見出し画像

進化する自治を構想する 08「住民自治と集合住宅」

自治の単位とマンション管理

 横田さんの「マンション管理稼自治を考える」という視点は、非常にユニークで、現代の都市の自治を考えるうえで、一つのスタイルとして考えられるものでした。住民自治を考える上で、「自治の単位」というのが重要なファクターになるのではないか、という観点に立てば、マンション(分譲マンション)やコーポラティブハウスといった集合住宅の形式は、ある意味独立した自治の形態として有効であり、自治を機能させる手段としていい事例になるという、示唆に富んだお話でした。
 「住民自治」といった場合、これまで有効に単位として「小学校」通学エリアを中心とした住宅という単位でした。ただ、現在でもこの単位が機能している地域もあり、またこの単位を再編させるというのは、現実的には難しいと思われます。ただその中にあって、都市部の多くでは、分譲マンションでは、従来の町会には入らないという立場のところも多くあります。再開発で、一つの町の中がすべて集合住宅(多くが分譲)となっているような特殊な地域もあり、そういうところでは、マンション1棟が1町会として管理しているようなところもあります。
 そうした中で、分譲マンションを独立した自治組織とすると、従来の小学校区を単位とするエリア内であっても、自治機能を持たせ、働かせることができます。同時に、そうした独立した自治組織が、その地域の自治の原動力となっていくことも十分考えられます。

町の自治機能と連携や技術移転

 第4回でお話しされた「アクションプラン」では、マンションに特化したイベントを行ってきた、という内容でした。しかし実際には単にイベントをするというだけではありませんでした。マンション管理は、大規模修繕といった高額で時間のかかる事案だけでなく、駐車場や防犯・防災面、共有エリアのメンテナンスなど、日々、さまざまな問題が発生します。そうした管理上の問題や、区役所や消防署、警察署等の行政との調整など、さまざまななノウハウが蓄積されていきます。そうした事例やノウハウを、マンション同士で共有していくことで、自治能力が高まっていく、という発想でした。
 まつりに代表されるようなイベントの実施も、単に人が集まるというだけではありません。まつりを実施するためには、実施を主導する実行委員会をつくり、準備や運営も必要です。住民同士が顔を会わせる場所や機会を増やすという意味もあります。マンションという単位の中で、こうした自治の萌芽をつくることは、重要だと考えます。

大阪市の住環境と自治のあり方

 大阪市の場合、福島区のように、古くからの戸建て住宅と集合住宅が混在するような町もあれば、戸建てはほとんどなく、分譲主体の集合住宅やテナントビルで構成されている町もあります。住民のほとんどがマンションに住み、またその町の単位も小学校を中心としているような場合、マンションを1つの単位として自治機能を持ち、高めていくというのは、今後の都市部の住民自治や機能を考えるうえで、有効であり、手法やスタイルの確立ができないかと思います。こうした試みは、一マンションで企画・実行するには、負担が大きく、なかなか一歩が踏み出せません。複数のマンションが協力したり、また役所、この場合区役所などと協働することも必要ではないでしょうか。新しいまちづくりや防災面をどのように考えるかなど、行政としても住民との協働が必要な場面も大いにあると考えられます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?