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板書研究のポイント No2

本シリーズでは、いつも後回しにされてしまう板書研究について述べてまいります。本号では、その第2弾「教材の特性をいかした○○型板書」についてです。
*ついでに第1弾も一読いただけると幸いです↓

教材の特性を活かした○○型板書 

1 相対主義型板書
相対主義の考え方とは・・・
「道徳的価値は、それを認識する側の観点によって多様な姿を表す」という考え方です。
*詳細は「教材を読み解く思考法(2022/2/19)」をご参照下さい。

簡単に説明すると、教材に描かれている道徳的価値の反対の論もあるということです。
例えば・・・
問題が解けなくて困っているクラスメイトに、声をかけてあげることは親切な行為といえるでしょう。
一方で、「自分で問題を解くことが大事」だと考えて、敢えて声を掛けずに見守ることも親切な行為ともいえるのです。
この考え方が見えるように黒板に反映したのが

相対主義型板書です。

一つの教材を使ってさらに詳しく説明します。

教材:教育出版 5年「図書館はだれのもの」
【主なあらすじ】
市立図書館でのできごとを題材にしている。
5年生4人で、学校からの課題を図書館で調べ学習をしていると、探していた資料が見つかる。ついつい興奮してしまい話声が大きくなってしまう。
そこに大学生のお兄さんが来て「静かにしてくれないかな」と注意をする。
それを聞いた子供たちは、その場は「すみませんでした」と静かにするが、帰り道で、「私たちだって遊んでいるわけじゃない」や「図書館は私たちにも使う権利がある」などと愚痴をいい合いながら帰宅する。

教材を読み終えて、次のようなやり取りを行います。

教師:4人の小学生と大学生は、どっちが正しいと思いますか。
子ども:もちろん大学生(大多数)
A児:そうとも言えない。だって小学生4人にも使う権利があるから、自由に使ってもいいと思う。
A児:しかも、遊んでいたわけではない。
B児:でも、みんなに迷惑を掛けていると思う。
C児:そう、きまりを守っていない。
教師:きまりって何のためにあるの。
子ども:みんなが過ごしやすくするためにある。
A児:ということは、図書館の「きまり」がおかしい、きまりはみんなが過ごしやすくするためにあると思う。だけど、4人の権利が守られていない。
D児:きまりは「みんな」が過ごしやすくするためにがあるわけではなく、その目的に合った人の権利を守るためのものだと思う。
教師:そうか、そう考えると4人の考え方は間違っているね。
*D児の発言で、きまりの意義の考え方が深まっていった。

この授業を次のように、相対主義型板書を行った。

少し説明を加えます。

左側がA児の考え方を受けての板書です。
また、右がB児、C児の考え方を板書したものです。
このように、「きまり」について一面的に見るのではなく、敢えて反対の立場から見やすいように板書することが大切です。
そうすることで、D児のような新たな考え方が生まれてくるのだと思います。

以上、相対主義型板書は敢えて反対の論を図式化しながら示していくことがポイントです。
そうすることで、対立する二つの価値を超えるような、価値の創造が生まれるのだと思います。

次回は、教材の特性に合わせた○○型板書の2つ目「ストーリー型板書」について述べてまいります。
2週間後の7月24日(日)に投稿いたします。
よろしくお願いします。

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