フランス人の衛生観念の変化
「ティッシュは一回で使い捨てること」
職場のリモート衛生講座での一言。
え?常識じゃない?と思ったそこのあなた、フランス人は、鼻をかんだティッシュを何度も使うんですよっ!ある日、風邪をひいて鼻をズルズルさせていた同僚が、おもむろにポケットからハダカのティッシュを取り出し、鼻をかんだ後、またポケットに戻しました。会議中、注目していると、何度も同じティッシュ使っているじゃないですか…!それ以降、他の人も同じようにしていることに気が付き、これがこの国の標準なのであると、理解しました。
最初みたときは、衝撃を受けつつも、実は納得していました。フランスのティッシュは厚みがあり、たしかに一回で捨てるのはもったいないのです。クオリティが高いというわけでなく、分厚いのです。日本のティッシュ比べて、質感、肌触りは硬めです。見出し画像の左側の小さい直方体たちは、フランスのポケットティッシュです。「厚み4枚重ね、9枚入り」とあります。日本のダブルティッシュの更に倍の厚みというわけです。
そして、今となっては、私もすっかりそれに慣れてしまい、ティッシュは何度も使うように…。これが、意外と便利。日本に帰った時、一回鼻をかんだだけで、ティッシュがヨレヨレになり、一回で捨てるものだったと思い出したのでした。少し言い訳させていただくと、フランス人は空気が乾燥しているので、鼻をかんだティッシュはあっという間に乾くので、あまり気にならないのです。
以前、職場の女の子達と食堂でお昼ごはんを食べているとき、トイレ中に携帯電話はどうしているか、という話になりました。私は、職場では細々したものはまとめて無印のサコッシュに入れて移動しています。同僚たちは、アゴで挟む、脇に挟む、など答えていく中、ひとりが「私は床に置いてるの。それなら落っことして壊すリスクないじゃない?」
これにはさすがに、他のフランス人の同僚たちも「ちょっと、トイレの床に直置きはないんじゃない?」と、ひき気味の反応で、少し安心しました。たしかに、公共のトイレでリュックサックを、床に置いて用を足している人たまにみます。
トイレといえば、小学校のころ、上履きを履いたまま椅子の上にのって遊んでいた子に、先生が注意した言葉が今でも忘れられません。
「上履きで椅子の上にのるとは、うんちを食べるようなものだ」
トイレにいったことがない人以外は、上履きにはトイレのうんちの菌が付いているので、その上履きで椅子の上にのることで、それが椅子の上に付き、そこに座ったおしりに付いて、無意識におしりを触った手で、給食と一緒に食べちゃう、というのです。風が吹けば桶屋が儲かる的な。そのときのインパクトたるや、今でも私にはその恐怖感が染み付いてしまっています。多かれ少なかれ、日本人は子どもの頃からこういう教育を受けてきていますよね。
ちょっと、大げさかな、と思うこともあったけれど、先日コンテイジョンという映画をみたら、あながち間違っていないかもと。科学的な考証もきちんとされた映画だそうです。2011年製作の映画とは思えないほど、今の状況を表しています。まだの方はぜひ。
さて、私の職場は、衛生講座を受講完了するまでは立ち入り禁止。衛生教育といっても、日本人の私にしたら常識的なことばかりでしょう、と高をくくっていました。
いやー、本気を出したフランス人は凄いです。社内は、支給される眼鏡とマスクの着用必須。マスクは車通勤の人は午前と午後用に2枚、公共交通機関利用の人は午前、午後、退社時、翌日の出社時用の計4枚が支給されるそうです。昼食時に外した後に新しいものに交換。もちろん、マスクの取り外しをする際は、耳のゴムの部分だけもって、マスク本体には触らないようにという詳細な指示。
他にも、使用できる会議室の数は2分の1に、会議室の定員も2分の1に、会議の前後は30分換気する等。たくさんの人が集まりそうな場所にはトラテープが張り巡らされている光景が、リモート教育の画面を通じて見えました。感染者が出た後の行動のしかたなど、キッチリ丸一時間の教育を受けたのでした。
新しいルールを作るのがうまいのフランス人。でも守るのはどうかなー?自己解釈も得意な人達なので、この教育内容がきちんと実践されるかどうかをみるのが楽しみです。今まで、衛生観念が違う国で、心のスイッチを切ってやってきましたが、もしかしたら、このまま定着しないかしらと淡い期待。
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