ハッピーアメリカンドッグ

「ハッピーアイスクリームって知ってる?」
「知ってるよ、同じタイミングで同じ言葉喋ったら肩叩いて言うヤツな」
「そうそう。あれさあ、遅れた方は早かった方にアイスクリームおごらなきゃいけないってルールだけど、おごった試しもおごられた試しもないよね」
「じゃあ今から俺たち二人でハッピーアイスクリームやろう。絶対おごらなきゃいけないルールで。でも冬場だとアイスクリームは寒くてイヤだから別の物にしよう」
「いいね、何にする?」
「季節関係なくおいしくて、コンビニとかで簡単に買える、お互いの好物だなー。アメリカンドッグなんてどう?」
「最高じゃん、ハッピーアメリカンドッグ」
こうして俺と彼女二人だけのゲームは始まった。ちょっとどんくさい彼女はいつも俺に負けた。その度に俺はアメリカンドッグをおごってもらった。
次の年の冬に、俺たちは別れることになった。
「今までありがとな」
「今までありがとね」
「あ、ハッピーアメリカンドッグ」
俺は彼女に初めて負けた。二人分のアメリカンドッグを買って、二人で食べた。
「なに泣いてんの」
彼女の言葉に俺は、マスタードが辛いせいだと嘘をついた。

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