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【場の量子論(坂本眞人)】うえこーの書評#52

今までも数学や物理の専門書を読んできたが,一番衝撃的だった本.

この本は自分でも自習できるように作られている.そして自習をするうえで大事なのが,文章中の式変形が追えるか,そして問題がわからなかったとき解答はあるかということだろう.

まず,この本の式変形は追いやすい.式変形には毎回どの部分を変形したかがわかりやすく書かれている.前に出てきた式変形と同じやり方だったとしてもちゃんと書いている.これがなければ最後まで読み切れた自信はない.

また,全ての問題に解答がつき,PDFで裳華房のHPから閲覧ができるようになっている.しかも,それには本の補足もついておりそのページ数は現在263ページというそれだけで一冊の本にできるほどのボリュームがある.解答も略解ではなく,それぞれの式変形がどのように出るかがとてもわかりやすい.

また,著者自身「物理の式は覚えるのではなく,本質をしっかり理解する」ということに力をおいている.例えば3.8章「マクスウェル方程式を覚える必要はあるか?」では

相対論的不変性とゲージ不変性の重要性を知っていれば,マクスウェル方程式を覚える必要はないのである.これはうれしいニュースだ.不変性の原理の勝利でもある.(p.84)

と書かれている.実際に著者の量子力学の授業でも式を表面的に覚えるのではなく,本質的に理解することの重要性をおっしゃっていた.(ただ,式を本質的に理解することがとても難しい所業ではあるが…)

場の量子論をはじめて勉強する場合,この本一択だと思う.他の本は読んだことがないので比較はできないが,そう思わせてくれるほどこの本はわかりやすい.また,将来物理の専門書の作成に関わることがあればこの本を見本にしたい.物理の専門書としてこれほど読者の気持ちに寄り添い,勉強を手助けしてくれる本を私は知らない.

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