舞台「ささやくように恋を唄う」感想
舞台「ささやくように恋を唄う」の千秋楽、マチネのほうを観劇してきました。良いGL好きの信頼するオタクたちが期待していて、作者も推しており、ただただ数少ないGLで舞台を作ってくれたから、それだけの理由です。GLを好む人に人気の竹嶋えくさんの原作漫画を実写舞台化したもので、アニメも少し前まで放送されていました。原作未読ですが、アニメのほうは、たぶん5話くらい?までは見ていました(総集編になりますのお知らせの手前)。色々あったようですが、その詳細はよく見ていないので割愛。
結論から言うと
舞台はとてもしっかりしていました。分かりやすく構成して流れがスムーズに、生バンド演奏も見せ場なので(ステージ上で本物の楽器で演奏します)、尺の配分はぎりぎり各見せ場を作れている感じ。これといった不満はなく。『舞台やがて君になる』に続き、良いGL舞台をありがとうトライフル製作。 ︎原作未読なので、知らないことだらけで見ました。
キャストを確認したとき、
親友役が『D4DJ』(推し出演)のはやここカップル片方の役の天麻さんじゃん、と気づくものの、観劇後に友人と雑談するまですっかり失念していました。すみません。(はやここもGL)親友への恋愛感情と、友情と、親友の初彼女に場所を取られての葛藤の見せ方、どれもとても良かった、そうなるよね、です。自分の気持ちも自分自身も大切にしてね。主演・依役の石井さんもお名前は見覚えありました。どのキャラクターも声がみんなアニメに寄せていて、1回でも見た人に違和感なく、ブレもなく。お見事でしたー。アニメと舞台は別です。舞台のDVDが発売されるらしいので、もしよければ。
感想。サフィック(レズビアンを含む)の
亜季はアニメのキャラデザインとしても好きだったし、舞台でもいい感じの芝居、それと真理役の早川さんが、初見ですがとても役を通して魅力全開していて、ドラムのパフォーマンスもすばらしかったです。ドラムで歌ってた。でも一番持っていかれたのは、いわゆる天真爛漫で綺麗系の百々花先輩(西門さん)、私は百々花の詳細を知らないまま、ベース弾き始めて!!料理研究部で価値観は多少古めだけど、それであのベースの弾き方?まじ?ずるかった。早川さんのドラムもかっこよかったのにベースもっていかれましたすきです。演奏終わりに、海外なら拍手されてたと思います。小さく拍手しました。
内容は、
正直とても初々しい思春期まっただ中の初恋模様で、片方はデミロマンティックかもしれないし、片方は嫉妬しながらかっこもつけたいし、さらに大人からすると”あー思春期だな!”などと思わせる志帆もいますが(徹底的なその芝居はお見事でした)、全員集合時に依とひまりが付きあってるのが知れた後「は、(宿敵と)付きあってるの?」拗らせながらもそこは肯定し、また周りからの「れっきとした恋人よ」(うろ覚え)のセリフを始め、要所要所のレズビアン(同性愛者)ポジティブ表象が嬉しかったです。いちクィアとしてGL作品を求める立場で、もう1か所嬉しかったのは、キスシーン。見える角度で口にしていて、それはとてもきれいなキスでした。愛らしかった「ピークなのはわかるけどちょっと花火で打ち上がりすぎよー」と思ったけど、初キスだから盛大なのは許そう。
私は…小泉萌香さんと河内美里さん(舞台やが君)には頭が下がる思いしかない……どこまで最初から決まっていたかは存じませんが、 『舞台やが君』がなかったら『舞台ささ恋』のキスシーンの見せ方もなかったかもしれない、と思うと(同社製作)。ありがとうございます、出演者も製作も。これはキスが見たいのではなく(見たいけど)、その文脈は大前提で、ポジティブなクィア女性表象(representation) として受けとめられるので、すごく嬉しい!隠すことじゃないので、ごまかさずに見せてくれる姿勢は大歓迎。女同士の恋愛を透明化しない描写として、嬉しいのです。ちなみにいずれもオブジェクティファイ(性的な見方をすること)とかはしていません。ほかの観客にとってはどんなに「ただただ尊い」でも。(完全にクィア目線、オタクじゃない)
これが近年では2作目?
他を関知していないのでもしあったら恐縮ですが。オリジナルでも原作ありでも”GL舞台”は少ない。ない。(あっても観客は俳優のファンが多くなったりする。その中のサフィックにしか届かない)
フォローありきで意味のある描写なら、亜季のようなクィアユースにありがちな「そばにいられなくなるなら黙ってる」同性愛者の葛藤を見せるのだって、当事者に響くのでアリと思いますよ、主役にはもう古いけど。もうそろそろ、その設定は控えるか、卒業してほしいけど。可能なら舞台ささ恋の続編でも良いし、現代GLのナラティブは他にもあるので、メジャー寄りの会社製作の(当事者の劇団ではなく、の意味)ホールなどで上演されるGL舞台が、新たに作られるのも期待したい。(舞台だと敷居とか、ターゲット層とか、製作側が意図することとの齟齬とか諸々あるその辺は一旦おいといて) どこかの舞台製作さん、大人GLやってくれないかなー!!(ヒット中#.あやひろとかレズビアンの話とか探せばある)
(この需要の問題は、レズビアンに届きづらい宣伝の仕方、敬遠されうるステレオタイプ描写の多さ、アップデートできていない製作・演者側の知識量にもあると思いますよ。サフィック映画なら見る当事者はいる。舞台は敷居があるっていうのは分かります、そちら側にいたから。当事者は原作者の中にもいますし、私たちサフィックにも向けている物語は大いにあると思いますが、舞台にするうえでターゲット層に含まれているか否か(原作ファン・出演者の異性愛者ファン以外に)?)
物語の感想になっていない気がします(笑)ともかく、見ごたえありました。GL好きに人気の原作をふさわしい形の舞台にしてくださり、ありがとうございました。ほかの製作会社でもトライフルエンターテイメントレベルのGL舞台を作るようになったらいいな。