「人に迷惑をかけるな」と言っては行けない(坪田信貴)【書評#144】

 子どもにどのような声かけをするかは、その後のその子の人生に大きな影響を与える。多くの大人は子どもに幸せになってほしいと願っている。しかし、自分の声かけ、子どもへの態度が子どもの幸せを無自覚に阻害してしまう場合がある。

 この本はできるだけその阻害を避けるために、書かれた一冊だ。どのような声かけは避けるべきか、その代わりどのような声かけをしてあげたら良いか。現在絶賛子育て中の方は必見だ。

 一方、子育てをしていない人も読む価値はある。この声かけのメソッドを使えば、例えば、上司が部下により的確に指示ができるようになるだろう。

 親は子どもが生まれた瞬間から、その子に対して様々な制限や禁止を与えています。これ自体は普通のことです。社会の中で生きていくために、幸せに過ごすために、必要なルールや価値観を教えるわけです。これを「拮抗禁止令」あるいは「禁止令」と言います。(...) 子どもが自分で判断できるようになる前に植えつけられるので、その子の人格や人生そのものに大きな影響を与えます。 乳幼児期に親から無言のうちに与える「拮抗禁止令」の中で、特に厄介なものとされるのが次に挙げる5つです。アメリカの臨床心理学者テービー・ケーラー氏は、これらを「ドライバー」と呼びました。行動を駆り立てるもの、追い立てるものという意味です。これらのドライバーは、特に強迫的に「こうしなければならない」と感じやすい代表的なメッセージと考えればよいでしょう。 拮抗禁止令1.完全、完璧であれ2.他人を喜ばせ、満足させよ3.努力せよ4.強くなれ5.急げ  拮抗禁止令として挙げられている言葉自体は、子どもがこれから先、社会に出て困らないように、幸せに生きていけるように必要なものとして親が伝えているメッセージです。 しかし、過度になると子どもを苦しめることになるのがおわかりでしょう。 また、拮抗禁止令は、これから紹介する「13の禁止令」と結びつくと子どもの思考や行動をさらに縛ることになります。 p.35-36

13の禁止令1「存在するな」2「何もするな」3「成長するな」4「感じるな」5「お前であるな」6「子どもであるな」7「近寄るな」8「考えるな」9「成功するな」10「自分のことでほしがるな」11「健康であってはいけない」12「重要な人になってはいけない」13「所属してはいけない」  いかがでしょうか。言葉だけではなく「反応」もメッセージになります。ドキッとするものもあったのではないでしょうか。実際、これらの禁止令にまったく関係がないと言える人はなかなかいないと思います。いけないと思いつつも、つい言ってしまうという場合もあれば、よかれと思って言っていることもあるでしょう。 いずれにしても、知らず知らずに子どもを縛り、子どもの自己肯定感を下げたり自分で判断・決断ができないようにしているのです。 p.38-42

時代はティーチングからコーチングへ 時代が変化していく中で、教育のやり方を変える必要があるとすれば、それは「ティーチングからコーチングへ」ということだと思います。 ティーチングとはいわゆる「教える」ことですね。知識や経験の豊富な人が、教えることを通じ、知識の習得と成長を促します。これまでは「教育」と言えば、こちらのイメージでした。 一方、コーチングとは、対話を通じて本人に気づきを与え、選ばせ、目標にたどり着くための支援をすることです。 (...) なぜティーチングからコーチングへ変わる必要があるのかと言えば、とても単純な理由です。「もはや誰もティーチできないから」です。 p58-59

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