辰巳ヨシヒロ「劇画大学」(ヒロ書房)が入手できない理由と中身について
「劇画」の名付け親である辰巳ヨシヒロ。
自伝的漫画「劇画漂流」を読んで辰巳ヨシヒロの人柄、その人生に興味を持ち、著作を追っている人も多いでしょう。
「劇画漂流」は日本のみならず、海外からも評価された作品です。
2005年 アングレーム国際漫画祭「特別賞」
2006年 サンディエゴ・コミック・コンベンション「特別賞」
2006年 「タイム誌」ベストコミックス第2位
2009年 手塚治虫文化賞「マンガ大賞」(朝日新聞社)
2010年 米国アイズナー賞「最優秀アジア作品賞」「最優秀実話作品賞」
2010年 「THE BEST MANGA 2010 このマンガを読め」2位
(同年の1位は「この世界の片隅に」こうの史代)
2012年 アングレーム国際漫画祭「世界へのまなざし賞」(フランス語版が受賞)
アングレーム国際漫画祭で受賞歴のある日本漫画は、浦沢直樹「20世紀少年」「PLUTO」、中沢啓治「はだしのゲン」、水木しげる「のんのんばあとオレ」「総員玉砕せよ!」などがあります。
漫画家としての受賞は、つげ義春、鳥山明、大友克洋といった世界的に評価されている漫画家です。
これだけの受賞歴のある「劇画漂流」ですが、出版社で既に在庫がない状況です(Amazonで中古しか流通していません)。
単行本は青林工藝社から2008年に、2013年には講談社から文庫化されています。
出版社が重版して流通させない理由は、売れ行きにあると考えられます。
出版関係者に話を聞くと、「劇画漂流」は単行本と文庫を合わせて10,000部も売れていないといいます。
辰巳ヨシヒロの人生を文章で綴った「劇画暮らし」の単行本は2010年に本の雑誌社から、2014年にはKADOKAWAから文庫化されています。
「劇画暮らし」の角川文庫版は、今でもしっかりと流通しています。
さて、「劇画大学」です。
ヒロ書房という辰巳ヨシヒロさんが立ち上げた出版社から1968年(昭和43)1月に発売されました。
現在、Amazonのマーケットプレイスでも「日本の古本屋」でも「まんだらけ」にも在庫がありません。
google booksの検索対象にもなっていません。
つまり、本の中身を知ることができないのです。
辰巳ヨシヒロさんが「アックス Vol.61」での中野晴行さんからのインタビューで、「劇画大学」について語っています。
辰巳「~『劇画大学』なんて九割ぐらい返品でした。『こんなの貸本屋に流したってしょうがない』って」
中野「この頃は刷り部数は。」
辰巳「二千・・・二、三百ですよね。」
通常、出版社は返品になって売れなくなった本は断裁処分します。
つまり、書店や貸本屋に並んだ「劇画大学」は200~300冊ほどなのです。
「アックス Vol.61」には「劇画大学」の目次が掲載されています。
第1章の「劇画の歩み」では、辰巳ヨシヒロさん自身の歴史が語られていそうです。
第2章の「劇画家のプロフィール」では、兄の桜井昌一や、盟友のさいとう・たかを、松本正彦について書かれているでしょう。
辰巳ヨシヒロご本人は「若気の至りで書いたものですからもう出しません」とおっしゃっています。
ご遺族が出版することもないでしょう。
いつかは手に入れたいという思いが強くなりました。
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