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リーダー層への研修で業務に直結したDX推進をめざす|山梨県のDX推進グループの取組と人材育成方針

山梨県では2021年に庁内のDX推進組織が発足して以来、Udemy Business(以下、Udemy)を活用した人材育成に取り組んでいます。

Udemyをはじめとするデジタル技術学習が庁内に与えた変化や、育成したいDX人材像、今後の施策についてDX推進グループの進藤氏に伺いました。

DXを通して県民の豊かさを実現したい

山梨県は2019年12月に策定した総合計画において、「県民一人ひとりが豊かさを実感できるやまなし」を基本理念に掲げ、様々な施策に取り組んできました。

人口が減少する中でも豊かさを実現するには、やはりデジタル技術の活用は不可欠です。
そこで県独自のDX推進計画を立て、暮らし・産業・行政の3つの分野でDXを進めています。

東京などの先進的な企業が集まる場所とは違い、山梨県は中小企業が多くの割合を占めます。
デジタル化へ取り組む素地が県内企業に定着する状態をめざし、日々施策を推進しています。
庁内ではDX推進組織が中心となって、各部局のDXに関する取組を支援することに加え、人材育成も行っています。

山梨県庁が考える、DX推進に向けた4ステップとは

庁内でDXを推進する過程では、次の4つのステップがあると考えます。

①DXに関する組織的な取組なし
②DX推進組織の設置、各事業部の取組を個別に支援
③各事業部にDX推進チームが存在し、全庁的な推進組織と連携
④各事業部において当たり前にDXを実施。全庁的な推進組織は各事業部のチームを支援

山梨県は、現在②の段階だと思います。
次の段階として、それぞれの部局でDXを推進するチームができれば、そのチームの活動をDX推進組織がフォローする形になると考えています。

またDXを推進する人材については、IPA(情報処理推進機構)の人材定義をもとに必要なDX人材像を整理しています。


出典:IPAデジタルトランスフォーメーション推進人材の機能と
役割のあり方に関する調査(2019年5月)

ただ、庁内ですべての人材をそろえるのは困難です。
そこで、30代から40代の中堅職員を中心に、DXの業務面とデジタル面を繋ぐ存在として、「ビジネスデザイナー」や「アーキテクト」のような役割を果たす人材の育成を図っているところです。

各部局にこれらの人材が配置されるようになれば、それぞれのDX推進チームの中核になってもらえると考えています。

リーダーと管理職のDX理解を促進する人材育成3か年計画

DXを進めるためには、業務やサービスを改革する視点、データを利活用する視点、デジタル技術を上手に使う視点が必要です。
山梨県庁の本庁には約100の所属が存在しますので、DX推進のためにそれぞれの研修を3年間で合計100人に実施することを目標に掲げました。

中堅職員向けの研修としては次の3本柱で実施しています。

・Udemyを使ったデジタル技術学習
・デザイン思考のワークショップ
・データ利活用のワークショップ

対象となるのは、各所属で担当補佐などと呼ばれる中堅職員で、新しい事業の立案や見直しの中心となる人たちです。
業務とITを結びつけ、DXで改革を進めるための知識・スキルの習得を促します。

中堅職員に対する教育によってDXの取組の検討が進んだとしても、所属長の理解がなければ施策の実現には至りません。
そこで所属長を対象としたDXの概要とデータ利活用の必要性を理解してもらうための研修も実施し、全庁的にデジタル技術を活用した取組が促進されるための工夫をしています。

DX推進研修によって職員に現れた良い変化

組織内でDXを推進するためには、下記の3つの要素が必要です。

①   業務やサービスを変えていくこと
②   データを利活用すること
③   デジタル技術を活用すること

このうち、①業務やサービスの改革と、②データ利活用に関しては、デザイン思考とデータ利活用のワークショップで学びます。
そして、業務内容に応じた具体的なデジタル技術を学ぶ手段としてUdemyを活用しています。

今回の研修を通して、職員の考え方の変化を実感する出来事がありました。
例えば「県庁を高校生に知ってもらうための企画立案」という課題では、当初は議場体験や知事室の見学といったオーソドックスなものとなっていました。

しかしワークショップのなかでデジタル技術活用について学ぶと、「メタバースを使った県庁体験」など過去にない企画となり、大きな変化を感じています。

当初はデジタルな思考がほとんどなかったメンバーが、学びを経て新しい技術の活用を考えられるようになったことは非常に嬉しく思います。
この体験をぜひ日常業務にも活かして、来年度の予算や事業立案の際にデジタルとアイデアを掛け合わせた新しい取り組みを展開して欲しいと思っています。

業務に必要なスキルにあわせて学べるのがUdemyの魅力

デジタル技術と一言で言っても、事業ごとに必要な内容は異なります。
相談業務ならチャットボットが必要ですし、申請業務ならRPAのニーズがあるでしょう。

それらのスキルを教える研修の必要性を感じながらも、すべてのニーズに応えられる研修の実施は難しいと思っていました。
そんなときにUdemyを知り、必要なスキルにあわせて学べる自習環境を提供するのはとても良い方法だと考えました。

Udemyは技術に関する講座が充実していて、受講者の学習状況がチェックできたり、ラーニングパスで学ぶべき講座をまとめて紹介できたりする点が便利だと感じています。

様々な働きかけで受講者の継続的な学びを支えたい

学びを推進するうえでの課題としては、スムーズに学びが開始できる人とそうでない人の差が出てしまうことです。
学びを進めないと何も始まらないため、定期的な発信で意識づけを促したいと思います。

さらに、学びの習慣化も非常に重要です。
昨年度の受講者の中には、通勤時間に毎日視聴して長時間の学びを達成した職員もいました。
習慣化の成功事例を共有できれば、他の職員のモチベーションアップにつながるかもしれません。

昨年はグループウェア上に掲示板を作り、おすすめのUdemy講座を載せました。
おすすめした講座は予想以上に多くの受講生が見てくれたので、講座が多すぎてどれを見ればいいかわからない人にはクチコミの紹介も有効かもしれないと思っています。
自分の業務にどんな技術が求められるのかを各個人が理解し、必要なものをUdemyで学んでもらえる環境づくりを今後も推進していきたいと思います。