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デニムと私


クローゼットの整理をしていて、「これからは、デニムと数枚のワンピースで生きていこう」と決めた。

デニム。
思えばかなり長い付き合いになる。

小学校5年生くらいから、毎日デニムで通学していた。
スカートなんてほとんど履いていない。

小学校4年生の時に、クラス全員の女子から口を聞いてもらえなくなったことと、関係しているのかもしれない。
あんな女子と同じようにスカートを履くことに、無意識に抵抗していた可能性もある。
あの時、唯一私と話し続けてくれたのは、ケンカ友達の男子たちだった。
だから男子と同じように、デニムを履き続けたのかもしれない。

デニム好きは、さらに加速する。

それは、家族で行った大型ショッピングセンター、ダイエーのワゴンに入っていた、一つのデニムとレザーのキャスケット帽子。
キャスケット帽子とは、野球帽のつばを短くして、帽子の真ん中をまあるく膨らませた帽子。
つばの部分がレザーだった。
つばの茶色のレザーには、押印のように英語が書いてあった。
なんだったか忘れたのだけど。

デニム帽子であることが気に入り、両親が見ていない隙にかぶってみると、私の頭にピッタリだった。
鏡で見ても、さまになっている。
少しづつファッションに興味を持ち始めた時だった。

「これを毎日かぶっていこう」

私服で通える小学校に、自ら好きな帽子を制服化する計画を立ち上げた。

ワゴンに入っているくらいだから、少し安かったのだろう。
母に「これ、欲しい」と言うと、「本当にかぶるの?」と聞かれ「うん、毎日かぶる」と答えた。

翌日から、本当に毎日かぶって通学した。
その頃のモノクロ写真の私は、間違いなくこのデニムキャップをかぶって写っている。
身長が高かったので、同級生より一つ飛び出た頭にデニムキャスケットがのっている。
少し斜めにカメラを見て、笑顔はなし。
この写真を見るたび、「自分らしいな」と思う。

あれから、半世紀が経った。
社会に合わせて生きる処世術も、立派に身につき、たいていのことはできるようになった。
でも、やっぱり自分の本質は何も変わっていない。

今年に入り職業を変えたことで、ようやくデニム生活に戻れるようになった。

戻ってきたデニム生活のスタートに、憧れのデニムを購入した。

「リーバイス 501」

私たちの世代はもちろん、今でも長く愛されているデニムの原点のようなデニム。
オリジナルなので、完全にストレート。
メンズサイズだったが、店頭で見つけた時懐かしくて試着した。

こんなに履きやすい?
ファストファッションでばかりデニムを買っていたが、やっぱりリーバイスは違う、と唸る。

それでも案外値段が高いので、まずは半額になっていたリーバイスのデニムシャツを購入し、その2週間後ようやく、憧れのリーバイス501を手に入れた。

おそらく501を手に入れたのは初めてだが、すでに毎日履いていたい気分で、なんなら今もそのデニムシャツとデニムを履いて、このnoteを書いている。

おそらく、デニムは私を私らしくいさせてくれるのだ。
英語が大好きで、まさにゾーンに入るかのようにハマってアメリカ留学までした私は、密かに前世はアメリカ人だと思っているので、その名残がデニム好きになって現れているのだと思う。
(単なる勝手な想像なので、見逃してください)

自分で言うのもなんだが、これがまたすごくよく似合うのだ。
ただ、注意事項は、「太れないこと」
今流行りのデニムのように、ストレッチは一切効いていないから。
いいんだ、これで。

この501を気持ちよく履くサイズをキープしようと思わせてくれるから。

お世辞も入っているだろうが、試着した時に、まだ専門学校生のアルバイトのお姉さんが言ってくれた一言が忘れられない。

「なんか、私が言うのもなんですけど、外国の女優さんみたいです!」

うん、私もそう思った。
その見事な言語化に、やられた。
この言葉は、毎日毎日思い出して私をニヤニヤさせてくれた。
だからこそ、いくら15,000円もするデニムでも、もう一度試着したい、と思い、この店に向かった。

この2週間の間に、501は数が減っていた。
やはり、人気なんだ。
私のサイズも数が少なくなっている・・・

ただ、あのお姉さんの姿はない。
アルバイトだから仕方ないか、と思って、別の人に案内され、試着室に向かった。

スッと履ける。
サイズ感は、ピッタリだ。

何度か鏡で写してみる。
スタッフの人は、別の男性を接客していて私を見る人はいない。

やっぱり、いい。

そう思った時、「あ、この間の・・・」と、あの名台詞を言ってくれたお姉さんが登場した。
「あ、覚えてくれてたんですね。今日も、あの時買ったデニムシャツ着てます」と、小学生が先生に、「ちゃんと言われたことを守ってますよ」と言わんばかりに、着ているリーバイスの薄いブルーのデニムシャツを見せる。

「あ、嬉しいです」
「もう、毎日のように着てますよ」とさらに私はアピールする。
完全に、売り手と買い手の立場が逆転している。

あの名台詞の再度の登場を、淡く期待していたが、お姉さんはもう忘れているのか、再びその口から出てくることはなかった。
それでも、私は購入を決めた。

いいんだ、一度そのセリフを言ってくれたことで、私は半世紀ぶりのデニム生活に戻ることを決められたのだから。
私が私らしくいられるデニムに戻ってこれたから。

今私には、毎日のようにこのリーバイス501を履き、これから10年、20年と履き続けている自分が見えている。


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Hiromi  U.
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