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『 これ、なんだと思う』
油井さんがニヤリと笑って差し出した。
「え、なにこれ」
「こうすんのさ、ほら」
大昔の話。ヴァン ヂャケット(1978年倒産。いまなお同名の会社が似たような衣類を売ってるけどまったくの別物、まったくの別会社)の宣伝部は青山3丁目の角にあって、昼休みはその交差点、キラー通りを南に下りていった。
キラー通りの北には国立競技場や東京体育館がある。そいつを南に青山墓地方面に下ると、やんごとなき方々が贔屓になさる「スキーショップジロー」が途中にあって(そこでもアブラを売って)、その先、西麻布交差店手前にその店があった。
「スポーツトレイン」。
神田の「タマキスポーツ」と並ぶアウトドアグッズのセレクトショップで、オーナー油井さん&庄司さんふたりのフライフィッシング&キャンプ大好きがクセあるままに反映されて、壁や天井、ガラスケースにヘンテコなものばっか並んでる。
Colemanのあれこれ、Buckのナイフ、油べとべとのBarbour、HardyやBredyの釣りグッズ(バッグは取材や撮影のとき便利だったなあ)。(ソニープラザが扱う前に)L.L.Beanのトートバッグやブーツを置いていたし(もちろんトート買ったさふたつも)、ワークブーツの代名詞Red Wingのアイリッシュセッターも(もちろんさ)。
Peter Storm のオイルドセーター(後年ヴァン ヂャケットが扱うことになる)やフランスのTricotentinの極上セーター、St.Jamesのボーダーシャツも、熱狂大ブームになったカウチンセーター(カナダのネイティブが編む超超極太ハンドメイドニット)も。
そんな宝箱みたいな店で、のちにクロサワ映画で大役を演じることになる店主の片割れは、ウチサカにこれを差し出すんだ。大きめのプラスティックの指輪ってふう、黄色のキャップがついてる。それをはずすと、そこに十文字が、ちょっと鋭利っぽく成形してある。
家康が笑いながら言う。
「キャンプに行くと、蚊に刺されるだろ、かゆいじゃん。これを腫れたとこに押し当てるのさ、バッテンがついて,あら不思議、かゆみがどっかに行っちゃう」
うっそでー、ばっかでーと思ったけど、油井さんの語りにやられた。
「ポパイ」でおもしろい話がついている用具や道具を「モノ」と呼んだ、カタカナでそう書いた。「すぐれモノ」が生まれるちょっと前の話。
さっき、めったに開けない引き出しの奥から出てきた。