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伊勢神宮御料酒 献納100周年

「白鷹」は伊勢神宮へ御料酒を納めて100周年を迎えました。

清酒「白鷹」

 私が勤めている「白鷹」の醸造元ですが、酒蔵の規模や製造量のわりに皆様に認知して頂き、手前味噌ですがそれなりに知名度が有ります。
 東京ですと老舗居酒屋や酒通の通う酒場で取扱い頂いている事も要因の一つですが、やはり伊勢神宮の祭りで使用される御料酒(ごりょうしゅ)を全国で唯一醸造し献納している事が世代関係なく広く認知されている大きな要因かなと感じます。
 イベントなどでも「お伊勢さん行ったよ。」などお声掛け頂き、三重の酒蔵と勘違いされる方も多々いらっしゃいます。

年末に神宮に奉納される積樽


御料酒(ごりょうしゅ)とは

 神宮御料酒とは伊勢神宮の祭りで使用されるお酒のみを指します。「御神酒(おみき)」と勘違いされる方がいらっしゃいますが、御神酒は一般名称なので御料酒とは違います。(後、料理酒でも無いです。)
 「御料(ごりょう)」とは皇室が使用するものに用いられ、御料車・御料牧場・御料地などが有名です。
 伊勢神宮は皇室の祖先、天照大御神を祀っており、そこで使用されるお酒なので「御料酒」となります。

神宮から寄贈された石碑

 営業をしていると時折、「御料酒が欲しい」、「御料酒が飲みたい」と言われることが有りますが、御料酒はそれ専用に醸されている為、一切世間に出る事は有りません。本蔵内にある御料酒庫で厳正に管理され神宮へ献納されます。
 御料酒の出来栄えを唎き酒するのも蔵元(社長)をはじめとした一部の社員のみで、私も飲んだ事が有りません。

本蔵の御料酒庫


献納100周年

 そんな「御料酒」ですが、大正13年(1924年)より献納し始め、今年で100周年を迎えました。
 大正13年に「白鷹」が御料酒に選ばれた経緯については明記した文献などは無く、
・伊勢神宮に勤めていた神官が広田神社の宮司として来られた際に、当時の白鷹の蔵元と親交があり選ばれた。
・大正天皇の御大典の儀の際に選りすぐられた日本酒が並び、大正天皇がその中の一つ「白鷹」を大変気に入った。
と言った口伝が言い伝えられているだけです。
 歴史を紐解くのも興味が沸きますが、謎は謎のままにしておくのもミステリアスで良いかなと、個人的には私は思います。
 100年と言う節目、色々と取り組みを行いますので白鷹HPを是非チェックしてください。


100年の歴史

 大正13年から今日至る100年、歴史を辿っても色々な出来事があり、社内でも逸話が多数語り継がれ、
・世界大戦・太平洋戦争時も欠かす事無く献納し、戦時中はお酒は貴重品でしたので盗まれぬよう気を張り、伊勢神宮まで運ぶまでも一苦労だったという。
・御料酒は神聖なものなので電車で運ぶ際も一切床には置かず、蔵の者がずっと担いでいた。
という逸話が有ります。

 また、阪神淡路大震災の時も、「白鷹」は兵庫県の阪神間に所在する為、甚大な被害が有りました。当時を知る諸先輩から「酒造りがままならない中、神宮から献納に関して寛容な言葉を頂いたが、御料酒の醸造・献納を最優先にして切らす事無く献納し続けた。」と聞かされました。
 現在においても「御料酒」は社員が定期的に必要数を社用車で献納に行っています。

当時は樽で運んでいました。

これからの100年

 「桃李不言下自成蹊」初代の座右の銘であり、四代目が社訓した言葉です。「桃やスモモの下には自ずと人が集まり、道が出来る。」転じて、「品質の高いものを誠実に造り続けていれば自然と白鷹を求めて頂ける。」という創業者からの意志が今日まで受け継がれています。
 私自身も、伝統を重んじながら次の100年へと意志を受け継ぎ、「神宮御料酒」も粛々と誠実に醸造・献納していく一端を担えたら、と日々邁進しています。


式年遷宮に向けて

 20年に⼀度、伊勢神宮の正殿を始めとする殿舎と御装束神宝を新たに造り替え、⼤御神に新宮へお遷りされる祭の「式年遷宮」。
 平成25年(2013年)10月に「遷御」が執り行われた「第六十二回式年遷宮」が終わり、次の「第六十三回式年遷宮」の皮切りとして、来年5月に「山口祭」が予定されています。
 先日も、天皇陛下の許可である「御聴許(ごちょうきょ)」が伊勢神宮に伝えられ、伊勢神宮から2033年の第六十三回式年遷宮に向け、準備を始めると発表が有りました。
 9年に渡り幾つもの祭りと行事が行われますので是非注目していてください。


最後まで読んで頂きありがとうございました。


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