国と製薬会社の契約はどうなっているんだ?
2022年11月4日に開催された、「子どもコロナプラットフォーム」が開催したオンラインセミナー「コロナワクチンについてわかってきた事実、世の中の流れを変えていく勉強会」の中で、南出賢一泉大津市長から次の問題提起がありました。
「国と製薬会社の契約はどうなっているんだ?」
南出氏は、製薬会社が健康被害に関して一切免責であることを示唆し、「これだけ時間が経って、これだけいろいろな問題が起こってきて、本当に大丈夫なのか。」「来年に向けてワクチンの確保の話が出ているが、安全性も中長期のようなものも分からないものに対して、また国は製薬会社に損害賠償を求めないのか。政治は国民を見ているのか、製薬会社を見ているのか。」という問題を提起しました。(動画138分~)
本記事では、今までに海外で明らかになった国と製薬会社のコロナワクチンに関する契約の条件について、NPO団体Public Citizenの調査資料(2021年10月)を中心にまとめます。一言で書くと、製薬会社はワクチンによって生じた有害事象やその他の自身の過失からすべて免責され、その責任は各国政府が負うという内容になっています。
製薬会社と政府との関係を国民に知らせない
ファイザー社とブラジル政府の契約条項の事例です。契約により、同社の事前の書面での許可なしに、ブラジル政府はファイザー社との関係に関する本契約の存在、対象または条項について公示を禁止されています。つまり、国民は契約内容を知ることができないということです。
同様な条項はEUや米国政府との契約中にもありますが、これらの国との契約では本条項は政府側だけでなく両者に適用されています。
厳しい供給のコントロール
これもファイザー社とブラジル政府の契約条項の事例です。次の条項によりファイザー社が同国への供給を厳しくコントロールしています。
同社の許可なしに他国から同社のワクチンの寄付の受領や購入の禁止
同社の許可なしに他国への同社のワクチンの寄付、販売、配布の禁止
同社の都合による供給遅延が発生したときは、同社はペナルティーを支払わない
契約違反の場合は、供給契約を直ちに終結し、ペナルティーとして契約済本数のワクチンの対価を支払う
一度購入した製品は所有権が移転され、通常であれば再販や贈与なども可能であるはずですが、ワクチンに関しては契約により制約されています。
知的財産権侵害の責任は各国政府が負う
少なくとも4カ国で、ファイザー社は、ワクチンに関する自身の知的財産権侵害による訴訟や補償請求などから同社に損害を与えないように購入国に要求する条項が入れられています。たとえば、第3者の製薬会社がファイザーを特許侵害で訴え、認められたとき、ファイザーはそのペナルティーや損害請求の支払いを免れるように購入国政府がしなければいけないということです。
そして、ファイザー社は第三者の知的財産権侵害をしていないことを保証していません。買い手としては、本来であれば自身の責任外であるファイザー社による知的財産権侵害の責任を負わされる可能性があるのであれば、リスクが高くて買えないのではないでしょうか。
紛争解決は裁判所ではなく、民間の仲裁人により秘密裏に
英国との契約では、ファイザー社との契約上の紛争が生じた場合、国際商工会議所(International Chanber of Commerce)の仲裁ルールに則り、3人の民間仲裁人により秘密裏に行われるという条項があります。そして、その仲裁の存在、内容、関連資料はすべて秘密であり、公示できません。
ブラジル、チリ、コロンビア、ドミニカ共和国、ペルー、アルバニア(案)との契約でも同様な条項があり、かつ国際商工会議所による仲裁ルールはニューヨーク州法に準拠して行われるということです。
仲裁の存在そのものを公示することを禁止されているため、国民は仲裁について知る機会がありません。
国家主権免除放棄と国家資産押収の可能性
ファイザー社とブラジル、チリ、コロンビア、ドミニカ共和国、ペルー、アルバニア(案)の契約には国家主権免責放棄条項が組み込まれています。国家主権免責とは、国家を他国の権力作用に服させないための主権免除の原則により、民間当事者が原告となり、国家を被告として、当該の国家以外の国の裁判所に訴訟を起こすことを防ぐ原則です。
ファイザーの契約はこの国家主権免責を明示的かつ取消不能な形で放棄することを購入国に対して要求しています。つまり、ファイザーはワクチン購入国を相手取って訴訟を起こすことができるということです。
さらに、仲裁判断の結果生じたファイザーに対する支払いに国家が応じない場合、ファイザーは国家の資産(たとえば、米国の場合、外国の銀行口座、外国の投資、航空会社や石油会社などの国有企業の資産なども含まれる)を使用できるという条項が契約に入っています。
ファイザーに多くの権限
契約は、ファイザーが権限を有し、契約で定められた以外の事項も決定できるようになっています。たとえば、ブラジル、コロンビア、アルバニア(案)との契約では、供給に遅延が起こった場合は、ファイザーが自身の裁量で追加供給のスケジュールを決定し、購入国はいかなる改定にも同意したと見なされます。
南アフリカ共和国との交渉では、ファイザーは補償義務を果たすための追加条件や保証を決定するファイザーのみによる裁量権を要求しましたが、同国はこれをリスクが大きすぎるとみなし、本条項に同意しませんでした。
おわりに
以上が、Public Citizenの2021年10月の調査資料の簡潔なまとめでした。これ以外にも情報源はあるかもしれませんが、本質は、ファイザー社は全く責任を負わず、購入国がすべてのリスクと責任を負うということになります。それは、国家資産差し押さえなどのリスクも含みます。
製薬会社は政府にとっては一つの供給業者、サプライヤーのはずです。しかし、どう見てもサプライヤーの方が圧倒的に有利な条件でワクチンの購入が行われています。これは驚きではありますが、グローバル企業と各国政府の関係の現実を如実に表しています。どうしてグローバル企業が政府を超えうる巨大な権力を持っているかについてはまた別の機会に書きたいと思います。
日本の契約条件がどうなっているかは情報がありません。一点気になることは、2020年12月9日に公布された「予防接種法及び検疫法の一部を改正する法律案」には、「損失補償契約」という条項が新規に追加されており、上記のファイザー社の要求を反映したような内容となっていることです。
日本でも、製薬会社との契約内容の公表が待たれます。
最後に、欧州議会にてルーマニア出身のChristian Terhes議員が製薬会社との契約に関しての透明性の欠如を問題提起し、重要な質問を投げかける6分の動画をご紹介したいと思います。(2022年10月28日)
最後までお読みいただきありがとうございました。
参考資料
Public Citizen "Pfizer's Power" (2021年10月19日) https://www.citizen.org/article/pfizers-power/#_ftn38
アルバニア国に対するファイザー社の供給契約案(2021年6月1日版)
https://s3.documentcloud.org/documents/20616251/albanian-pfizer-covid-19-vaccine-contract.pdf
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