男は黙って〇〇ビールの時代では無いのです
今回は自戒も込めて書きたいと思います。
二昔、三昔前のCMで「男は黙って○○ビール(大手ビールメーカーの社名)」というフレーズがあったそうです。「ビールと言えば、文句なしに〇〇ブランド」という絶対的付加価値を訴求した、シンプルな宣伝文句に凄みを感じます。その○○社の就活の最終面接で学生が、面接中終始だんまりを決め込み、面接官が半ば呆れて「何か言うことはないのか」との問いに前述のフレーズを口に出し、面接官の快哉と内定を勝ち取ったという都市伝説まであります。
とかく昔から「男は余分なことは話さない。つらいことがあっても黙って我慢する」という考えは根強く浸透しております。大相撲の勝利インタビューで勝ち名乗りをあげた力士の受け答えが必要最低限の範囲で寡黙に応対するのをよく見かけます。日本の伝統的スポーツですから、余計な感情は見せない、饒舌を美徳としない雰囲気が感じられるシーンです。(それでも最近のお相撲さんは、微笑したり、涙を見せたりと少し感情豊かになってきました)
こういった「男は余分なおしゃべりをしない」や思いは「以心伝心」だという昭和男性に多い思考回路は、相続の相談を受けている際に、大きな壁になっていると痛感いたします。
昭和世代の男性特有の「寡黙であること、感情を表に出さない」ことは、旧来型の日本の会社組織では、良しとされていたのでしょうが、現代家族の中においては、かえってコミュニケーション不全で、むしろ悪い方に作用している気がいたします。
父親が寡黙であったがゆえに、子供たちとの意思疎通がうまくいかず、彼等の事がよくわからない。子供達は仲が良いものと勝手に思い込んでいるなどなど。
子供さんが多数おり、遺産分割協議が大変な為、遺言の作成を提案しても、このお父さんには響かないと言うケースもしばしば。家族を思い計ると言う思考回路がうまく繋がらないため、相談自体が空転するケースも多いのです。
男は人前で涙を見せないなどの美学も良いのですが、時には家族に、素朴な感情を吐露するのも大いに結構だと思います。お父さんも生身の人間なのです。普段から家族への想いを円滑にする心つもりも大切だと思います。
会社を退職したら、もとい現役の時からご自身のご家族、ご親族に対する想像力を備えることが、素敵な終活の第一歩となる気がいたします。