期待値論で見る何切る問題 その1


暇だったのでちょっと麻雀の話でもしましょう


渋谷ハルさんと渋川難波プロの動画の最初の方のこの手です。

動画内では渋谷ハルさんが2萬を切ってダメ出しを受けていた局面です。

さて、何を切るのが最も期待値が高いのか?
動画内では9・8索が勧められていますし、実際私も8索から落とします。
ですが、冷静に2萬切りは数理的にはどうなのかを考えたいと思います。

まず場に出ている牌を考慮せずに、期待値・和了率を計算機に教えてもらいます。すると計算結果はこうなりました。(南一局・西家 4巡目)

期待値は言うほど変わりません。実は場が違う場合は9索より2萬の方が和了率が高くなります。東場で南家時の値も出しましょう。

東場・南家時

さて、牌理的な背景を考えましょう
現在の牌姿は

・5-6萬で1塔子
・3-4-5筒で1面子
・4-5筒で1塔子
・5-6索で1塔子
・8-9索で1辺張
・東で1対子

つまり、6つの面子候補があり、既に面子オーバーの状態です
何が言いたいのかというと…

8-9索切った後の様子


打8・9索、ツモ2筒・1萬で次のように牌姿が変わったとします

2萬が功を奏したっぽい形です、でもよく見ると

・筒子部分はどんな解釈でも1面子・1不完全面子
・1-2萬で1辺張
・5-6萬で1塔子
・5-6萬で1塔子
・東で1対子

そうです、6面子でオーバーです
そもそも面子オーバーのこの形では、どこかの不完全面子を払う必要があります。浮き2萬に何かくっついてきても、それは面子オーバーになります。

実際に上のようになった時、その期待値と和了率を計算すると

と、1萬切りは切る候補です。和了率が一番高いのも1-2萬落としです。

2筒引きじゃないケースも検討してみましょう

4索を引いたパターンです
説明するまでもなく面子オーバーです、この場合は1-2萬か5-6萬のどちらかを払うでしょう。

実際に計算をすると

となりますから、1萬切りが最大期待値・最大和了です。

また、次のように引いた時も考えましょう。

4萬-1萬ツモ


以上の通り1萬切りが最大効率です。

ここから2萬に1萬をくっつけてきても、「期待値的・和了率共に別に有利ではない」ということがわかります。

では1萬ではなく3萬を引いてきたケースも検討しましょう。

2筒-3萬ツモ


5-6萬落としが和了率・期待値共に高いのはかなりのポイントです。受けが4萬で被っているからなんですけど、東落としの人が多いかなぁとおもいます。5筒で頭候補も確保しているので。

もう一つのパターンは面子ができたパターンです

4索-3萬ツモ

この場合は萬子4種が捨て候補です、5-6萬の価値はやはり低くなります。
最後に2-3-4-5-6萬の形ができた理想形のケース

4萬-3萬ツモ


この場合は5-6索の不完全面子処理、4筒・5筒を一盃口消してでも処理する、東でシャンテン数を落としタンヤオ三色狙いなどもあります。

いずれにせよ面子オーバーが足を引っ張るため「どの不完全面子を処理するか?」が大事になります

8-9索残しが生きそうなパターン

このパターンで最も目に付くのは7索引きです。
ですが、悲しい結果が待っています。

7索ツモ

そうです、期待値・和了率ともに分がいいのは活かせたはずの9索・8索切りです。なぜなら面子オーバーだからです。

次は8か9が対子になるケースです。手順としては打2萬後に重ねる感じ。

8索ツモ

この場合9索を切ると思うんですけど

期待値は打東と変わりありません。

他の面子ができた時も見てみましょう。

4萬ツモ

打8-9索です、なぜなら面子オーバーで一番価値が低いからです。

結論

2-3-4-5-6萬ができるとき以外はそんなに良くないうえに、2萬も8-9索も実は価値がかなり低いのです。やや2萬が平場ではいいかなぁ程度です。ケースバイケース程度の話です。2萬周りが早めに出ているときは2萬切りでも良いでしょう。

最後に「場を込みにした期待値の計算」と「おまけ」です。

おまけ

動画の初打8萬についてだが、私はここからなら8索切りである。5-6-8萬よりも、8-9索の方が価値が低いからである。ましてや、上家の初打は8索である。実際計算すると、

向聴は落ちるが、実際に最も期待値が高いのは打8索である。


使用したツール

手牌ジェネレーター
https://nnkr.jp/tools/tehai_generator

麻雀何切るシミュレーター
https://pystyle.info/apps/mahjong-nanikiru-simulator/

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