩く横顔の等身大写真があった。そのすぐ横には、ブテイックがありその名も「Monroe」


美しいマリリン・モンロー


ブテイック 『Monroe」



廊下を抜けると、バーがあり、その向こうにはドアが開け放たれビーチへとつながっている。「あ、夕日に間に合うかも!」と、叫んでいとこの子供と一緒にビーチまで駆け出した。

水平線に夕陽がほぼ落ち終わる寸前に間に合い、その美しさに立ちすくんだ。言葉も出ない。
オレンジと紫とピンクが混じり合ったような色の空。波も静かで穏やかな海。そこに微かにオレンジ色を残した太陽の半分が沈み込んでいた。
あまりにも美しいものを見ると、人は泣いてしまう。それほど荘厳で美しかった。


実物はもっとピンク紫がかっていたうように思う


今思い出しても、この旅で見かけた夕陽ベスト3に入るほど美しいサンセットタイムだった。
いとこ家族との5人で、ビーチサイドにある木製ベンチに座って、ただただ無言でサンセットを眺めていると、その先の砂浜にとても綺麗な砂山が作られているのに気づいた。それもとても綺麗に形を整えていて、とても人の手で不器用に作られたものには見えない。
近づいてみると、そこには「Happy Birthday」と書かれてあり、誕生日を祝うためのホテル側が依頼されて作ったものだとわかった。


バースデー砂山
「Don't touch」の看板が見える


そして、もう一つ砂山があったので、近づくと「Will you marry me?」とプロポーズの言葉が書いてあるのをみた。



プロポーズ砂山

周囲を見渡しても、それらしきカップルはおらず、「このプロポーズ成功したのかな」といとこの子供達と話していた。
こんなサンセットが美しいホテルのビーチサイドで、こんなロマンチックなプロポーズをされたら、断れないだろう、と思っていたら、そこにお互いに腰に手を回した、カップルがやってきた。身長差は30センチほどあるだろうか。

その二人がプロポーズの砂山に近づくと、すぐに近くにいた人たちが彼らに声をかける。「この砂山は君が作ったの?」と。
そう、このカップルこそ、このプロポーズ砂山の主人公だ。
耳を澄ませると「そうだ」と言っている。そして二人のすでに思い出になっているプロポーズについて語り始めた。



身長差のあるカップル


途切れ途切れに聞こえてくる会話には、「まさかこんなことが待ってるなんて思ってもなかったわ」「びっくりしたわ。でも嬉しかった」という女性の声が聞こえてきた。プロポーズは成功したのだ。おそらく、一生忘れないプロポーズになっただろう。人が幸せな姿をみると、こちらまで幸せになる。そして、それは「私が今幸せだから」なのだ。

自分が幸せでなければ、人の幸せを喜ぶことはできないから。

「地球からの贈り物」である、美しいサンセットと、日本では聞いたことがない、この砂山プロポーズは、私にとって今でもその光景を鮮明に思い出せるほどの大切なものとなった。


ライトアップされたホテルの外観
可愛らしく、美しい




ホテルコロナド


知らない世界がまだまだある。その世界を少しでも広げたい。
残り40日余りとなったファーストクラスの旅への高揚感はさらに深まっていった。

2話へ続く


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Hiromi  U.
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