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【踏んで踏まれて 国内旅行】奄美大島編

空港の、その先
空港だけは数え切れないほど訪れているのに、そこがどういう場所なのか知らない。国内線乗務のみだとしても客室乗務員にとってそれは充分あり得る。

地方空港の次の便に備えるわずか35分の間、視覚を占めるのは駐機場と滑走路の地面の明るいグレー。気持ちに余裕があれば周囲の風景も目に飛び込んでくるけれど、どこか現実味を欠く。

乗務回数としてはかなりの数に上りながら、どんな土地なのか知らない。東京からの直行便、鹿児島からの徳之島便と絡めた2往復で頻繁に赴いた奄美大島がまさにそうだった。

離職後20年の時を経て、初めて空港の外に足を踏み入れた奄美大島。沖縄なの?鹿児島なの?イメージを掴めずにいたけれど、それもその筈どちらでも無かった。鹿児島よりは大きく南の島寄りの、沖縄よりも湿潤と陰翳に富んだ島だった。

名付けられないひととき
車を駆れば、植生と空の色に空気が寧ろバリ島中部から北部へと移動しているような錯覚を覚えた。食やレジャーに関して観光の機運が未だ高まっているとは言えない、その素朴さにも起因するのだろう。

だからこそ、血眼になって観光や消費に対して必死にならずに済む。わざわざ時間をかけて距離を超えて、名付けようのない時間を過ごすことが出来る。島を後にすれば思い出すのは景色だけでなく、言葉を交わすこともなかった人が往来を行き来する姿だったりもする。

いつもいつも考え事で頭の中が忙しい自分を休めるのであれば今はここ、奄美大島がその有力候補地のひとつに挙げられる。

再訪に備え、携える本を選ぶ愉しみ、彼の地で聴く為のプレイリストを作成する楽しみがまたひとつ日常に加わった。

旅を中心に据えた生活で久しぶりの新規渡航先、台湾。ハマりそうであえて情報を遮断していたマイナス地点からの旅立ちを記録します。