県内企業のリスキリングを推進~国の助成金を活用した企業主体のリスキリングを支援~
群馬県では、2024年度より「群馬県DX人材リスキリング推進事業」を実施し、県内中小企業を主な対象に、企業主体のリスキリングを支援しています。
群馬県の産業分野の基本計画である『群馬県産業振興基本計画』の中でも主要施策の一つであり、国の助成金である「人材開発支援助成金」を活用する事業としても注目されています。事業の概要や今後の展望についてお話を伺いました。
産業構造の転換と人的資本投資を掲げ、企業主体のリスキリングを支援する
産業構造が大きな転換期を迎え、AIやIoTなどデジタル技術が急速に進化する中、技術の進化に対応し、持続的な成長、ひいては群馬県産業の更なる発展につなげるためには、デジタル人材の育成が必要です。
群馬県では、2024年度より施行した産業分野の基本計画となる『群馬県産業振興基本計画』の基本方針の一つに「人的資本への投資やリスキリング」を掲げ、企業主体のリスキリングを推進しています。
将来的にはDXを進め、生産性向上を図りたいと考えている企業でも、まだまだ社内の人材育成よりも、現在の業務遂行や日々の売上向上に注力せざるを得ないというのが現状です。
過去にDXの取り組みに関する調査をしたところ、「DXを担当する人手が足りない」、「どういった人材が必要かわからない」という課題を持っている企業が数多く見られました。
こうした課題を解決するため、本事業を立ち上げました。
企業主体のリスキリング事例を創出し、その取り組みの輪を広げる
本事業の検討にあたって、リスキリングに取り組む企業の先進事例や他の自治体の取り組みも参考にしたところ、リスキリングによる人材育成は、経営戦略にしっかりと位置づけて、企業が主体的に取り組んでいくことが重要だとわかりました。
そこで、「企業が主体的に従業員に対してリスキリングを実施している」状態を目指す姿として掲げ、企業主体のリスキリングの成功事例を創出し、その成功事例を横展開することで、県内企業への浸透・拡大を図ることを目的としました。
本事業では、従業員が現在保有しているスキルを可視化し、企業が目指す姿と現在とのギャップを明確にするため、「DXスキル診断」を実施します。
その診断結果をもとに、従業員一人ひとりに合わせた学習計画書を作成します。
スキル診断後の「DX講習」において、オンライン学習サービスのUdemy Busines(以下Udemy)を活用します。
参加企業の業種・業態や受講者のレベル、興味・関心によって学びたいスキルはさまざまですが、Udemyであれば数多くのジャンルの講座が充実しており、従業員の多様なニーズに対応できるため、本事業の学習コンテンツとして採用しました。
Udemyによる学習と合わせて、DXスキル習得のための実践講習となるオンライン集合研修(Business Online Campus)を実施します。
また、プログラム受講期間中は学びの伴走者「ラーニングパートナー」が各受講者を伴走支援し、学習進捗をサポートする仕組みがあるのもポイントです。
DX講習の修了後は、参加企業及び従業員に対して、リスキリングの効果検証と今後の取り組みに向けたアドバイスを実施し、学習効果の振り返りや取り組み報告の場も設けています。
2種類のコースで、企業の抱える課題解決のできるDX人材を育成
本事業では以下の2つの学習コースを用意しました。
人手不足を解消するためには、生産性を高めることが重要です。
そのために、OfficeツールやRPAなどのデジタル技術を活用して業務を効率化する手法が学べる『業務効率化コース』を設けました。
また、新しい事業を展開する視点を持つことも重要だと考え、デジタル技術を活用して新規事業開発を推進する力を身につける『新事業創造(事業展開)コース』も設けました。
国の助成金で企業の自主的なリスキリングを後押しへ
国の助成金活用を事業スキームに取り入れていることも大きな特長です。
経営環境が厳しい中、従業員の教育研修になかなか費用を割けない企業も数多くあります。
本事業では、厚生労働省の『人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)』を活用し、企業が助成金などの公的支援を上手く活用し、リスキリングに取り組めるよう工夫しています。
本来、リスキリングは従業員教育の一環であるため、企業が自主的に取り組むべきものです。
しかしながら、予算的な問題で、はじめの一歩が踏み出せない企業を支援するのも行政の役目だと考えています。
そこで、国の助成金を活用することで、リスキリングに取り組む企業の費用負担を軽減することにしました。具体的には「DX講習」といった学びの部分に関しては国の助成金活用を促進し、「DXスキル診断」や「学習の伴走支援」については県の予算で実施する仕組みとしています。
また、今回の助成金活用のノウハウを事例として横展開できれば、今後、助成金をはじめ、企業のリスキリングを支援する様々な公的支援を自主的に活用する企業も増えてくるのではないかと考えています。
助成金活用のサポートを通して、本事業のテーマでもある「企業が主体的に従業員に対するリスキリングを実践する」状態を目指していきたいです。
なお、本事業の実施にあたっては、群馬労働局と打合せを重ね、県主催の説明会に、群馬労働局の助成金担当者を派遣いただくなど、連携体制を構築することができています。
今回の事業を成功事例として他の企業に展開したい
参加企業が、本事業で学んだ内容をしっかりと業務に生かし、自社の課題解決につなげ、「リスキリングに取り組んでよかった」、「実際に成果として現れた」という成功体験を獲得することを期待しています。そのためにも、我々がきめ細かく・丁寧に支援をしていかなければならないと考えています。
また、本事業の最も重要な目的は、参加企業の支援だけに留めず、この企業の取り組み事例を他の県内企業に横展開することで、県内に企業主体のリスキリングの浸透・拡大につなげることです。そのためにも、参加企業がリスキリングの成功事例を作り、他の企業がリスキリングに取り組む際の参考にすることができて、はじめて事業として目標を達成したと考えています。
県内企業の生産性や付加価値が向上し、その結果、県民所得や県民の幸福度向上にも繋がっていく姿を目指し、その実現に貢献していきたいと思います。