「東京デジタルアカデミー」で全職員向けのデジタル研修を実施~オンラインで広範な業務に合わせた職級別の学習環境を構築~
東京都では、2022年度からUdemy Business(以下、Udemy)を活用した管理職・管理職候補者向けの研修と、職員の自己啓発支援事業を推進しています。
職員のデジタルリテラシー向上を図る「東京デジタルアカデミー」の取組
と、その中でUdemyが担う役割について小林さん、大澤さんにお聞きしました。
「東京デジタルアカデミー」の目的
小林:2020年度から、職員がデジタルの素養を身につけて、各職場でデジタルを活用した事務事業を展開していくために、デジタル関連の研修をスタートしました。
2022年2月にデジタルサービス局が策定した「東京都デジタル人材確保・育成基本方針」を踏まえ、これまでの一部の職員を対象とした集合研修に加えて、全職員向けに学習コンテンツを提供するデジタル研修に取り組む方針へと転換を図るため、今年度からはLMS(ラーニング・マネジメント・システム)という研修関連システムの導入を進めています。このコンテンツのひとつがUdemyで、職員のデジタルリテラシーの底上げを目的として展開しています。
「東京デジタルアカデミー」はデジタルに関する①人材育成、②先進事例の調査・分析、③区市町村連携の総称であり、職員研修におけるデジタル分野の教育を担っています。
従来はIT分野の業務を担当する職員のみがデジタルに関する研修を受講していましたが、最近ではデジタルを活用して業務改善や事業創出を実施するための知識・ノウハウ等を全職員が学ぶプログラムを取り入れています。
また、受講方法も職員を研修所等の一か所に集める集合形式から、オンデマンド形式やオンライン会議システムを使ったオンライン形式にシフトして「いつでも・どこでも」研修を受講できる環境整備を図っています。
このように、この数年間で職員研修の内容と実施方法に大きな変化が生じています。
全職員に教育を行き渡らせるため、オンライン学習を導入
小林:「東京デジタルアカデミー」では、職員向けにデジタルに関する研修や自己啓発支援等を実施しています。
専門的な知識・スキルを身に付けることを目的として、従来から実施している情報システム部門の担当者向けの研修に加え、ICT職向けの研修を実施しています。
また、それ以外の全職員向けの研修として、主事・主任・監督職に対してはオンデマンド学習コンテンツを、管理職・管理職候補者にはオンライン学習ツールを提供しています。
この中には、IT基礎研修として「ITパスポート」のレベルに相当する知識をつけ、試験に合格することを目的とした学習も含まれます。
この他、新任研修や新たに課長職に就いた職員等を対象にしたDX研修も行っています。
都庁は非常に大きな組織ですから、全職員にデジタル教育を浸透させるためにはオンラインの活用は避けて通れません。
また部署によって必要な知識・スキルは様々なので、各職員が個別に必要なタイミングで知識・ノウハウを習得することのできるオンデマンド学習は非常に効果的でメリットが大きいと捉えています。
一方で、高度な演習やグループワーク等を取り扱うことは難しいため、基礎的な知識はオンラインで学び、体感型のプログラムは集合研修で実施するなど、メリハリをつけて研修効果を高める工夫をしています。
幹部級職員のDX理解推進がポイント
小林:Udemyは、管理職と(管理職試験を合格した)その候補者向けの研修教材として活用しています。
これらの階層は都庁の中では実質的なコアリーダーで、リーダーシップとマネジメントを発揮しながら、様々な主要プロジェクトを実際に動かす立場の人たちです。
職場のデジタル化を進めるにあたっては、若い職員の方が理解力と吸収力が高い場合もあるでしょう。
しかしながら、デジタルを活用した業務改革や新規事業を立ち上げるにあたっては、自らプロジェクトをマネジメントするリーダーや、取組を承認する管理職がデジタルマインドにシフトチェンジしていなければ、進捗があがらなくなってしまう可能性があります。
DXの本質をしっかり理解して、昨今のデジタルの動向・方向性を見極めながらベターな判断をするためには、ある程度のデジタルマインドが不可欠です。
それぞれの職場でデジタル活用の視点を踏まえた事務事業を着実に推進するためにも、まずは管理職と管理職候補者にITやデータ利活用、デザイン思考、アジャイルなど、デジタル・DXに関する理解を深めていただきたいと考えています。
大澤:オンライン学習ツール研修を実施する際には、DX関連の講座が豊富であるか、また随時講座情報がアップデートされているかということに注目しました。
Udemyはデジタル関連の講座が数多くあり、自治体に導入された実績が豊富であり、EBPMなどの行政向け講座も用意されていることが特徴的であると感じました。
受講者の声をもとに学習データの活用を進める
大澤:Udemyをはじめとするオンデマンド形式の研修は、受講状況をデータで確認できることが大きな特徴です。
研修期間中であっても、どの講座がよく視聴されているかを把握できるのは便利であると感じます。
次年度以降の研修を企画する際の参考にしたり、受講者のニーズがあると思われる内容を分析したりする時にぜひ活用したいと考えています。
小林:一部受講者へのアンケートでは、「研修の有用性を感じている」という回答が7割を超えており、コンテンツの内容に対して高い評価は頂いていると認識しています。
一方で、「講座が多くてどうやって選べばいいのかわからない」という声があることや、管理職及び管理職候補者対象ということで、「業務多忙で学習時間を確保するのが難しい」という点が課題になっていいます。
これからも全庁的にデジタルを活用した業務改革等に取り組んでいくので、色々な課題はありつつも、職員の皆様から意見等を頂いて、毎年度少しずつ運用を見直しながら実施していきたいですね。
デジタル人材の育成における今後の展望
小林:「東京デジタルアカデミー」では、管理職・管理職候補者向けにプロジェクトマネジメントやIT知識、データ活用・分析の基礎(EBPM)、デザイン(UX)などを中心に受講対象講座を設定しています。
「東京都デジタル人材確保・育成基本方針」で定めている通り、ITの知識、データ利活用及びデザイン思考の3領域のバランスの取れたカリキュラムを提供できるよう努めています。
また、テレワークをしながらでも管理・監督者が的確・効果的に組織を運営するための一助となるよう、リモートワーク・マネジメントについての科目も対象講座に入れています。
次年度も研修のアンケートを取りながら、どのようなコンテンツが求められているのか把握・精査し、講座を組み替えてブラッシュアップして運営していきたいと思っています。
大澤:変化の速いデジタルテクノロジーを活用し、自律的にDXを推進していくためには、職員のデジタルに関する能力向上が重要と考えています。
全ての職員のデジタルリテラシー向上を図るとともに、リスキリングにより事務職等の職員からデジタル人材を養成することができるよう、DX研修を展開していきたいと思います。
※こちらの記事は2022年12月に発刊した「行政DX通信vol.5」に掲載された記事より、紙面スペースの都合でご紹介しきれなかった内容を追加してお届けしています。