ベトナム・ダナン3泊4日の旅・2日目「ローカルの生活を垣間見た日」
昨日の疲れか、目が覚めたのは7時半。
ハッと思い出し、3つあるバルコニーの一つに飛び出す。
既に朝陽と気温は上り切っていて、45度くらいの位置に朝陽はあった。
ああ、しまった、朝陽が昇るのを見損ねた、とショックを受けたが、思い直して朝食を食べに行く。
このホテルは、コロニアル調と言う感じで、昔のアジアに洋風の建物が妙にマッチする。
6階建てで、決して高すぎないのも良い。
朝食が無料なのは、昨年世界一周で多くの国でここのホテルグループに泊まったおかげで、ステータスが上がっているから。
高級ホテルの朝食が毎日無料なのは本当にありがたいし、年間10日も宿泊すれば年会費の元は取れてしまう。
レストランも天井が高く、フロアーはどこもかしこも大理石。
それもそのはず、このホテルのすぐ近くに「マーブルマウンテン」という名の、大理石が多く採れる山があるのだから。
スタッフは9割が女性で、ベトナム人女性はスリムで美しい。アオザイが似合うのも納得だ。
実は昨日、夜8時過ぎに小腹を満たすためにこのレストランに来ている。
その際接客してくれた女性スタッフは、笑顔が本当に素敵で、優しく、気がつく人だったが、「どこからですか」という質問に「日本から」と答えると、そうだと思いました、と言われた。
昨年訪れたメルボルンのテイクアウトカフェの若いアジア人(マレーシア人らしい)も、私が日本人であることを見抜いていた。そこで聞いてみた。
「どこでわかったの?」
と。
すると、「声、話し方、服」という答えが返ってきた。
これでもアメリカ人の発音に憧れ、アメリカ英語にしてきたつもりの私はちょっと悔しい。
それが伝わるのか、その後必ず言われる。
「英語お上手ですよね」と。
なんだか付け足しのようで、素直に喜べない気持ちもあるが、素直にありがとう、と言うようにしている。
「日本の人は英語喋れない人が多いから」
とも言っていた。彼女も、それ以外のスタッフも英語での意思疎通に問題がないので、
「どうやって英語を勉強したの?」と聞くと、「会話を聞いてるうちに」「なんとなくこんな感じかなって喋ってるうちに」と、なんとも日本人からすれば信じられないほど、簡単に英語を仕事で使えるレベルになっている。
日本語もいくつか知っていた。そう言えばインドネシア バリ に行った際も、若いホテルスタッフたちは英語はもちろん、韓国語や日本語にも興味を持ち勉強している人がいたのを思い出した。
結局は、「面白い」「勉強したい」と思うかどうかが大事で、学校で学ぶより我流で学べば日本人も十分に話すことができるのだろう。
それを学校で文法からやらせ、暗記しなければ点数が取れないようにしている、日本の英語教育が、英語嫌いを増やしているのだろう、と、ほぼ確信してるほどだ。
その女性が、今日は朝食時間帯に働いていた。
似てる人がいるなあと思っていたら、向こうが覚えてくれていて、声をかけてくれた。
彼女の素晴らしい笑顔と、キビキビと働く姿は、どのスタッフよりも生き生きとしていて、見ていても気持ちがいい。
私の名前を聞かれたので、彼女の名前も聞いた。
海外を1人で旅をしていると、ホテルスタッフが声をかけてくれることが多く、ホテルスタッフから色々と教えてもらうことがある。これも、旅の楽しみの一つだ。
ベトナム人気質なのか、このホテルの教育が素晴らしいのか、このホテルのスタッフは本当に気がつくし、頼めば快く確実にやってくれるので、本当に気持ちがいい。
朝食メニューは、ベトナム、中華、西欧料理が並ぶ。スシロールはあるが、味は全く日本ではない。
そう言えば、空港、ホテルのATMで言語を選ぶ際に、英語、中国語、韓国語、フランス語はあっても日本語がないことを思い出した。
ベトナムでは日本語熱が熱く、親日だと聞いていたが、おそらく観光客として日本人があまりベトナムに来ないのだろう。
日本人は日本が居心地が良すぎて、海外にも、国内旅行にも行かなくなっているらしい。旅行に行くお金がない、と言うほど貧しくなっているのだろうか。
そういえば東南アジアの若い人たちが、まだ海外に行ったことがないと言ってるのを何度も聞いた。
だとすると、日本人も同じだということになる。
経済が弱い状態が長く続きすぎているのを感じる。
ただ、日本人と東南アジアの人たちの違いは、「いつか海外に行きたい」と思っているか、そうでないかだ。
日本人は、海外に行きたくないという人が多いように思う。
危険だし、言葉はわからないし、日本のように便利じゃないし(場所にもよるが)清潔ではない、と挙げていけばキリがない。
それなら日本にいたらいいじゃん、ということらしい。
私は海外に来ると、日本と海外の差、人々の考え方の差がよくわかる。
何がいいのか、はそれぞれが決めることだが、私の目から見るとあまり日本人は幸せそうには見えない。それは給料の問題だけではない気がしている。
朝食では好きなだけプレートに食べ物を載せ、食べながら私がすることは、人間観察。
アメリカ、ヨーロッパ、インド、アジア(中国がほとんど)からの観光客が一堂に会する機会はなかなかないし、これだけの人種を一気に観察できるのは、食事同様に楽しい。
中国系の人たちは、大人数で旅をする。家族、友人、親戚、みんなで楽しもうとする。
インド系もそうだ。
ヨーロッパ、アメリカは家族連れもいるが、カップルが多い。
1人で旅してる人なんて、ほとんどいない。まあ、これにも慣れているので、周囲がどう思ってるかもどうでもいい。それより1人で旅をする方が私にはメリットが大きい。
自由で、好きなように過ごし、気を使う人もいない。無計画で、思いつきの旅ができる。朝食会場でも好きなだけのんびり過ごせるのだ。今回の旅で、いくつかの観光地も調べてきたが、あまり行く気がしないので、思案中だ。
そして、スイートルームで好きなだけ過ごせるのも、1人だからできることだ。
そこに日本語が聞こえてきた。ああ、日本人も泊まってるんだなと思うと、少し嬉しい。
その後目の前のビーチまで散歩に行った。ジリジリと照りつける太陽を避けるように、パラソルの下のデッキチェアに寝そべる。
太陽が昇り切ったビーチには、人はあまりいない。
波が寄せては引いていくのを、何も考えず、時間も気にせず、ずっと眺め続ける。隣のデッキチェアでは、インド系の若い女性がひとりでいるな、と珍しく思っていたら、タイマーをかけ、自撮りで波の前で大きくジャンプしていた。きっとインスタにあげるのだろう。友達に送るのだろうか。スマホ、SNSのおかげで旅の楽しみ方も変わったな、と思う。
部屋に戻り、旅記事を書く。3つもあるバルコニーの一つのソファに座って階下のプールを眺めながら。
日本から持ってきた日本茶を飲みながら。
なんと優雅で贅沢な時間だろう。
天気は相変わらず良く、だんだんとプールに人が増えてきた。
お昼を目処に、プールに行ってみることにした。
デッキチェアはたくさんあり、プールの混雑もない。
好きなだけ泳ぎ、疲れたらデッキチェアに寝そべる。
完全にバケーションモードだ。うとうとしてお昼寝まで済ませた。
帰り際に、ホテルからもらった無料ドリンク券を思い出し、
フレッシュココナッツジュースをいただく。
ナチュラルで、体にいい気がする。
一旦部屋に戻り、お風呂に入る。ここは、バスタブも大きく、バスソルトも備え付けてあり、ありがたい。
少し外出してみようと、コンシェルジュのお姉さんたちにおすすめのレストランなどを聞く。
赤いアオザイの制服がとても可愛い。
仕事はとても丁寧に、しっかりとしてくれるが、どこかキャピキャピした感じもする、可愛らしい女の子たちだ。
「制服可愛いですね」
と褒めると、すごく嬉しそうにお礼を言う。
「その制服好きでしょ?」と言うと、ニコニコ笑って、好きですと言う。
「これ着たかったら、作れますよ」と、アオザイの店を紹介してくれようとするが、
日本に帰って着ることはまずないので、それ以上は聞かなかったが。
複数紹介してもらったレストランは、すべて車で10分くらいの場所にあり、それが面倒になった。
この周辺を少し歩きながら、気に入ったレストランに入ろうと思ったが、ここは完全にリゾート地で、それは難しいとわかった。
お礼を言って、夕陽が落ち始めたホテルの外に出てみた。
歩道は広い。
ただ、誰も歩いていない。
水まきをしている男性たちがいるくらい。
歩道のタイルが剥がれていたり、で、バリを思い出した。
日本はなんでもすぐに修理をする。良いことではあるが、それだけお金がかかっている証拠であり、税金が高くなるのも当然だ。
税金を安くして欲しいなら、少々の故障などにお金をかけなくていい、と思えるように私たちが考えられるようになる必要がある。
Google検索をすると、案外近くにレストランがある。
そこを目指して行ってみると、「マーブルマウンテン」が見えてきた。
それにしても横断歩道を渡る人もいないし、バイクは信号無視をするし、信号が青でも気をつけて渡る必要がある。
マーブルマウンテン通りに入ると、バイクのクラクションが途端に増える。
おそらく、バイクに乗らないか、と言う、ライドバイクの勧誘だ。
いらない、というジェスチャーで追い払っても、今度はおばさんが止まって、「マーブルマウンテン?」と聞いてくる。
「ノー」と言うと、「じゃあなんでここにいるんだ」と怪訝そうにみている。それも女性1人で。
店はすぐに見つかった。
マーブルマウンテンに来た観光客用に、土産屋、レストランがあり、そこをのぞいてみると、地元の男性が、お世辞にもこざっぱりとしたとは言えない、薄汚れた感じで向かい合って座っていた。
とてもその中に入る勇気はない。ましてや美味しい料理を期待はできない。
危険を察知する能力だけはあるので、さっさと日が明るいうちにホテルに戻ることにした。
そこで気がついた。
私が、ダナンを気に入っているのは、あのホテルが気に入ってるからだ。
あの安全で、英語が通じて、頼み事を聞いてもらえる、快適な生活を提供してくれる場所があるからだ。バリでも同じように感じたが、私にはとてもローカルな人たちと同じ生活はできない。
外国人であること、それも力は衰えてはいるが、日本という先進国の人間であることを、嫌と言うほど実感させられた。
いろんな世界があり、いろんな生活がある。
到着後すぐに利用した、あのライドシェアのおじさんのくたびれた雰囲気は、そのままここのローカルな人たちの生活を体現していたのかもしれない。
彼らからすれば私たちは、自分たちよりずっとお金を持っている外国人であり、お金を稼ごうとすることを責められない。あのおじさんドライバーの要求通りにお金を払っていた方が良かったのかもしれない、と、ちくりと胸が痛んだ。
安全なあのホテルで、英語と笑顔と共に迎えてくれるスタッフのいるレストランに行こう。
こうなったら、このホテルを満喫しよう。
そんな決心をして、沈みかけた夕陽を浴びる安全な場所に、私は戻っていた。
続く
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