日本サウナ史(草彅洋平)【書評#118】
本の名前にもあるとおり、日本のサウナの歴史を紐解いた本だ。正直、とてもニッチな内容だ。そして、あまりにもニッチな内容ゆえに今まで日本のサウナの歴史をちゃんとまとめた研究はほとんどなく、この本のおかげで明らかになった事実が多い。今後日本のサウナの歴史を語るうえで外せない本になるだろう。(ただ、日本のサウナの歴史を語ることは今後の人生であるのだろうか。)
元々サウナは、寒冷地であるフィンランドで暖をとるためにできた施設だ。一見、フィンランドは日本から遠く、文化も大きく異なり、日本とは関わりが薄いように思える。そんなフィンランドの風習が日本に広まった大きなきっかけはオリンピックだった。
フィンランドは1904年の第4回夏季オリンピックから参加し始めたが、多くの競技でメダルを獲得した。特に、陸上選手の活躍は凄まじいものだったという。
一方、日本は当時、確立した練習もなく、政府からの援助もなかった。オリンピックに参加したのは1912年からだが、当初は散々な結果だったという。そこで日本の選手がフィンランドの練習を取り入れようとしたのだが、そこで練習メニューの一つとしてサウナが紹介された。
その後、日本選手はめきめき力をつけメダルを獲得する選手が出てくる。実際、サウナがどこまで影響を与えたかはわからないが、何らかの効果があるのだろう。
以上のように、サウナを最初に堪能したのはオリンピック選手だった。その後、一般的に広まるのは1951年に「東京温泉」が「トルコ風呂」を開始したのが初めだとされている。ここで面白いのが、「トルコ風呂」がいわゆる「フィンランド式サウナ」ではなく、風俗店に近いものだった。本当の「フィンランド式サウナ」を知る者は「トルコ風呂」が「サウナ」のイメージを悪くするため分けて考えるように世間に訴えなければならなかった。
この本からは、著者の驚異的な情熱を感じた。それは、文中の大量の資料の引用から伺える。また、装飾にもお金をかけていて、箱付きになっている。
今後、私は、オリンピックに思いを馳せつつ、日本でサウナがどのように普及していったかを想像しながらサウナに入ることになるだろう。