【鏡の中の物理学(朝永振一郎)】うえこーの書評#01
ノーベル物理学賞を受賞したことで有名な朝永振一郎さんの著作を読みました.この本には「鏡のなかの物理学」,「素粒子は粒子であるか」「光子の裁判ーある日の夢ー」3編の短編が収録されています.以下ではそれぞれの短編の感想を述べていきます.
鏡のなかの物理学
鏡という身近なものから話が始まり,最終的にC対称,P対称,T対称にまで話が広がっています.ある程度素粒子理論に慣れていれば,すんなり頭に入りますが,図による説明がないので前提知識がないと少し読みづらいだろうと思います.また,文中の「科学に対する第三の意味付け」が原子爆弾などの物理学の負の側面も見えてきた当時のことを思えば,大事な考えであったのではないでしょうか.
素粒子は粒子であるか
素粒子を一般的な粒子との比較からその違いを明らかにし,最終的に状態ベクトルについて説明されています.途中の「電光ニュース」を用いた説明がわかりやすく,うまい例だと思いました.
光子の裁判ーある日の夢ー
波乃光子さんが裁判にかけられ,古典論の知識しかない検察官と量子論発展の立役者(誰かは最後にわかります)である弁護人とのやりとりで量子論を説明していくという構成がユニークでとても面白く読めました.最後の締めも完璧です.
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