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ある男性が結婚できない理由


先日ある人が出会った男性の話を聞いて、いつかnoteに書いてみようと思っていた。

この男性は、40歳手前。
結婚したいと思っているが、未だ独身。
職業は誰もがうらやむ高収入職業。
普通だったら、とっくに結婚していてもおかしくない年齢なのに、なぜ彼が独身なのか。
誰もが思う疑問の答えは、本人は気づいていないし、その親、特に母親は全く気がついていないが、私は話を聞いていると母親の育て方に問題があるように思えた。

幼い頃からこの男性は、母親が決めたレールの上を歩いてきた。
この高収入であり、周囲からも羨まれる職業に就くことが母親によって決められていて、他の選択肢は一切排除されてきた。幼い頃から遊びたい欲も、もっと自由な子供時代を過ごしたくても、全てはその職業に就くために必要なことだけしか許可されず、他の一切の意思や欲望は否定され、抑圧された。もしかすると少々反発した時期もあったのかもしれないが、おそらく母親のほうが一枚上手だったのだろう。結局母親の言う通りに生きることを決め、人生こんなもんだ、と思って幼少期、思春期、青年期をひたすら母親の思うとおりに生きてきた。

私はこの話を聞いて、ああ幼く物心もつかない時から、母親自身が子供を自分の思うとおりに動かすことに成功したんだな、と思った。この場合の成功とはすなわち、「立派な息子さんを持って幸せね」と周囲から言われるために、世間から評価してもらうために、自分自身の理想の息子にすることだ。これは想像だが、おそらくこの家庭は父親の存在は薄く、母親が全て子供の教育を担っていたように思う。
この子育ては、完全なる「人の人生の乗っ取り」だ。
子供は完全なる母親の所有物だと思っているから起きることだが、これは何もこの母親に限ったことではなく、案外世の中に多いことだと私は思い出した。

ある高校の講演に行った際、担当の先生と打ち合わせをしていた。話がその先生のお嬢さん(当時高校生)の話になった。この父親である先生は、お嬢さんが高校を卒業した後の進路を、とうとうと語り始め、さらには結婚相手はどこで見つけ、どんな人と結婚させるのかまで話した時、私は心底驚き、怖かった。まるでこの先生にとっての理想の人生を歩ませることに、何も疑問を持たず、お嬢さんに意思があるかもしれないことなど、一切無視して「自分のために子供の人生をコントロールする親の姿」を見た。その時は、一部の例外の人だと思っていたが、その後もいろんな若者(生徒さんとして接してきた)の話を聞くにつれ、「親が子供の人生をコントロールする姿」を何度か見てきた。

では、この冒頭の男性や女の子は幸せなのだろうか。
高校の先生にはその後お会いしていないので、その結果がどうなったのかはわからない。
しかし、この男性は、年齢的にも、もしかしたら母親からも「結婚」をするべきだと思っているが未だに結婚できないのは、「自分が結婚したいのか、女性と付き合いたいのか、どうしたいのかがわからないんだ」と言っていたらしい。幼い頃から決定権を全て奪われたら、自分で物事を決めることなんてできなくなって当たり前だ。男性もその自覚があり、女性と付き合う段階まで言っても彼自身がその女性が好きなのか、嫌いなのか、付き合いたいのか付き合いたくないのか、さらに結婚するにはどうしたらいいのか、が全くわからないのだという。40歳間近になって、こうして自分に意思がないことには気づいているようだが、その原因がまさか母親の育て方によるものだとは気づいていないだろう。その職業に就いた理由さえも彼はわからず、ただ母親の言うとおりにしていればいいと思い込まされた人生を送ってきた結果、結婚ができないことに悩む男性が出来上がったらしい。

おそらく母親が勧めた人と結婚するという人生もあったはずだが、母親はおすすめの人を連れてこなかったのか、この男性が初めて母親に反抗したのかはわからないが、「結婚したくても結婚できない男性」がこの母親の子育ての末路のように思えた。

私はこの男性の話を聞いただけで、お会いしたことがないので仮説的な部分が多かったかもしれないが、人間は誰しも生まれた時から意思を持ち、人格を持った1人の人間だ。それを邪魔せず、悪いことは悪いと教えるくらいで、あとは子供自身が人生を選択していくのを見守るのが親だと私は思っているが、どうやらそうではない親が増えているようだ。
過干渉を通り越して、子供の人生を乗っ取る。これはものすごく罪なことだと思うのは、私だけだろうか。

願わくばこの男性が、乗っ取られた自分の人生を何かのきっかけで取り戻して欲しいが、その可能性は限りなくゼロに近いように思える。

自分の人生は自分のものであって、他の誰のものでもない。
たとえ親であっても、人生の主導権を誰かに渡してはいけないのだと、改めて思った話だった。


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Hiromi.U
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