ウェブで学ぶ(梅田望夫/飯吉透)【書評#130】

 オープンエデュケーションによって教育がどう変わっていくかについて述べた本.
オープンエデュケーションとはこの本では以下のように説明されている.

 オープンエデュケーションとは,インターネットが普及しつつある世界で現在進行中の,「学びと教え」を巡る素晴らしいムーブメントです.素晴らしい点は山ほどあるのですが,中でも「インターネットにアクセスできる人であれば,誰もがウェブによってもたらされた新たな学びや教えの可能性の恩恵を得られ,さらに互助的に貢献することもできる」という点が,何よりも希望に満ちています.「自分のおかれた環境で,利用できるものは何でも使って学んだり教えたりする」.これが,オープンエデュケーションの極意です. p.11-12

 オープンエデュケーションは学生だけでなく,起業家にとっても有用であるようだ.

起業家タイプの人は,人生のある時期に,たいへんな集中力と気迫で,新しい知識を独学で習得するものなのだということでした.研究者が専門を極めていく中で創造性を発揮するのと違って,起業家はその時代の要請を敏感に感じ取って事業機会をつかみ取ります.変化こそが機会を生むわけですから,起業に必要な知識を,起業家が起業段階ですべて持ち合わせている場合のほうが稀です. 「過去に自分が歩んできた道のりの中でたまたま学ぶチャンスのなかった知識の欠如によって未来の可能性が縛られるのはたまらない」と思う気持ちが起業家には強く,独学によって自ら道を切り開きます.起業家精神と独学とは不可分なものなのだと学びました. p.20

 当時ウェブ2.0が謳われていた時代,ウェブに対する期待はとても大きかった.

 ウェブが「人生を切り開いていくための強力な道具」となるための第一の柱が「ウェブで学ぶ」可能性.第二の柱が「師」や「同志」と出会えるような「志向性の共同体」の可能性.そして第三の柱が「職を得る,生計を立てる」道筋へとつながる可能性. これら三つの柱は,「自助の精神」に溢れる個人にとっての「人生のインフラ」とでも呼ぶべきものだと思います. リアルな世界での様々な可能性に,これら三つの柱からなるウェブ上の「人生のインフラ」が加われば,距離という物理的な制約を超えグローバルなチャンスに巡り合う機会も得られ,人生の可能性を増幅する役割を果たすはずです.だからウェブは「人生を切り開いていくための強力な道具」たり得る.それが「ウェブで学ぶ」ことをめぐる私の基本的なウェブ観です. p.29-30

 実際上記の効果はあっただろうが,一方で,人は自分が見たい情報しかないコミュニティに閉じこもり分断が起こってしまった,今後のウェブ3.0でそのような問題がどう解決されるかに注目だ,

 オープンエデュケーションの勃興は他のイノベーションと同様,アメリカで起こった.このような世界を良くするという大きな目標に向けて一気にイノベーションが進むところは驚くべきものがある.

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